ビタミンP

こんなお悩み・健康効果に
- 毛細血管の強化
- 血流の改善
- 免疫力の向上
- 血圧上昇抑制効果
- 抗アレルギー・抗炎症作用
- 血中性脂肪値・体脂肪率低下作用
- 抗酸化作用
- 肌のくすみ・肌質改善効果
- 骨代謝改善作用
ビタミンPとは
ヘスペリジン、ルチン、ケルセチンなどの総称であるビタミンPは、抗酸化作用など多くの機能性を持つポリフェノールの一種です。ポリフェノールの中のフラボノイドに分類され、ヘスペリジンはみかんなどの柑橘類、ルチンはそば、ケルセチンは赤ワインや玉ねぎなどに含まれています。
ビタミンPが「ビタミン様物質」と呼ばれている理由としては、ビタミンの定義に当てはまらず、摂取が不足した場合にも欠乏症が現れるかどうかについては定かではないためであるとされています。
ビタミンPには、主に抗酸化作用や血流改善、血管を健康に保つ作用などがあると言われています。
さらに、抗酸化ビタミンであるビタミンCの働きをサポートしてくれる役割も持つビタミンP。ビタミンCはストレスなどから生じる活性酸素の働きを抑えたり除去したりする作用がありますが、ビタミンPにはビタミンCの消耗を抑制する作用があることが分かっています。
しかし、ビタミンPに分類される物質であるヘスペリジン、ルチン、ケルセチンは水に溶けにくいという性質があり、体内への吸収率が低いことが難点であるとされてきました。そこで開発されたのが水溶性を高めるために構造変化させた物質です。
ヘスペリジン、ルチン、ケルセチンをそれぞれ構造へ変化させたものが、以下のような物質です。
- ヘスペリジン 糖転移ヘスペリジン[※1]、メチルヘスペリジン[※2]
- ルチン αGルチン[※3]、Eルチン[※4] (酵素処理ルチン)
- ケルセチン ケルセチン配糖体[※5]
期待される効果・作用
毛細血管の強化
ビタミンPには、毛細血管を強くする効果があります。
ビタミンCとともに毛細血管のメンテナンスに関わっており、風邪などの細菌が体内に侵入するのを防ぐ役割も担っていると言われています。
このことから、毛細血管の強化は免疫力を高めることにもつながると言えるでしょう。[※6]
血流の改善
ヘスペリジンをはじめとするビタミンPには、血流の循環を改善させる効果があります。
女性に多い「冷え性」は、末梢の血流循環が滞ることで起こりますが、ビタミンPの摂取により末梢の血行不良が改善されることが分かっています。[※7]
血圧上昇抑制効果
動物実験において、糖転移ヘスペリジンの摂取により血圧の有意な低下が確認されています。
これは血管内膜・中膜の肥厚が抑制され、血管の弾力性が増したことによる効果であると考えられています。[※7]
抗アレルギー・抗炎症作用
ヒスタミンの働きを抑えアレルギー反応を抑制する作用が報告されているのが、ケルセチンやヘスペリジンです。
この作用は、花粉症などの症状改善への効果も期待されているほか、関節リウマチの炎症抑制作用なども報告されています。[※7][※8]
中性脂肪値・体脂肪率低下作用
中性脂肪値高値を示すグループに対して糖転移ヘスペリジンを投与する試験において、中性脂肪の上昇抑制に効果を示すことが報告されています。[※7]
また、ルチンやケルセチンは体脂肪率の低下が報告されており、特定保健用食品(トクホ)や機能性表示食品の成分としても知られています。
抗酸化作用
ビタミンPはポリフェノールの一種であるため、体内で過剰に発生した活性酸素の働きを抑えたり、除去したりする抗酸化作用があります。
さらに、LDLコレステロールの酸化防止作用により、動脈硬化や糖尿病、高血圧などの疾患予防への効果も期待できるでしょう。
肌のくすみ・肌質改善効果
ビタミンPは、ビタミンCとの相乗効果や抗酸化作用により、肌のくすみ改善などにの効果をもたらします。
また、コラーゲン飲料と糖転移ヘスペリジンとの併用により、肌の水分量や弾力が上昇したとの報告があります。[※9]
骨代謝改善作用
ヘスペリジンやケルセチンを摂取することにより、骨量の減少が抑制されたとの報告があることから、ビタミンPには骨粗鬆症予防への効果が期待できると言えるでしょう。[※7][※10]
こんな方におすすめ
ビタミンPは、以下のようなことが気になっている方におすすめです。
- 血管の健康を保ち免疫力をアップさせたい方
- 血流を改善させたい方
- アレルギー症状を緩和させたい方
- メタボリックシンドロームや生活習慣病対策を始めたい方
- 肌のくすみやハリが気になる方
- 骨粗鬆症が心配な方
摂取目安量・上限目安量
「ビタミン」という名がついているものの、ビタミンではないのがビタミンP。そのため摂取目安量や上限摂取量などは定められていませんが、ビタミンPの一つであるルチンは1日30mgが必要量であるとされているようです。[※11]
考えられるリスク・
副作用
通常の食品から適切に摂取する分にはおそらく安全であるとされていますが、妊娠中や授乳中、小児では十分に信頼できるデータがないというのが現状のようです。
サプリメントや健康食品などからの摂取においては、過剰摂取とならないように1日の摂取目安量を守って摂取するようにしましょう。
ビタミンPを含む食べ物
ビタミンPを多く含む食品は、果物や野菜、穀物などです。 まずへスペリジンは温州みかんやオレンジ、ゆずやすだち、シークヮーサーなどといった柑橘系の皮やじょうのう(袋)、白いすじなどに多く含まれています。さらに、完熟した果実よりも熟す前の青い果実に、より多く含まれているという特徴があります。
玉ねぎの皮の黄色色素として知られているケルセチンも、ビタミンPの一種。ビタミンPがフラボノイドの一種であることからも分かるように、玉ねぎの白い部分(可食部)よりも外皮により多くのケルセチンが含まれているため、玉ねぎの皮で作られたお茶なども販売されています。
他にもケルセチンはりんご、緑茶などに豊富に含まれています。
ルチンは柑橘系の果物に加え、イチジクやトマト、アスパラガス、そばなどに多く含まれています。1食分のそばを食べることで30mgほどのルチンが摂取できるとされているほか、そばをゆでた「そば湯」には打ち粉として使用したそば粉が含まれているため、さらに多くのルチンが摂取できるでしょう。
また「韃靼そば」という種類のそばは、極めて多量のルチンを含有しており、その量は普通のそばの約120倍であると言われています。[※11][※12]
発見・研究の歴史
1936年にレモンの果実中から発見されたと言われているビタミンP。ビタミンPは毛細血管の過度な浸透性を予防する作用を持つことから、Permeability(透過性)の頭文字を取ってビタミンPと名付けられました。[※1]
その中の一つである柑橘類に多く含まれるヘスペリジンは、果肉よりも皮などに多く含まれており、漢方でもみかんの皮を乾燥させた「陳皮」として古くから利用されています。
漢方での「陳皮」の効果としては、風邪によるのどの痛みやせき、冷え性、腰痛、肩こりなどの改善に効果をもたらすとされています。
日本でもなじみのある果物のみかんですが、産地ではみかんの皮をお風呂に入れたり風邪予防に活用したりと古くからヘスペリジンの薬効を健康のために役立ててきました。
ヘスペリジンに限らず、ルチンやケルセチンなどは水に溶けにくく体内に吸収されにくいことが難点でしたが、最近では構造を変化させた物質が開発され、吸収されやすい形での機能性の研究が幅広く行なわれています。
ビタミンPに関する研究情報
【1】糖転移ヘスペリジンの摂取により手足の冷えが抑制されることが明らかとなりました
https://jp.glico.com/laboratory/hesperidin/02.html
【2】糖転移ヘスペリジンをの摂取により血清中性脂肪値が高めの方の中性脂肪値を低下させました
https://www.hayashibara.co.jp/data/67/rd_tp_four/
【3】「糖転移ヘスペリジン」による血流改善効果は、副交感神経の働きを活発にする作用によりリラックス効果や更年期障害の軽減などさらなる効果も期待できると考えられます
https://jp.glico.com/laboratory/hesperidin/02.html
【4】タマネギに含まれる「ケルセチン」が、加齢に伴い低下する認知機能の維持に役立つことを、ヒト介入試験により確認しました
https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/nfri/141222.html
【5】ルチンを多く含むダッタンソバ「満天きらり」加工品の摂取により体脂肪率の上昇抑制効果が認められました
https://www.naro.go.jp/project/results/4th_laboratory/harc/2016/16_039.html
参照・引用サイトおよび文献
※1 糖転移ヘスペリジンの研究|株式会社 林原
(URL:https://www.hayashibara.co.jp/data/67/rd_tp_four/)
※2 メチルヘスペリジン | 製品情報 | 昭和電工株式会社
(URL:https://www.sdk.co.jp/products/43/58/13588.html)
※3 αGルチン|みつ花印の東洋精糖株式会社-Toyo Suger-
(URL:http://www.toyosugar.co.jp/item/agrutin.html)
※4 ケルセチン配糖体で健康の維持・増進に寄与する|私たちの研究・技術|サントリーグローバルイノベーションセンター
(URL:https://www.suntory.co.jp/sic/research/h_quercetin/)
※5 血管を健康に保とう | オムロン ヘルスケア
(URL: https://www.healthcare.omron.co.jp/resource/column/life/170.html)
※6 同時摂取でプロテインの働きを高める注目素材Eルチン|森永製菓
(URL:https://www.morinaga.co.jp/company/healthcare/erutin.html)
※7 ヘスペリジン研究会
(URL:http://www.ghes.jp/)
※8 ケルセチン含有食品の摂取がアレルゲンによる鼻目のアレルギー反応に及ぼす影響―プラセボ対照ランダム化二重盲検並行群間比較試験―|薬理と治療 Volume 48 , Issue 11 , 1945 – 1959 (2020)
(URL:http://www.pieronline.jp/content/article/0386-3603/48110/1945)
※9 血管の健康を保つ ヘスペリジン | グリコ 健康科学研究所
(URL:https://jp.glico.com/laboratory/hesperidin/02.html)
※10 【PDF】タマネギ成分ケルセチンの骨形成促進作用に関する研究|昭和女子大学
(URL:https://core.ac.uk/reader/268265194)
※11 ルチン | 成分情報 | わかさの秘密|株式会社わかさ生活
(URL:https://himitsu.wakasa.jp/contents/rutin/)
※12 韃靼そばうんちく話 – 知る・学ぶ・楽しむ | 日穀製粉株式会社
(URL:https://www.nikkoku.co.jp/entertainment/dattansoba//)
成分
10秒解説
ビタミンPはポリフェノールのルチンやケルセチン、ヘスペリジンなどの総称。柑橘類や野菜などに多く含まれる「ビタミン様物質」で、ビタミンCの働きを助ける成分です。毛細血管の強化や血流の改善などに効果があるとされています。