βカロテン
こんなお悩み・健康効果に
- 動脈硬化の予防
- 免疫機能の維持
- 老化の予防
- 糖尿病の予防
- がんの予防
- 皮膚や粘膜の健康維持
- 視覚機能の維持
βカロテンとは
カロテンは主に緑黄色野菜に多く含まれる「カロテノイド」の一種です。[※1]
カロテノイドは微生物や植物、動物など広く天然に存在し、黄色~赤色を示す脂溶性の色素成分。大きく分けると「カロテン類」と「キサントフィル類」に分類されます。カロテン類の代表的なものには、緑黄色野菜に多いβカロテンやトマトのリコピン、唐辛子やパプリカに含まれるβクリプトキサンチンなどがあります。
カロテン類のうち、βカロテン、αカロテン、γカロテン、βクリプトキサンチンなどは体内でビタミンAに変換されます。このように、ビタミンAに変換される物質を総称して「プロビタミンA」と呼んでいます。プロビタミンAは約50種類あることが知られており、特に効率よく変換されるのがβカロテンです。[※2]
βカロテンは、ビタミンAとしての効果のほか、活性酸素の発生を抑えたり除去したりする作用のある「抗酸化物質」として、動脈硬化予防や老化予防の効果が期待できると言われています。
期待される効果・作用
動脈硬化の予防
抗酸化物質であるカロテンを十分に摂取することは、体内の脂質が酸化する原因となる活性酸素の発生を抑えたり除去したりすることにつながります。そのため、酸化された脂質が血管内に蓄積し、血管が詰まったり血管の弾力性が失われたりする動脈硬化を予防する効果が期待できます。
免疫機能の維持
免疫機能を司る免疫細胞が、活性酸素の過剰発生により障害を受けた結果正常に働かなくなると、免疫力が低下したり過剰反応によるアレルギー症状の悪化を招いたりすることが考えられます。[※3][※4]
このことから、βカロテンの抗酸化作用により、ウイルスから体を守ったりアレルギー症状を緩和したりといった免疫機能を正常に保つ効果が期待できます。
老化の予防
活性酸素の過剰発生は細胞を傷害し老化につながります。そのため、活性酸素の発生を抑える抗酸化物質βカロテンは、老化の防止に役立つと言えるでしょう。
シワやたるみといった肌の老化の原因は、紫外線による活性酸素の過剰発生にもあることが知られています。βカロテンを摂取することで、肌の老化防止効果が期待できる可能性があります。
糖尿病の予防
血中のβカロテン濃度が高いほどインスリンに対する感受性が低下している方が少ないこと、また緑黄色野菜摂取量が多いことが報告されています。しかし、βカロテンに糖尿病を予防する可能性があるかどうかについては、更なる研究が必要であるとされています。[※5]
がんの予防
βカロテンをはじめとするカロテノイド類の持つ抗酸化作用により、発がんリスクを抑える作用があると考えられています。[※1]
皮膚や粘膜の健康維持
βカロテンはプロビタミンAとしての働きがあるため、体内でビタミンAに変換され、皮膚や粘膜の機能を正常に維持する役割を担っています。[※6]
視覚機能の維持
ビタミンAは、網膜細胞の保護作用や視細胞での光刺激反応に対関わる重要な物質。そのため、βカロテンにも目の機能を正常に保つ働きがあるされています。[※2]
こんな方におすすめ
βカロテンは体内でビタミンAに変換されるため、ビタミンAと同様の作用が期待できます。そのため、眼の健康に不安がある方などにはおすすめの成分であると言えるでしょう。
また、ビタミンA以外の機能として抗酸化作用があるため、動脈硬化の予防や肌の若々しさを保ちたい方など、老化予防の対策を取りたいという方は積極的に摂取すると良いでしょう。
摂取目安量・上限目安量
厚生労働省では、βカロテンの摂取目安量・上限量などは設けていません。[※2]
ビタミンA摂取量(レチノール相当量)については食事摂取基準が設けられており、摂取推奨量および目安量(1歳未満)・耐容上限量が設けられています。しかし、耐容上限量の算出にはプロビタミンAであるカロテノイドが含まれていません。これは、βカロテンの過剰摂取による障害などが知られていないためであるとされています。
食事摂取基準における成人1日当たりのビタミンAの摂取推奨量・耐用上限量は、レチノール活性当量(μgRAE)として、以下のように設定されています。 【推奨量】- 男性:800~900μgRAE
- 女性:650~700μgRAE (妊娠後期+80μgRAE、授乳中+450μgRAE)
- 男性:2,700μgRAE
- 女性:2,700μgRAE
ドイツ連邦リスク評価研究所では、βカロテンのサプリメントは科学的根拠が不十分であるとして、健康被害を招かないためにも利用については細心の注意を払い、サプリメントとして摂取する場合は2mg/日を超えないようにと勧告しています。[※7]
考えられるリスク・
副作用
βカロテンの過剰摂取による障害は、胎児奇形や骨折も含め知られていません。[※2]
βカロテンは、体内で必要な分のみビタミンAに変換されるため、健康障害を引き起こすリスクがなく、一般的には安全であると考えられています。βカロテンを摂り過ぎてしまうと皮膚が黄色くなることがありますが、これは健康上特に問題はありません。[※7]
βカロテンを含む食べ物
βカロテンは主に緑黄色野菜に多く含まれています。[※8]
βカロテンが豊富な緑黄色野菜とβカロテン当量(100g当たり)
- しそ (葉・生)……11,000μg
- モロヘイヤ(茎葉・生)……10,000μg
- にんじん(根・皮つき・生)……8,600μg
- とうがらし(果実・生)……7,700μg
- 春菊(葉・生)……4,500μg
- ほうれんそう(葉・生)……4,200μg
- 西洋かぼちゃ(果実・生)……4,000μg
- にら(葉・生)…………3,500μg
- こまつな(葉・生)……3,100μg
- チンゲンサイ(葉・生)……2,000μg
- サニーレタス(葉・生)……2,000μg
- 赤ピーマン(果実・生)……1,100μg
- ミニトマト(果実・生)……960μg
厚生労働省では緑黄色野菜を「原則として可食部100g当たりβ-カロテン当量が600μg以上のもの」としています。[※9]
しかし、βカロテン当量が基準に当てはまらないトマトやピーマン(青)も緑黄色野菜に分類されています。これは、食べる量や頻度の多さを考慮し、緑黄色野菜として扱うということになっているようです。
βカロテンは、加熱して摂取することで吸収率を高めることのできる成分です。野菜など植物には硬い細胞壁があるため、加熱により軟らかくすることで吸収が良くなります。また、脂溶性色素であるβカロテンは油と一緒に摂ることでも吸収を高めることができます。
発見・研究の歴史
19世紀末にニンジンからカロテンが、紅葉した葉からキサントフィルが発見されたことからカロテノイドの研究が始まり、20世紀初めには葉緑体からカロテン、キサントフィル、クロロフィルが分離されました。[※10]
1930年代にはスイスの化学者カラーらによってβカロテン、リコピンなどの構造やβカロテンがビタミンAの前駆物質であることが明らかにされました。この業績によりカラーらはノーベル化学賞を受賞しています。
日本では1957年に海綿からカロテノイドが発見されたのに続き、多くの水産動物のカロテノイドの構造が明らかにされました。その後、HPLCなどの分析機器の発達により多くのカロテノイドが発見されるなど、更なる研究が進められ、さまざまな機能性が見いだされています。
βカロテンに関する研究情報
【1】生にんじんよりも野菜・果実ミックスジュースを摂取した方が、β-カロテンを効率よく吸収できることを確認しました。
【2】油を含む食事とともに、茹でて搾ったにんじん飲料を飲用することで、効率的にβ-カロテンを吸収できることが期待されます。
【3】食事の総カロテノイドまたはβ-カロテン摂取量が多いと、股関節骨折のリスクが低い可能性があります
【4】血中のβカロテン濃度が高いほどインスリン抵抗性や感受性低下の方が少ないこと、また緑黄色野菜摂取量が多いことわかりました。
成分
10秒解説
βカロテンは緑黄色野菜に含まれる色素「カロテノイド」一種。体内ではビタミンAとして皮膚や粘膜の健康維持、視覚機能の向上などの働きを担っています。また、高い抗酸化作用を持ち、疾病予防の効果が期待できることが知られています。