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ビタミンB1

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成分
10秒解説

ビタミンB1は、炭水化物などの糖質からエネルギーを産生し、皮膚や粘膜の健康維持などを助ける栄養素で、糖質(ブドウ糖)を栄養源とする脳神経系の正常な働きにも関係しています。
水溶性ビタミンのひとつで、豚肉や玄米・麦などの動物性食品や穀類に多く含まれている栄養素です。

こんなお悩み・健康効果に

  • 疲労回復
  • ウェルニッケ・コルサコフ症候群予防
  • 脚気予防
  • 脳や末梢神経の機能維持
  • ストレス緩和
  • 肝障害の改善
  • 悪酔い予防
  • 記憶力の改善

ビタミンB1とは

動植物性食品に多く含まれる水溶性ビタミンで、
補酵素として糖の代謝やアミノ酸の代謝に関わっています。

水溶性ビタミンの一種であるビタミンB1は、数あるビタミンの中で1番最初に発見されました。
化学名ではチアミンとよばれ、糖質をエネルギーに変換する際に必要不可欠な栄養素です。補酵素として糖代謝やアミノ酸の代謝に関与しています。

水溶性ビタミンであるビタミンB1は水に溶けやすく、大量に摂取しても比較的早く体外に排出されるため、食品からの摂取で過剰摂取になることはほとんどありません。さまざまな食品の中に広く存在しており、食事によって摂取しやすい一方、熱に弱い性質をもっているため、長時間の加熱や水洗いで消失してしまうという特徴もあります。

ビタミンB1が不足すると、エネルギー代謝系が停滞して疲労を感じたり、消化管の運動が鈍くなるため食欲不振が起きたる原因に。
糖質の摂取量が多い日本人にとっては特に不足しやすい栄養素で、意識的に摂取する必要があると言われています。

期待される効果・作用

疲労回復

ビタミンB1は、糖質をエネルギーに変換する際に必要不可欠な栄養素です。
ビタミンB1が不足するとブドウ糖から十分にエネルギーを産生できなくなるので、乳酸などの疲労物質がたまり疲れやすくなります。ビタミンB1を摂取することで、疲労を溜めにくい体づくりや疲労回復の効果が期待できます。

肝障害の改善

エネルギーが充足していて利用されない過剰な糖質は、グリコーゲンとなって肝臓や筋肉に貯蔵されていきます。しかし、その貯蓄量には限界があり、余剰分は脂肪酸へと合成されて脂質となります。
肝臓への蓄積は「脂肪肝」と呼ばれ、肝障害の一因に。ビタミンB1を適切に摂取することで糖質が分解されるので、脂肪の蓄積予防・肝障害の改善効果が期待されています。

悪酔い予防

アルコールを分解し、最終的にエネルギーを作り出す際にはビタミンB1が消費されるので、大量にお酒を飲んだ際には多くのビタミンB1が消費されてしまいます。
また、アルコールは、ビタミンB1の吸収を低下させたり、体外への排泄を加速させたりするので、お酒を飲む方はビタミンB1を意識的に摂取することで、アルコール分解の促進や悪酔いの予防、飲酒後の疲労改善といった効果が期待できます。

記憶力の改善

脳の神経系や末梢神経・筋肉が働くためには多くのエネルギーが必要とされ、その素となるものが糖質(ブドウ糖)です。その糖質をエネルギーに変えるビタミンB1が不足すると、神経炎や脳組織への働きに障害が生じてしまいます。
ビタミンB1を適切に摂取することでエネルギー代謝系が停滞するのを防ぎ、集中力や記憶力の低下といった症状を予防することができます。

ウェルニッケ・コルサコフ症候群予防

アルコール依存症や摂食障害、妊娠悪阻などの場合にビタミンB1が不足すると、軽度から昏睡までさまざまな程度の意識障害や、眼球運動障害、小脳失調を特徴とするウェルニッケ脳症、さらに遺症であるコルサコフ症候群を発症する可能性があります。
ビタミンB1を適切に摂取することで、これらの病気を予防することができます。

脚気予防

ビタミンB1は糖質の代謝に関わる大切な栄養素で、不足すると末梢神経障害や心不全がおきてしまい、全身の倦怠感、食欲不振、手足のしびれ・むくみなどの症状がでる脚気という病気を発症します。
かつて大流行した病気ですが、現代でも偏食の若者や持病のある人は脚気を発症する場合があります。偏食傾向のある方は、ビタミンB1を意識的に摂取することで脚気を予防しましょう。

こんな方におすすめ

ビタミンB1は、その働きや効果から、炭水化物(糖質)の摂取量が多い方、インスタント食品をよく食べる方、スポーツなど激しい運動をする方、飲酒量が多い方、神経・筋肉の疲労を回復したい方(眼精疲労になりやすい人、肩こりや筋肉痛が気になる方)は、積極的に摂取をした方がいいと言われています。
また、エネルギー必要量が増加する妊娠中は、ビタミンB1やビタミンB2の摂取推奨量が非妊娠時より増加します。とくにつわりが酷い方の場合はビタミンB1欠乏症が出るおそれがあるため、積極的な摂取が推奨されています。

厚生労働省が設定している「日本人の摂取基準(2020年版)」[※1]によると、ビタミンB1は、摂取目安量としては、18~49歳以上の男性で1.4mg、女性で1.1 mgとなっています。
糖質を多く摂る人や、よく体を動かす人は、エネルギーの産生が盛んなため、多めにビタミンB1をとる必要があります。一日の摂取目安量や生活習慣に合わせて摂取するようにしましょう。

考えられるリスク・
副作用

ビタミンB1は、過剰に摂取をしても余剰分は尿中に排泄されるため体内に蓄積しにくく、耐容上限量も設定されていないため、摂り過ぎによる過剰症の心配はほとんどないと言われています。
しかし、サプリメントから1日10g程度を20日間にわたり大量摂取をすると、頭痛、いらだち、不眠、速脈、脆弱化、接触皮膚炎、かゆみなどの症状が現れたという報告があります。[※1]

ビタミンB1を含む食べ物

ビタミンB1は、肉類、魚類、豆類、穀類、種実類などに多く含まれています。

ビタミンB1を含む主な食べ物(100gあたり)[※2]

・豚ヒレ 赤肉(生)…1.32mg
・豚もも赤赤肉( (生)…0.96mg
・豚ボンレスハム…0.90mg
・かつお節…0.55mg
・紅鮭(生)…0.26mg
・玄米…0.16mg

ビタミンB1は水溶性ビタミンのため、洗うことで栄養素が流れ出てしまい、水道水の残留塩素によっても分解されてしまいます。また、加熱によって破壊されやすいというのも特徴です。
ビタミンB1は食事から摂取することが難しい栄養素ですので、調理する際には洗いすぎないこと、火を通しすぎないことが大切です。

発見・研究の歴史

ビタミンB1を最初に発見したのは日本人の農学者、鈴木梅太郎です。
鈴木は米の研究中に、米ぬかの中から新しい栄養素を取り出すことに成功。そして1911年にその未知の栄養素「オリザニン」と名づけ、脚気予防につながるという論文を東京化学会誌に発表しましたが、翌年、ポーランドの化学者・カシミール・フンクが、同様の栄養素を発見して「ビタミン」として発表したため、後者の名称が有名になってしまいました。[※3] [※4]

ビタミンB1に関する研究情報

【1】4人の健康な男性に、1ヶ月(30日)間にわたってビタミンB1を完全に除去した食事を摂取してもらうという欠乏実験では、実験開始のおよそ2週間後、血中ビタミンB1濃度が急激に低下し、脚気の典型的な初期症状のひとつである全身倦怠感の出現が観察されました。
その後、ビタミンB1を1日あたり0.7mg含む食事を摂取してもらったところ、血中ビタミンB1濃度は速やかに上昇し、2週間程度でほぼ元のレベルに戻り、全身倦怠感も消失しました。
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586563.pdf

【2】ヒトでは、2種類のチアミン欠乏症、脚気とウェルニッケ・コルサコフ症候群(WKS)がみられましたが、脚気では主に末梢神経系が障害される一方、WKSでは中枢神経系が障害されています。なぜ単一のビタミンが異なる2種類の病体を引き起こすのかはよくわかっていませんが、WKSの神経障害系は多くの神経変性疾患同様に脳の特定領域に見られ、その発症機構に興味がもたれてきました。WKSに類似した病態を示す疾患モデル動物の研究により、WKSの発症には興奮性神経毒性や酸化ストレスなどの要因が関与することが明らかになっています。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/hikakuseiriseika/31/1/31_13/_pdf/-char/ja

【3】満腹中枢欠損ラットを用いて餌を過剰に投与、さらにゲージの中で飼育を行い、運動量を少なくすることで糖尿病を発症しやすくした状況で研究が行われました。そのような状態でも餌にビタミンB1をたくさん混ぜて与えたラットは糖尿病にならないうえ、さらに血圧を上昇させる生理活性物質も増えておらず、高血圧にならないことも明らかになりました。
https://takeda-kenko.jp/yakuhou/backnumber/.pdf/vol471_01.pdf

※1「日本人の食事摂取基準(2020年版)|厚生労働省」
(https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586563.pdf )

※2「ビタミンB1の働きと1日の摂取量|健康長寿ネット 公益財団法人長寿科学振興財団」
(https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/vitamin-b1.html)

※3「鈴木梅太郎のビタミンB1の発見|東京大学」
( http://www.bt.a.u-tokyo.ac.jp/senjin/vol1/ )

※4「くすりのあゆみ|製薬協」
(http://www.jpma.or.jp/junior/kusurilabo/history/person/suzuki.html)

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