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チロシン

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成分
10秒解説

非必須アミノ酸のひとつであるチロシンは、体内で神経伝達物質の生成に関与している成分です。このことから、注意力や気分の強化といった脳の健康を促す効果や、うつ病・睡眠障害などの治療への効果が期待されています。また、メラニンや甲状腺ホルモンの生成にも関わっています。

こんなお悩み・健康効果に

  • 脳機能の向上
  • メラニン色素の生成
  • 甲状腺ホルモンの生成
  • 抗ストレス作用
  • うつ症状・睡眠障害の改善

チロシンとは

ドーパミンなど重要な神経伝達物質の生成に関わるアミノ酸

チロシンは非必須アミノ酸のひとつです。体内では「フェニルアラニン」という必須アミノ酸から生成され、脳の働きに重要な神経伝達物質「ドーパミン」「エピネフリン」「ノルエピネフリン」などの材料となります。[※1]

その他チロシンは、皮膚や毛髪に色素を与える「メラニン」の生成にも関わっているアミノ酸です。私たちの身近なところでは、肌のシミの原因となるメラニンをつくり出すことに関与するほか、色素欠乏症などの治療に役立つ可能性のある成分であると考えられています。

チロシンは、生まれつきの疾患「フェニルケトン尿症」の治療に有効であることが明らかとなっています。フェニルケトン尿症は、フェニルアラニンからチロシンをつくり出す酵素の働きが生まれつき弱く、フェニルアラニンが体内に蓄積しチロシンが欠乏する病気です。この病気ではチロシン投与のほか、食事療法や薬物療法などが必要です。

さらに近年は、チロシンが脳の神経伝達物質の生成に関わることから、脳機能の向上やうつ病、パーキンソン病などの治療に対する効果についての研究が多く行われています。チロシンが原料となってつくられるドーパミンは、快さを感じることにおいて重要な役割を持つ物質です。そのため、チロシンが不足しドーパミンの生成に支障が出ると、気分の落ち込みや抑うつ状態につながると考えられています。

チロシンは肉や魚、卵、大豆製品、ナッツ類など幅広い食品に含まれています。サプリメントからも摂取できますが、栄養バランスの良い食事を心掛けることで、チロシンを十分摂取することが可能です。

期待される効果・作用

脳機能の向上

チロシンは脳内の神経伝達物質の生成に関わるアミノ酸であるため、脳の健康維持に役立つと考えられています。

脳内には膨大な数の神経細胞が存在しており、これら細胞同士の情報伝達の役目を担うのが、ノルアドレナリンやドーパミンといった神経伝達物質です。神経伝達物質が不足すると意欲や集中力の低下を招きやすくなってしまいます。[※2]

チロシンはドーパミンなどの神経伝達物質の前駆体として、集中力や意欲を高めるといった脳機能の向上への効果が期待されています。

メラニン色素の生成

チロシンは、皮膚や髪に色素を与える成分であるメラニンの生成に関与しています。そのため、色素欠乏症のような疾患の治療に役立つ可能性もあると考えられています[※1]。

また、チロシンを摂取することで白髪の予防や黒髪の維持に役立つ可能性があるかもしれません。

甲状腺ホルモンの生成

甲状腺ホルモンの生成にも関与するチロシンは、甲状腺疾患の治療に用いられることがあります。甲状腺ホルモンには、細胞の新陳代謝を活発にしたり新陳代謝により産生されたエネルギーで体の機能を活性化したりする作用があります。そのため、チロシンを補うことは体の成長を促したり、体内のさまざまな機能を維持したりするのに役立つといえるでしょう。

抗ストレス作用

チロシンは「セロトニン」「ノルアドレナリン」「ドーパミン」の原料となります。そのため、これらの神経伝達物質が関与するストレス反応を調節し、緩和することに役立つと考えられます。

うつ症状・睡眠障害の改善

チロシンは、うつ症状や睡眠障害の改善への効果が期待できる成分です。ドーパミンやノルアドレナリンが不足すると、物事への関心や気力が失われてしまうことがあります。また、セロトニンはドーパミンやノルアドレナリンの分泌を制御することで精神を安定させたり「睡眠ホルモン」とも呼ばれるメラトニンの原料となったりします。そのため、睡眠リズムを整えることにも役立つといえるでしょう。

このことから、神経伝達物質の生成に関与するチロシンを補うことは、うつ症状や睡眠障害の改善につながる可能性があると考えられます。

こんな方におすすめ

チロシンが不足すると、イライラしたり、集中力や気力の低下などが起こったりします。そのため、チロシンは注意力や集中力が必要とする方、気分の落ち込みや睡眠に悩みを抱える方に効果が期待できる成分です。また、ストレスにさらされやすい方にもおすすめの成分であるといえるでしょう。

しかし、チロシンはアミノ酸であるため単体で摂取することよりも、たんぱく質をしっかりと摂取できる、栄養バランスの良い食事を心掛けることが第一であるといえます。

厚生労働省では、チロシンをはじめとしたアミノ酸の摂取目安量・上限量などは設定されていません。

9種類の必須アミノ酸に関しては、日本人の食事摂取基準において参考として必要量が示されていますが、チロシンは非必須アミノ酸であるため必要量は設定されていません。[※3]

なお、睡眠不足後の集中力改善に対するチロシン摂取量の目安は150mg/㎏/日とされています。[※1]

考えられるリスク・
副作用

チロシンは食事から摂取しているアミノ酸です。そのため、通常の食事から摂取する分には副作用などはないといえますが、悪心や頭痛、胸やけや関節痛といった副作用がみられることもあります

また、甲状腺機能亢進症であるバセドウ病(グレーブス病)のある方は、チロシンの摂取を控えなければいけません。[※1]

チロシンを含む食べ物

チロシンは肉・魚・卵・乳製品などたんぱく質を多く含む食べ物に含まれています。

具体的には、チーズなどの乳製品、鶏肉、豚肉(赤身)、まぐろ、かずのこやたらこ、納豆、アーモンドなどのナッツ類、バナナ、ごま、かぼちゃの種などに豊富に含まれています[※1][※4]。

発見・研究の歴史

アミノ酸がアスパラガスの芽から初めて発見されたのは1806年でしたが、チロシンが発見されたのは1846年のこと。チロシンは、チーズに含まれるタンパク質の一種「カゼイン」から発見されたことに因み、ギリシャ語の「チーズ」を由来とするチロシンという名前が付けられました[※5]。その後、1935年までにたんぱく質を構成する20種類のアミノ酸がすべて発見されました。

現在、チロシンはフェニルケトン尿症に対する治療への効果が明らかになっているほか、睡眠障害後の覚醒の改善についても一定の有効性が認められているようです。また、うつ病への効果など、その他の有効性についてもさらなる研究が進められています。

チロシンに関する研究情報

【1】睡眠不充分患者の覚醒後の約3時間後の精神運動検査において、チロシンを150 mg/kg摂取することで能力の持続時間が延長されました
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7794222/

【2】フェニルケトン尿症患者に対して、フェニルアラニン制限食に加えチロシン補給(チロシンサプリメント投与)を行うことで、血中チロシン濃度が有意に上昇しました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23737086/

参照・引用サイトおよび文献

※1 チロシン|健康食品・サプリ[成分]のすべて(第6判) ナチュラルメディシン・データベース

※2 脳が元気になると、脳卒中や痴呆も予防できる(食べ物編)|オムロン ヘルスケア
(URL:https://www.healthcare.omron.co.jp/resource/column/life/3.html

※3 日本人の食事摂取基準(2020年版)|厚生労働省
(URL:https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586557.pdf

※4 日本食品標準成分表2020年版(八訂)
(URL:https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_01110.html

※5 チロシンってどんな成分?効果や摂取するために必要な食材とは|ダイト薬品
(URL:https://daitoyakuhin.co.jp/blogs/2021/04/13/%E3%83%81%E3%83%AD%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%A9%E3%82%93%E3%81%AA%E6%88%90%E5%88%86%EF%BC%9F%E5%8A%B9%E6%9E%9C%E3%82%84%E6%91%82%E5%8F%96%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AB/

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