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葉酸

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成分
10秒解説

水溶性のビタミンB群に分類される葉酸。葉酸はDNAやたんぱく質の合成、アミノ酸の代謝に関与し、細胞の増殖と深く関わっている成分です。胎児の発育に欠かせない成分としても知られている他、生活習慣病予防や認知症予防についての研究も進められています。

こんなお悩み・健康効果に

  • 胎児の神経管閉鎖障害のリスク低下
  • 貧血予防
  • 動脈硬化予防
  • 高血圧の改善
  • うつ病に対する症状緩和作用

葉酸とは

胎児の正常な発育、細胞や赤血球の産生に欠かせないビタミン

葉酸は水溶性ビタミンの「ビタミンB群」の一つ。ビタミンB12とともに造血作用に関わる他、核酸合成に必要な物質を産生するための補酵素として働いています[※1]

また、葉酸は細胞分裂にも深く関与する成分です。そのため妊娠を希望する方や妊娠中の方には、胎児の流産や神経管奇形を予防する目的で葉酸の摂取が推奨されています[※2]。特に胎児の神経管閉鎖障害においては、妊娠前から葉酸を摂取することで発症リスクを低減できることが明らかとなっています[※3]。

ほうれん草の抽出物から発見されたことから命名された「葉酸」ですが、食部性食品だけではなく、動物性食品であるレバーなどにも多く含まれています。別名プテロイルグルタミン酸と呼ばれる葉酸は、食品中には「ポリグルタミン酸型」として存在し、消化によりモノグルタミン酸に分解されて小腸から吸収されます[※1]。

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」においては、プテロイルモノグルタミン酸の摂取量としての基準が示されています[※4]。

赤血球の産生や核酸合成に関わる葉酸ですが、近年は動脈硬化のリスクを高める物質「血清ホモシステイン」を、血中コレステロール値を下げる物質に変換することを助ける作用を持つことが示唆されています[※1]。

期待される効果・作用

胎児の神経管閉鎖障害のリスク低下

葉酸は胎児の正常な発育に不可欠な栄養素。特に神経管閉鎖障害発症リスク低減において、重要な役割を担います。

妊娠初期は胎児の神経管形成時期で、細胞増殖が盛んに行われます。この時期に葉酸の摂取が不足すると、胎児の神経管閉鎖障害の発症リスクが高まることがわかってきました。

そのため、このような障害のリスクを低下させるためには、妊娠1か月以上前から3カ月までの葉酸の摂取が推奨されています[※3]。

貧血予防

葉酸は赤血球の産生に関わる栄養素なので、葉酸が不足すると貧血を起こしやすくなります。葉酸を十分に摂取することで、葉酸欠乏による貧血の予防に役立つでしょう。

動脈硬化予防

血液中のホモシステイン濃度が上昇すると、動脈硬化のリスクが高まるといわれています。

ホモシステインは、必須アミノ酸であるメチオニンが代謝される際に生成されるアミノ酸の一種。葉酸およびビタミンB6、ビタミンB12には、ホモシステインをメチオニンに変換する作用があるといわれているため、不足するとホモシステインの血中濃度が上昇してしまうのです。[※5]

そのため、葉酸を十分に摂取することで動脈硬化の発症を防ぎ、さらには心疾患や脳血管疾患の予防に役立つと考えられています。

高血圧の改善

葉酸には、高血圧を改善する効果が示唆されています[※2]。

高血圧の方に、少なくとも6週間葉酸を毎日摂取させたところ、血圧の低下がみられました。このことから、葉酸には高い血圧を正常にする作用があると考えられています。なお、葉酸と降圧剤を併用しても、降圧剤単独の場合よりも血圧を低下させることは無いようです。

うつ病に対する症状緩和作用

葉酸と抗うつ薬の併用により、うつ症状の改善がみられることが示唆されています[※2]。また、男性においては、葉酸の血中濃度が高いほど抑うつ症状を有する人が少ないという報告もあります[※6]。

葉酸は脳内の神経伝達物質の合成に重要であるという点においても、うつ病に対する効果の解明に期待が寄せられています。

こんな方におすすめ

葉酸の効果で有効性が高いとされているものの一つが、胎児の神経管閉鎖障害に関するものです。妊娠前から葉酸を摂取しておくことで、この疾患のリスクを低減することができます。

葉酸はビタミンB群であり、全ての方に必要な栄養素ですが、特に妊娠を希望されている方においては、食事からの摂取に加えて、サプリメントなどで補うことも意識しましょう。

また、動脈硬化やそれによって起こる心疾患や脳血管疾患の予防にも、葉酸はおすすめの成分です。血圧が高めだという方は、意識して摂取するようにしてみるとよいでしょう。

厚生労働省で設けられているのは、プテロイルモノグルタミン酸としての葉酸の摂取推奨量(乳児では目安量)と耐容上限量です。

なお、耐容上限量については通常の食品以外の食品、つまりサプリメントなどから摂取する場合に適用されます。

成人男女における葉酸の推奨量および耐容上限量は以下の通りです[※4]。

  • 推奨量:240μg/日
  • 耐容上限量:900μg~1,000μg

妊娠中の方、授乳中の方の摂取推奨量は、一般の方の推奨量(240μg/日)に以下の量を付加することが推奨されています[※4]。

  • 妊娠中の方:+240μg
  • 授乳中の方:+100μg

考えられるリスク・
副作用

妊娠中の方や授乳中の方を含め、葉酸はほとんどの方に安全であると考えられています。

ただし、高用量の葉酸を長期にわたって摂取すると、以下のような副作用が現れる可能性があります[※2]。

  • 腹部の痙攣
  • 胃のむかつきや吐き気
  • 腸内ガスの発生や下痢
  • 皮疹、皮膚反応
  • 睡眠障害
  • 挙動反応、痙攣、興奮性

葉酸は水溶性ビタミンであるため、過剰摂取したとしても体内に蓄積される心配はありません。しかしサプリメントなどを利用して葉酸を摂取する場合には、1日当たりの摂取目安量を守り、過剰摂取をしないようにしたほうがよいでしょう。

葉酸を含む食べ物

葉酸は以下のような食べ物に多く含まれています[※7]。

  • 焼きのり       1900μg/100g
  • 鶏レバー(生)    1300μg/100g
  • 牛レバー(生)    1000μg/100g
  • 豚レバー(生)    810μg/100g
  • 生うに        360μg/100g
  • モロヘイヤ(生)   250μg/100g
  • なばな(生)     240μg/100g
  • ブロッコリー(生)  220μg/100g
  • ほうれんそう(生)  210μg/100g
  • 玉露(茶/浸出液)  150μg/100g

熱に弱く水に溶けやすい性質を持つ葉酸は、生の食品から摂取するのが効率的です。加熱して摂取する場合は火を通し過ぎないようする、もしくは煮汁ごと食べられるスープなどで摂取するとよいでしょう。

また、葉酸と相乗効果を発揮する成分として、ビタミンB12が挙げられます。ビタミンB12も葉酸同様、造血やホモシステインの産生抑制に関与する成分です。そのため葉酸とビタミンB12を一緒に摂取することで、貧血や動脈硬化予防に対する効果が高まる可能性があると考えられます。

発見・研究の歴史

葉酸は、悪性貧血の研究者ウィルスによって1931年に発見されたといいます。この成分は抗悪性貧血因子として「ビタミンM」と名付けられました。

その後、1941年にほうれん草からも同様の成分が発見されたことから、ラテン語の「葉」と「酸」から葉酸(folic acid)と命名されたのです[※8]。

現在では葉酸がさまざまな食べ物に含まれていることや、胎児の成長に欠かせない成分であることなど、さまざまな性質が明らかになっています。さらに近年では、うつ病の症状改善に効果を示す可能性があることが示唆されるなど、新たな機能性のメカニズム解明に期待が寄せられています。

葉酸に関する研究情報

【1】神経管閉鎖症の子を出産した経験を持つ母親60名を対象に、1日当たり4mg の葉酸を妊娠前と妊娠初期に摂取させたところ、胎児の神経管閉鎖症の予防効果が見られました。このことから、葉酸には胎児の神経管閉鎖症を予防する効果があることが確認されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/6786536/

【2】思春期の女性150,700人に週1回、4年間鉄と葉酸を摂取させたところ、貧血の有病率は73.3%から25.4%に減少しました。このことから、鉄と葉酸の摂取は貧血予防に効果敵であることが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18947031/

【3】高ホモシステイン血症男性患者100名を対象に、葉酸0.65mg/日、ビタミンB12を0.4 mg/日、ビタミンB6を10 mg/日、または3つを組み合わせたものを6週間摂取させました。その結果、ビタミンB6とビタミンB12よりも、葉酸を摂取した場合の方が血中ホモシステインがより顕著に低下。3つを組み合わせたものと葉酸単独での減少率は、有意差がありませんでした。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7931701/

【4】818人の被験者に1日800mgの葉酸を3年間摂取させ、認知能力への効果を調査しました。その結果、葉酸は加齢に伴って低下する傾向がある認知機能を、有意に改善させることが分かりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17240287/

参照・引用サイトおよび文献

※1 葉酸の働きと1日の摂取量|公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット
(URL:https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/vitamin-yousan-biotin.html

※2 葉酸|健康食品・サプリ[成分]のすべて(第6判) ナチュラルメディシン・データベース

※3 葉酸とサプリメント ‐神経管閉鎖障害のリスク低減に対する効果 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
(URL:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-002.html

※4 【PDF】日本人の食事摂取基準(2020年版)ビタミン(水溶性ビタミン)|厚生労働省
(URL:https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586563.pdf

※5 ビタミンB群不足による「高ホモシステイン血症」のリスクとは|大塚製薬株式会社
(URL:https://www.otsuka.co.jp/college/laboratory/03.html

※6 シンポジウム29 うつ病における栄養・運動の役割|第36回日本生物学的精神医学会 第57回日本神経化学会 合同年会
(URL: https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail601.html

※7 日本食品標準成分表2020年版(八訂)|文部科学省
(URL:https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_01110.html

※8 水溶性ビタミン(2)|一般財団法人食品分析開発センターSUNATEC
(URL:http://www.mac.or.jp/mail/110801/04.shtml

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