タンニン
こんなお悩み・健康効果に
- 抗酸化作用
- 肌の収斂(しゅうれん)作用
- 下痢の改善
タンニンとは
柿や茶葉に含まれる渋み成分「タンニン」は、ポリフェノールの一種です。タンニンは多くの植物に含まれており、古くから食品や医薬品、塗料などとして利用されてきましたが、特に革をなめすのに使われることでよく知られています。
日本ではお茶に含まれる成分としてよく摂取されているのがタンニンです。お茶の中でも緑茶に含まれるポリフェノールの多くがタンニンであり、タンニンの多くが健康成分として知られる「カテキン」であることが分かっています[※1]。タンニンは、赤ワインの渋み成分としても知られています。
ポリフェノールの一種であるタンニンは抗酸化作用を持ち、体内に過剰発生した活性酸素のはたらきを抑制したり除去したりする働きがあります。そのため、老化や動脈硬化を抑制する効果も期待できるでしょう。
また、タンニンには収斂(しゅうれん)作用があるため、化粧品などとして肌に使用することで毛穴を引き締めるなどの効果が期待できます。さらにタンニンの収斂作用は下痢の改善にも効果を発揮することから、止瀉薬としても利用されています。
期待される効果・作用
抗酸化作用
タンニンはポリフェノールの一種です。ポリフェノールには抗酸化物質としての働きがあるため、過剰に生成されると動脈硬化、がん、老化などを引き起こすとされている活性酸素を取り除く作用があります。
このことは、活性酸素によってつくり出される過酸化脂質の生成を抑えることにもつながるため、動脈硬化を抑制し心疾患や脳血管疾患の予防にも期待できると考えられるでしょう。
肌の収斂(しゅうれん)作用
タンニンは、たんぱく質と結合し引き締める効果「収斂(しゅうれん)作用」のある成分です。そのため、化粧品などとして肌に使用すると、皮膚のたんぱく質とタンニンが結合することにより、開いた毛穴や皮脂腺を引き締める効果があります。[※2]
また、タンニンを口に含むことで渋みを感じるのは、口腔粘膜のたんぱく質と結合することで生まれる感覚であるとされています。
下痢の改善
タンニンの持つ収斂作用は、腸の炎症を鎮め蠕動運動を抑えることで下痢を改善する効果があります[※3]。
こんな方におすすめ
タンニンには抗酸化作用があります。そのため、体内の酸化を防ぎ若々しい体づくりを意識したい方や、生活習慣病など疾患対策を取りたい方などにおすすめの成分であるといえるでしょう。
また、肌の調子を整えたい方などにも適した成分であると考えられます。
摂取目安量・上限目安量
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」では、タンニンの摂取目安量・上限量などは定められていません。
タンニンは通常の食生活を送るうえで摂取する分には安全性の高い成分ですが、それ以外の方法で大量摂取してしまうと副作用が起こる可能性があります。上限量は定められていませんが、極端に多い量のタンニンを摂取することは避けるべきであると考えられるでしょう。
考えられるリスク・
副作用
タンニンは、食品中に含まれる量を摂取する場合には安全であるとされている成分です。しかし、皮膚に使用したり医薬品として経口摂取したりする場合には、大量摂取すると胃炎、悪心、嘔吐、肝障害などの副作用が生じる可能性があります[※4]。
また、妊娠中や授乳中の方、内服中の方がサプリメントなどからタンニンを摂取しようとする場合にも注意が必要です。このような場合には、必ず主治医や薬剤師に確認するようにしましょう。
以前は、お茶などタンニンを多く含む食品と鉄剤を一緒に摂取すると薬剤の効果が低下するため、鉄剤服用後1時間以上経ってから摂取するよういわれてきました。しかし最近の研究から、鉄剤へのタンニンの影響は大きくないと考えられるようになってきたため、お茶と一緒に服用しても問題はないとされています。
タンニンを含む食べ物
タンニンは、緑茶や紅茶、コーヒーに多く含まれています。[※6]
食品名 | タンニン含有量(浸出液100mLあたり) | 抽出方法など |
---|---|---|
玉露 | 0.23g | 茶葉 10g/60℃ 60mL、2.5分 |
せん茶 | 0.07g | 茶葉 10g/90℃ 430mL、1分 |
ほうじ茶 | 0.04g | 茶葉 15g/90℃ 650mL、0.5分 |
玄米茶 | 0.01g | 茶葉 15g/90℃ 650mL、0.5分 |
ウーロン茶 | 0.03g | 茶葉 15g/90℃ 650mL、0.5分 |
紅茶 | 0.10g | 茶葉 5g/熱湯 360mL、1.5分~4分 |
コーヒー | 0.25g | コーヒー粉末 10g/熱湯150mL |
文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」をもとに作成
発見・研究の歴史
革をなめすためにタンニンを使う技術は、紀元前のエジプトの古文書にも書かれており、かなり古くから行われていたようです[※7]。日本では、江戸時代に「お歯黒」に使用されていました。
かつて革をなめしていた成分は、18世紀にはすでに「タンニン」と名付けられていました。この頃から化学構造に関する研究も行われてはいたものの、測定技術の開発などに伴い劇的に研究が進んだのは1970年代後半から1980年代であるといわれています。[※7]
現在では、茶葉やワインに含まれているタンニンはポリフェノールの一種であり、緑茶中のタンニンの多くがカテキンであることなどが明らかとなっています。
タンニンに関する研究情報
【1】緑茶タンニンの抗酸化作用によりHDLコレステロールが上昇することは、動脈硬化の進展抑制に関与していることが明らかとなりました
【2】安定期のクローン病における慢性下痢に対するタンニンアルブミン酸500mgとエタクリジン乳酸50mgの組み合わせ(タナコンプ)硬化を検討したところ、下痢の改善が見られ、特に大腸に限局したクローン病患者において顕著な傾向が見られました。
【3】糖尿病モデルマウスにおいて、柿タンニンは糞便中の胆汁酸排泄量を2倍に増加させ、血漿中のコレステロール、トリグリセリド、インスリンレベルの上昇を有意に抑制し、脂肪肝を予防しました。柿タンニンが肝臓の褐色脂肪細胞や骨格筋において、コレステロール代謝を活性化させることが確認されました。
【4】ハマメリスタンニンは、活性酸素による溶血から赤血球を保護し、3T3線維芽細胞およびHaCat細胞に対して軽度の細胞毒性を示した。また、ブドウやマツに含まれるポリフェノールの一種であるプロシアニジンよりも低濃度で腫瘍性SK-Mel 28メラノーマ細胞の増殖を抑制しました。
成分
10秒解説
古くから革製品をなめすのに使われることで知られるタンニンは、植物の葉や枝、実、根などに含まれている渋み成分。タンニンはポリフェノールの一種で、食品や化粧品、医薬品など、さまざまな用途で利用されています。抗酸化作用を持つことから、動脈硬化を抑制する作用などが期待されています。