キシリトール
こんなお悩み・健康効果に
- むし歯予防
- 小児の中耳炎予防
- 肌の保湿効果
- 骨粗しょう症の予防・改善
キシリトールとは
キシリトールは、果実や野菜にも含まれる「糖アルコール」の一種です。北欧の国々では、むし歯を予防する甘味料として早くから着目されており、日本でも食品添加物(既存添加物)としてガムやタブレットなどに利用されています。【※1】【※2】【※3】
食品に使用されるキシリトールは、白樺や樫の木などから抽出される「キシランへミセルロース」を原料として工業的に生成されています。しかし、果実や野菜など天然に存在するキシリトールと人工的に生成されるキシリトールでは、分子構造に違いはありません。
冷涼感のある後味と砂糖と同程度の甘味度を持つことがキシリトールの特徴です。また、体内への吸収速度が遅いほか、代謝にインスリンを必要としないため血糖値の上昇に影響しません。【※4】
また、天然の素材をもとにつくられるため、安全性も高いとされている甘味料です。
期待される効果・作用
むし歯予防
キシリトールは砂糖のように甘味のある成分ですが、むし歯の原因となるミュータンス菌(むし歯菌)などの細菌の影響を受けません。【※5】
むし歯の原因となるのは、繁殖した細菌の塊である「プラーク(歯垢)」とミュータンス菌などの細菌が作り出す「酸」です。細菌はプラーク内の糖質を栄養源として酸を作り、その酸が原因となってむし歯ができます。
砂糖はプラークの形成と酸の発生を促す作用が強く、むし歯の原因になりやすい食品です。しかし、キシリトールをはじめとした糖アルコールにはこのような作用がないため、むし歯の原因にはなりません。
また、プラークは口臭の原因にもなるため、キシリトールを摂取することで口臭予防にも役立つと考えられます。【※6】
小児の中耳炎予防
キシリトールは、小児の中耳炎の症状を緩和させることに有効であると報告されています。食後にキシリトールを適量摂取することで中耳炎の発症頻度が低下し、治療薬(抗生物質)摂取の必要性が減少するとされています。
ただし、この効果は風邪症状のない場合に限定されているようです。【※7】
肌の保湿効果
キシリトールは、肌への保湿効果を持つことが知られている成分です。キシリトール自体の保水性と肌の角層内の水分を保持する作用により、スキンケア製品などに応用されています。【※8】
骨粗しょう症の予防・改善
動物実験により、キシリトールには加齢に伴う骨量の低下や骨ミネラル減少予防の効果があることが示唆されています。【※9】
このことにより、キシリトールの摂取は加齢による骨粗しょう症の発症予防や改善の可能性があると考えられています。
こんな方におすすめ
キシリトールはむし歯予防や口臭予防など、口内環境を良好に保ちたい方におすすめの成分です。
ただし、既にできてしまったむし歯や、むし歯や歯周病などによる口臭は治療が必要です。歯磨きなど日頃のケアに加え、キシリトールを摂取することで口内の健康を保つことに役立つと考えられるでしょう。
摂取目安量・上限目安量
キシリトールは、食品添加物の安全性と有効性を確認して厚生労働大臣が指定する「指定添加物」に該当しますが、使用基準はありません。【※1】【※10】
また、FAO/WHO合同食品添加物専門家会議( JECFA)においては、毒性学上一日摂取許容量(ADI)の設定は必要ないものとして分類されています。【※11】
成人では1日あたり概ね50gまで、小児であれば1日20gまでの摂取量であれば、ほとんどの場合安全であると考えられています。ただし、3年以上大量摂取を続けた場合は、腫瘍や下痢、腸内ガスが生じる可能性があるとされています。【※7】
考えられるリスク・
副作用
キシリトールなどの糖アルコールは一度に大量摂取しない限りは安全に使用できるとされています。しかし、多量摂取した場合や体質によってはおなかが緩くなる(下痢を起こす)ことがあります。
そのため、キシリトールを使用した製品を摂取する場合は、製品に記載してある摂取目安量を参考に大量摂取しないようにしたり、体調を見ながら摂取したりすると良いでしょう。
キシリトールを含む食べ物
キシリトールは、いちごやプラム、カリフラワー、ほうれん草、にんじん、きのこ類などに含まれています。【※1】【※12】
むし歯予防のためには、1日あたり5~10gのキシリトールを摂取する必要があるとされています【※3】。しかし、通常摂取する食品の量ではこの量を満たせません。そのため、むし歯予防に必要な量のキシリトールを摂取するには、キシリトール配合のガムやタブレットなどの活用がおすすめです。
発見・研究の歴史
1943年に安定した結晶化に成功したキシリトール。キシリトールのむし歯予防効果は、1970年にフィンランドで行われた大規模実験により証明されました。この実験結果の発表により、世界的にキシリトールの効果が知られるようになったのです。【※13】【※14】
1983年に世界保健機関(WHO)、国連食糧農業機関(FAO)で安全性が認められ、日本で食品添加物として使用することが認可されたのは1997年のこと。その後、日本ではキシリトールが特定保健用食品(トクホ)の関与成分として認められました。
現在、キシリトールはガムやタブレット、歯磨き剤など多くの製品に配合されることで身近な存在となっています。
キシリトールに関する研究情報
【1】チューインガム、トローチまたはシロップ剤で投与されたキシリトールが、急性上気道感染症のない健康な小児の急性中耳炎発症率を30%から22%まで減少させました。このことから、健康な小児に対するキシリトールの予防的投与が、急性中耳炎の発症率を減らす可能性があると考えられます
【2】歯垢蓄積に関するキシリトールチューインガムの効果を調査する試験では、14件中13件でキシリトールガムによって歯垢蓄積が減少しました。また、キシリトールガムはソルビトールガムと比較して有意に歯垢蓄積が減少しました。これは短時間の咀嚼により歯垢中に高濃度のキシリトールが存在することが重要であるため、習慣的な摂取が望ましいと考えられます
【3】キシリトールを含むチューインガムの使用は、むし歯の発生を大幅に減少させることが明らかになっています。しかし、キシリトールチューインガムと同様にキシリトールキャンディーにもむし歯予防の効果があることが分かりました
【4】敗血症のラットにキシリトールを摂取させると、免疫細胞の一つである好中球が増加し、ラットの生存日数も高まりました。この結果より、キシリトールには免疫力を高める効果があることが示唆されました。
【5】卵巣摘出後のラットに対して5%のキシリトールを補充した飼料を与えることは、骨ミネラル(カルシウム・リン)の減少に対する保護効果があることがわかりました。このことから、キシリトールは閉経後の骨粗しょう症予防に対する効果が期待できると考えられます
成分
10秒解説
キシリトールは、天然の素材からつくられる「糖アルコールの一種」です。砂糖と同程度の甘さがあり甘味料として用いられるほか、むし歯予防効果があることで知られています。キシリトールはむし歯予防のほか、小児の中耳炎予防にも効果を示すことが報告されています。