フコキサンチン
こんなお悩み・健康効果に
- 血糖値の上昇抑制
- しわ・たるみ予防
- しみ・くすみ予防
- 美肌
- 生活習慣病予防
- ダイエット
- エイジングケア
- がん予防
- 糖尿病予防
フコキサンチンとは
高い抗酸化作用を持つ成分です。
フコキサンチンはオレンジ色もしくは赤色の色素成分で、600以上の種類があるとされるカロテノイドのうちのひとつ。カロテノイドにはカロテン類とキサントフィル類があり、カロテン類はアルコールに溶けやすく、キサントフィル類はアルコールに溶けないのが特徴。
このうちフコキサンチンはキサントフィル類に属する物質です。
フコキサンチンは、海藻類、野菜、果物に多く含まれています。なかでも海藻類では、わかめ、昆布、もずく、アカモクといった褐藻類にしか含まれていません。野菜、果物にはいくつかのカロテノイドが見られますが、褐藻類のカロテノイドはその大半がフコキサンチン。そのため、効率よくフコキサンチンを摂取できる食材としても注目されています。
フコキサンチンは体内に取り入れられるとフコキサンチノールという物質に変化し、血液中に存在します。カロテノイドには他にも数多くの種類がありますが、その中でもフコキサンチノールは抗酸化作用が強く、国内だけでなく世界中の研究者から注目を集めています。
ちなみに海藻に含まれるフコイダンに名前が似ていますが、フコイダンは多糖類でフコキサンチンは色素。化学的にまったく別の物質です。
期待される効果・作用
脂肪細胞の燃焼サポート
フコキサンチンは脂肪の燃焼をサポートし、肥満やメタボリックシンドロームを予防する働きを持っています。脂肪には、余剰エネルギーである脂肪を熱に変換する「褐色脂肪細胞」と、余剰エネルギーを体内に脂肪として蓄積させる「白色脂肪細胞」があります。
脂肪燃焼に役立つ褐色脂肪細胞には、UCP-1と呼ばれる脱共役タンパク質-1が含まれています。UCP-1には蓄積した脂肪を燃焼させる効果があるのですが、白色脂肪細胞には含まれていません。しかし、フコキサンチンには本来存在しないとされるUCP-1を白色脂肪細胞内に発現させる作用があるのです。これにより、肥満の原因となる白色脂肪細胞が燃焼しやすくなり、メタボリックシンドロームなどの予防につながると考えられています。
2005年に行われた、糖尿病肥満モデルマウスにフコキサンチンが含まれたワカメ油を投与する研究では、ワカメ油を投与されたマウスの白色脂肪細胞だけにUCP-1の発現が認められました。このことからも、フコキサンチンには抗肥満効果があると考えられます。[※4]
糖尿病の予防効果
フコキサンチンには血液中の糖の代謝を促し、血糖値の上昇を抑えるといった働きがあります。高血糖値、高インスリン血症、白色脂肪細胞の増加を示す糖尿病肥満マウスにフコキサンチンを投与した研究によると、糖尿病肥満マウスだけに血糖値と血中インスリン濃度の改善効果が見られました。この効果は脂肪細胞より分泌されるアディポサイトカインの発現をフコキサンチンが調節したと考えられるため、フコキサンチンには糖尿病の予防効果が期待できます。[※4]
がんの予防効果
海藻類に含まれるフコキサンチンには、発がん予防作用があるとしてさまざまな研究が進められています。なかでもヒト前立腺がんのアポトーシス(細胞の自然死)を誘導する力は、数あるカロテノイドの中でフコキサンチンがもっとも強いとされています。結腸がんのモデル動物にフコキサンチンを経口投与したところ、前がん病変形成が有意に抑えられたという研究も報告されています。[※5]
老化防止効果
カロテノイドの一種であるフコキサンチンは、高い抗酸化作用を持つ物質のひとつ。抗酸化作用とは体内に発生する活性酸素を除去する力のこと。紫外線、ストレス、喫煙、ハードな運動などによって活性酸素が過剰に発生すると、正常な細胞を傷つけて老化や疾病の原因になると考えられています。抗酸化作用を持つフコキサンチンにはその活性酸素の生成を阻害し、活性酸素によるダメージから細胞を守ってくれる効果が期待できます。
血管新生を予防する働き
フコキサンチンには、強力な血管新生抑制作用があることが分かっています。血管新生は、がん細胞が栄養や酸素を取り込むときに作り出すものとして知られていますが、動脈硬化や肥満にも血管新生が関わっています。つまり、フコキサンチンによって新しく血管ができることを防げれば、がん、動脈硬化、肥満をはじめとするさまざまな疾病を予防できるのではないかと考えられています。
こんな方におすすめ
フコキサンチンには肥満やメタボリックシンドロームの原因となる脂肪細胞を燃焼する効果が認められています。そのため「最近体重が増えてきた」「脂肪が落ちにくくなってきた」「健康診断でメタボリックシンドロームを指摘された」といった人におすすめの成分です。
しかもフコキサンチンが含まれているのはワカメ、昆布、もずくといった海藻類でカロリーも低いため、ダイエット中の食材としても適しています。血糖値の上昇抑制にも働くため、健康診断の数値が気になる人は積極的に摂取すると良いでしょう。
また、カロテノイドの一種であるフコキサンチンは、強力なパワーを持つ抗酸化物質です。シミ、しわなどの原因となる活性酸素を抑制する効果も期待できるので、老化防止を目指したい人にも適していると言えるでしょう。
摂取目安量・上限目安量
フコキサンチンの摂取量についてはとくに制限は報告されていませんが、ダイエット効果を目的にフコキサンチンを摂取するのであれば、1日あたりの摂取目安量は2㎎ほどとされています。食品で換算すると、ワカメ2g、ヒジキ1g、アカモク0.5gといったところです。
フコキサンチンは脂溶性の性質であるため、油と一緒に摂取すると吸収率がアップします。そのためオイルを使ったドレッシングや炒め物にして取り入れると、より効率よくフコキサンチンを取り込めるでしょう。また、フコキサンチンは水に溶け出さないため、だしに使った昆布も佃煮などにして食べるようにすると◎です。
考えられるリスク・
副作用
フコキサンチンの安全性についてはいくつかの動物実験の結果報告があり、現在のところ安全性が示唆されています。
マウスを使った一般毒性試験では、精製したフコキサンチンを 2000 mg/kg マウスに単回投与、1000 mg/kg を30 日間の反復投与した結果、毒性に関わる所見は認められなかったと報告されています。また、遺伝毒性としての復帰突然変異試験と小核試験も行われましたが、異常は認められませんでした。
実験の中で、フコキサンチンを投与したマウスやラットでは血中のコレステロール濃度が上昇することが報告されています。ただし、ヒト試験ではコレステロール濃度の上昇が報告されておりません。現在のところは動物種間の違いによる影響ではないかとみられていますが、まだ研究例が少ないため、判断は注意する必要があります。[※12]
フコキサンチンを含む食べ物
フコキサンチンは主に海藻に含まれている成分ですが、とくに昆布、ワカメ、ヒジキ、アカモク、ホンダワラといった“褐藻”に含まれています。また、エサとして海藻を取り入れている牡蠣、ホヤといった貝類にも多く含有されています。
それぞれの褐藻に含まれるフコキサンチン量ですが、生の褐藻100gあたり昆布で約19㎎、ワカメ約11㎎、ヒジキ約2.2㎎、ホンダワラ約6.5㎎、アラメ約7.5㎎。乾物になると昆布約2.2㎎、ワカメ約8.4㎎、その他の褐藻は検出限界以下と含有量が大幅に減少するため、できるだけ生の状態で食べるようにすると良いでしょう。[※13]
発見・研究の歴史
フコキサンチンが発見されたのは1914年のこと。化学構造が決定されたのは1969年で、1999年に抗がん作用があるという報告から、多くの研究者の関心を集めることになりました。2000年代になると機能性食品の成分として注目されるようになり、数々の研究が進められるようになりました。
とくに北海道大学大学院水産科学研究科の宮下和夫教授らの研究グループが発表した、フコキサンチンの抗肥満作用についての報告は世界中から注目されました。この研究では褐色脂肪細胞のみに発現するといわれていたUCP1というタンパク質を、フコキサンチンが白色脂肪細胞内にも発現させるということを突き止めたもの。UCP1は内臓脂肪を熱に変化させる作用を持っているため、フコキサンチンは抗肥満成分であると広く知られるようになったのです。[※9] s
フコキサンチンに関する研究情報
【1】褐色脂肪細胞内の脱共役タンパク質UCP1は、脂肪の燃焼やカロリーの消費に役立つとされています。ワカメから抽出されたフコキサンチンにはこのUCP1の働きを活性化させ、抗肥満作用を発揮すると考えられています。
【2】0.1%および0.2%のフコキサンチンを含む食品を糖尿病マウスに投与したところ、インスリンの働きを抑えて血糖値を上昇させるTNF-αの活性が抑制。血糖値の上昇が50%抑制されたことが分かりました。
成分
10秒解説
カロテノイドのひとつであるフコキサンチンは、野菜、果物、海藻類に多く含まれるオレンジ色の色素成分。海藻の中ではわかめ・昆布といった褐藻にしか含まれていないのが特徴で、「褐藻素」とも呼ばれます。近年では糖尿病、がんなどへの効果が期待されている成分です。