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ビタミンK

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成分
10秒解説

ビタミンKは脂溶性ビタミンの一種です。血液凝固に関わるほか、骨の健康維持に役立っています。また、動脈の石灰化を防ぐ効果もあることから、動脈硬化の進展予防効果が期待されています。抗凝固薬のワルファリンカリウムと相互作用のある成分としても知られています。

こんなお悩み・健康効果に

  • 血液凝固作用
  • 骨の健康維持
  • 動脈の石灰化抑制

ビタミンKとは

血液凝固に関わったり、カルシウムとともに骨の健康を保ったりする脂溶性ビタミン

ビタミンA、D、E同様「脂溶性ビタミン」の一種であるビタミンK。ビタミンKは血液凝固に関する作用を持つ成分で、ビタミンKの「K」はドイツ語で血液凝固を意味する「Koagulation」から取ったものであるといわれています。人体に必要な栄養素であるほか、ビタミンK欠乏症の予防や治療などに用いられています。[※1]

他にも、ビタミンKには骨の健康維持に関わったり、動脈の石灰化を抑制したりする作用が期待されています。

自然界に存在するビタミンKには、緑葉野菜、海藻類などの植物性食品に含まれるビタミンK1(フィロキノン)と、腸内細菌によって合成されるビタミンK2(メナキノン)があります。ビタミンK1はフィロキノン1種類ですが、ビタミンK2にはいくつかの種類があり、納豆菌がつくり出す「メナキノン-7」もビタミンK2のひとつです。[※2]

また、ビタミンKは抗凝固薬「ワルファリンカリウム」と相互作用のある成分です。この薬剤を内服している方は、ビタミンKを多く含む食品の多量摂取を避ける必要があります。

期待される効果・作用

血液凝固作用

ビタミンKは、止血に必要な成分の生成に不可欠な成分です。

出血が起きると、まず血小板による一次止血が起こります。一次止血に続いて起こるのが、より強力な二次止血です。ビタミンKは、この二次止血の際に働く血液凝固因子「プロトロンビン」の生成に関与する酵素の補酵素として働きます。つまり、ビタミンKが不足するとプロトロンビンの量が不足し、止血に時間がかかってしまうのです。[※3]

ビタミンKはくすりとして、出血性疾患の予防や治療などに用いられています。

骨の健康維持

ビタミンKは、ビタミンD同様骨の健康を保つことに役立つビタミンです。

ビタミンDは、骨の形成に必要なミネラル「カルシウム」や「リン」の吸収を促進する作用があります。一方、ビタミンKは骨の形成を促すたんぱく質である「オステオカルシン」を活性化させ、カルシウムを骨に取り込む働きをします。[※4]このことから、ビタミンKは骨粗しょう症の治療薬としても使われているのです。

カルシウムやビタミンDが注目されがちですが、ビタミンKも骨にとって重要な成分であるといえるでしょう。

動脈の石灰化抑制

ビタミンKを十分摂取することで動脈硬化の予防効果が期待されることが、疫学調査や臨床研究などにおいて報告されています。

これは、ビタミンKが血管の石灰化抑制に働く「MGP(マトリックスGlaタンパク質)」を活性化させる作用を持つためです。[※4]

血管の石灰化、つまり動脈硬化は高血圧や糖尿病などにより血管内壁がダメージを受けたり、腎疾患によりリンやカルシウムのバランスが崩れやすくなったりすることで起こります。動脈硬化が進むと脳梗塞や心筋梗塞などを発症するおそれもあるため、ビタミンKはこのような疾患の予防にも役立つと考えられます。

こんな方におすすめ

骨の健康が気になる方、骨粗しょう症の予防をしたいという方にとって、ビタミンKは十分摂取しておきたい成分のひとつです。

また、高血圧や糖尿病などの生活習慣病予防を意識し、血管を健康に保ちたいという方、脳血管疾患や虚血性心疾患などのリスクを低減させたいという方にもおすすめの成分であるといえるでしょう。

厚生労働省による「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、ビタミンKの摂取目安量が設けられています。ビタミンKの摂取目安量は、成人男性・女性ともに1日あたり150μgです。[※4]

また、通常脂溶性ビタミンは体内に蓄積されやすく、大量に摂取すると健康被害を生じる可能性があるため「耐容上限量」が設けられています。しかし、ビタミンKは食品から摂取する分には大量に摂取しても毒性が認められないことなどから、耐容上限量は設けられていません。[※4]

厚生労働省「令和元年国民健康・栄養調査」の結果によると、すべての世代において食事摂取基準の目安量以上のビタミンKが摂取できているようです。[※5]そのため、必要以上にビタミンKの不足を心配する必要はないと考えられるでしょう。

考えられるリスク・
副作用

ビタミンKには耐容上限量が設けられていないこともあり、健康な方が摂取する分には副作用の心配はないでしょう。しかし、人によっては胃のむかつきや下痢を起こす可能性があるといわれています。

また、透析療法中の方や肝疾患がある方が、ビタミンKを過剰摂取すると症状を悪化させるおそれがあるため、注意が必要です。[※1]

医薬品との相互作用

ビタミンKは血液凝固作用のある成分です。そのため、抗凝固薬であるワルファリンカリウムと併用すると作用が拮抗し、薬剤の効果が弱まってしまいます。

また、ビタミンK1には血糖値を低下させる作用があるため、インスリン、グリメピリド、グリベンクラミド、ピオグリタゾン塩酸塩を用いて糖尿病の治療している方では、ビタミンKの摂取により血糖値が下がり過ぎてしまうおそれがあります。[※1]

サプリメントとの相互作用

老化予防などに役立つ成分「コエンザイムQ10」にも、ビタミンK同様血液凝固作用があります。そのため、併用摂取すると作用が増強されて血液が凝固しやすくなる可能性があります。

逆に、ビタミンKと800IU(約533mg)/日以上のビタミンEを併用すると、ビタミンKの血液凝固作用が弱まる可能性があります。[※1]

ビタミンKを含む食べ物

ビタミンKは緑黄色野菜や海藻類、大豆製品などに多く含まれています。[※6]

【主な食品100gあたりに含まれるビタミンK含有量】                       
食品名 状態など 含有量(μg)
カットわかめ 1,600
しそ・葉 690
モロヘイヤ 640
糸引き納豆 600
ひじき 580
焼きのり 390
ほうれん草 270
春菊 250
ブロッコリー 210
小松菜 210

文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」をもとに作成

なお、カルシウムやビタミンDを多く含む食品と一緒に摂取することで、骨の健康維持に役立つと考えられます。

発見・研究の歴史

ビタミンKは、1929年にコレステロール代謝の研究を行っていたH.Damによって発見されました。実験のため、脂質を除去した飼料で飼育していたニワトリが出血しやすくなったことで、除去していた脂質の中に血液凝固に関わるビタミンがあると考えたことから、ビタミンKを名付けたといわれています。

さらに1939年には形態の異なる二つのビタミンKが単離されたことから、ビタミンK1とビタミンK2とされました。[※7]

その後研究が進められ、血液凝固のほか、骨形成など人体にとって重要な働きを担う成分であることが明らかにされています。

ビタミンKに関する研究情報

【1】低用量のビタミンK2サプリメント(MK-7)の摂取により、ビタミンKの状態が大幅に改善され、腰椎と大腿骨頸部でのBMCとBMDの加齢に伴う低下が減少しましたが、股関節全体では減少しませんでした。また、骨の強さも影響を受けたほか、椎骨の中央部位の下部胸椎領域の椎骨の高さの損失を大幅に減少させました。このことにより、 MK-7サプリメントは閉経後の女性が骨量減少を防ぐのに役立つ可能性があります。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23525894/

【2】食事で摂取可能な量のビタミンKを36カ月間補給することにより、高齢男性におけるインスリン抵抗性の進行を抑制できる可能性があります
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18697901/

【3】ビタミン K の消化管での吸収はコレステロールを輸送するタンパク質として知られる NPC1L1 が主に担っていることが明らかになりました。そのため、脂質異常症治療薬として使用されている NPC1L1阻害剤はビタミン Kの吸収不全を引き起こし、ほぼ全ての患者で抗血液凝固薬の作用を増強することが分かりました。
https://www.h.u-tokyo.ac.jp/press/__icsFiles/afieldfile/2019/07/03/release_20150219.pdf

参照・引用サイトおよび文献

※1 ビタミンK|健康食品・サプリ[成分]のすべて(第6判) ナチュラルメディシン・データベース

※2 ビタミンK2とは |日本ナットウキナーゼ協会
(URL:http://j-nattokinase.org/nattokinase/k2.html

※3 ビタミンKの働きと1日の摂取量 | 公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット
(URL:https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/vitamin-k.html

※4 【PDF】日本人の食事摂取基準(2020年版) | 厚生労働省
(URL:https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586561.pdf

※5 【PDF】令和元年 国民健康・栄養調査|厚生労働省
(URL:https://www.mhlw.go.jp/content/000711006.pdf

※6 日本食品標準成分表2020年版(八訂)|文部科学省
(URL:https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_01110.html

※7 (2011年6月発行)脂溶性ビタミン(2)|財団法人食品分析開発センター SUNATEC
(URL:http://www.mac.or.jp/mail/110601/03.shtml

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