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ビタミンD

成分
10秒解説

ビタミンDは脂溶性ビタミンの一種です。 主な生理作用には、骨と歯の正常な発育促進、血中カルシウム濃度の調整、神経伝達や筋収縮の正常維持が挙げられます。 脂溶性であるため、過剰摂取は体内に蓄積しやすく、高カルシウム血症を引き起こすおそれがあるので、注意が必要です。[※1]

こんなお悩み・健康効果に

  • アレルギー症状緩和
  • 子どものアトピー性皮膚炎を予防
  • 感染症(インフルエンザ、風邪等)予防
  • うつ症状の緩和
  • 免疫力向上
  • 花粉症対策
  • がん予防
  • 骨粗しょう症予防
  • 健康な骨の形成・骨の強化

ビタミンDとは

ビタミンDは脂溶性ビタミンの一種で、
健康で強い骨や歯をつくる効果が期待できます。

ビタミンDは脂溶性ビタミンの一種です。D2からD7がありますが、一般的には生理活性の高いD2およびD3に大別されています。食物から摂取するほか、日光(紫外線)を浴びることでも生成されるのが特徴です。

主なはたらきとして、骨や歯の正常な発育成長の促進(骨粗しょう症の予防、くる病および骨軟化症の予防)血中カルシウム濃度の調整、カルシウムとリンの吸収促進、神経伝達や筋収縮の正常維持、免疫力の向上などが挙げられます。
ビタミンDは、さんまやアジなどの青背魚をはじめ、卵黄、乳製品、キノコ類に多く含まれていますが、脂溶性であることから、動物性食品のほうが高い吸収率です。植物性食品については、油を使った調理法をすることで吸収率を高めることができます。またキノコ類は天日乾燥させることでビタミンDを増やすことも可能です。
カルシウムの吸収を促進するため、カルシウム含有量の多い乳製品と合わせて摂取すると、より効果が期待できます。 ビタミンDは近年の研究によって、うつ症状の緩和やがん対策、副甲状腺機能低下症の治療に対する効果も明らかになりつつあり、今後の研究結果に期待が寄せられている成分です。[※1][※2][※3][※4]

期待される効果・作用

骨粗しょう症対策

骨粗しょう症は、加齢に伴う骨量の減少によって骨に鬆(す)が入った状態になり、少しの衝撃で骨折しやすくなる疾患です。原因として挙げられるのは、骨形成と骨破壊バランスの崩れで、圧倒的に閉経後の女性に多く見られます。カルシウム吸収を助けていた女性ホルモンが閉経によって分泌低下することによって、骨量減少を引き起こしやすいのです。
骨粗しょう症の予防には、十分量のカルシウム摂取が有効ですが、カルシウム単体では吸収率が低いため、吸収を助けるビタミンDを合わせて摂取することで効率的なカルシウム摂取が可能となります。 また、適度な運動もカルシウムを骨に定着させるために必要です。10~20分程度日光を浴びながら体を動かすことで、ビタミンDの合成が促されるため、骨粗しょう症予防につながります。[※2]

くる病および骨軟化症対策

くる病および骨軟化症とは、骨や軟骨の石灰化が障害されることによる骨強度低下をきたす代謝性骨疾患です。成人に発症するものを骨軟化症、小児に発症するものをくる病といいます。
くる病および骨軟化症の原因はいくつかありますが、血中のカルシウムやリンが慢性的に不足することによって発症する場合もあります。カルシウム不足が続くと、それを補うために副甲状腺ホルモン(PTH)が分泌されますが、PTHには骨を溶かす作用があるため、骨がもろくなってしまうのです。同時に、リン不足によってハイドロキシアパタイトが作られなくなっていると、強い骨を形成できず、くる病および骨軟化症を引き起こします。 くる病および骨軟化症は、ビタミンDの摂取によって予防できる疾患です。ビタミンDを多く含む食べ物の摂取や適度な日光浴などによる予防効果が期待できるとされています。[※5]

免疫力の向上およびアレルギー症状の緩和

近年の研究により、ビタミンDにはカテリジンとβ-ディフェンシンという抗菌ペプチドを作り出す力があることが明らかになっています。カテリジンには、細菌やウイルスを殺すはたらきがあり、β-ディフェンシンには皮膚のバリア機能を高めるはたらきが確認されたようです。このはたらきによって免疫力が向上し、風邪やインフルエンザ、アトピー性皮膚炎などの予防や緩和につながります。
またビタミンDは、免疫系の中心組織である腸粘膜の結合組織のコンディションを整える作用もあり、免疫細胞を活性化させることで、花粉症などのアレルギー症状を緩和が期待できるようです。[※3]

うつ症状の緩和

ビタミンDは、精神や神経のバランスを整えるセロトニンの調節に関わっていることが最近の研究で明らかになりました。ビタミンDは日光(紫外線)を浴びることで体内合成される性質をもっています。そのため、適度な日光浴をすることは心身の直接的なリフレッシュができるだけでなく、ビタミンD代謝の観点からみても、うつ症状の予防や緩和に効果が期待できるようです。[※3]

副甲状腺機能低下症の治療

副甲状腺機能低下症は、副甲状腺ホルモン(PTH)の分泌低下による低カルシウム血症を引き起こす疾患で、指定難病とされています。原因は、遺伝子異常・頸部手術・免疫異常など様々です。治療にあたっては、血中カルシウム濃度を上昇させるためにビタミンD3製剤が用いられています。病状によってはカルシウム製剤と併用する場合もあるようです。[※6]

がんリスク軽減効果の期待

PubMedによると、近年ではがんとビタミンDに関する論文が毎年500本以上寄せられています。その論文の傾向をみると、ビタミンD欠乏または不十分な状態にあるがん患者が多いことが示唆されています。しかしビタミンD不足ががんのリスクを高めるのか、またはビタミンDを多く摂取することががん予防となるのかは明確にされておらず、さらなる研究が続けられています。

こんな方におすすめ

ビタミンDは、カルシウムやリンの吸収を促し、健康な骨の形成に欠かせない成分です。骨の成長真っただ中の小児から、骨粗しょう症の予防を心がけたい高齢者まで、生涯丈夫な骨を維持するためには、性別年代を問わず、意識して摂取するのがおすすめです。

強い骨を形成するためには、ビタミンDと併せてカルシウムを摂取すると、より効果が期待できます。

近年の研究によって、免疫力の向上にも役立つことがわかってきたため、体調管理をしっかりしたい方やアレルギー症状をコントロールしたい方にも適した成分です。

精神や神経のバランスに関わるセロトニンの調節にも関与しているビタミンDは、日光(紫外線)を浴びることで体内合成されます。頭と心を落ち着かせたい方は、10~20分程度の日光浴が効果的と考えられます。[※3]

厚生労働省から発表されている「日本人の食事摂取基準2020年版」によると、成人男女のビタミンD摂取量は以下のように定められています。

■目安量…8.5μg
■耐容上限量…100μg

目安量は「一定の栄養状態を維持するのに十分な量であり、目安量以上を摂取している場合は、不足リスクはほとんどない」とされる量です。また耐容上限量は、「過剰摂取による健康障害からの回避を目的として設定する」とされる量となっています。
ビタミンDは不足すると骨の形成に影響したり、骨折のリスクが高まったりしますが、脂溶性ビタミンであるため、過剰な摂取も健康障害を招きます。高カルシウム血症や腎機能障害を引き起こしやすくなるので、サプリメント利用の際には十分な注意が必要です。[※7]

考えられるリスク・
副作用

摂取不足のリスク・副作用

ビタミンDが不足すると、カルシウムの吸収低下をはじめとした骨代謝の異常が生じます。その結果、くる病、骨軟化症、骨粗しょう症などを招くおそれがあるため、注意が必要です。
ビタミンDは食べ物からの摂取のほか、日光を浴びることで体内合成される成分であるため、日光にあたる機会が少ないこともビタミンD不足の要因となります。

過剰摂取のリスク・副作用

ビタミンDは脂溶性ビタミンであるため、過剰摂取すると体内に蓄積し、高カルシウム血症、腎機能障害、軟組織の石灰化を招くおそれがあります。そのほか、嘔吐、食欲不振、体重減少などがみられる場合もあります。[※8]

ビタミンDを含む
食べ物

ビタミンDは、魚、卵黄、乳製品、キノコ類に多く含まれています。動物性食品に含まれるもののほうが、吸収率が高いため、効率よくビタミンD摂取が可能です。キノコ類に含まれるビタミンDは、天日干しすることによる含有量増加が確認されています。[※9]

ビタミンDを含む主な食べ物(100gあたり)

・かつお(塩辛)…120.0μg
・あんこう(きも・生)…110.0μg
・にしん(身欠きにしん)…50.0μg
・べにざけ(生)…33.0μg
・鶏卵(卵黄・生)…16.8μg
・きくらげ(乾)…85.4μg
・しろきくらげ(乾)…15.1μg
・しいたけ(乾しいたけ・乾)…12.7μg
・まいたけ(生)…4.9μg
・普通牛乳…0.3μg
・カマンベールチーズ…0.2μg[※10]

発見・研究の歴史

19世紀、イギリスの産業革命によって空気の悪い工業都市で働く人々が増加。その人々を中心に、骨の変形や成長障害が起こる「くる病」が多発したことをきっかけに、治療法の研究が始まりました。その研究の中で、くる病を予防する成分として発見されたのがビタミンDです。

1892年に、イギリスの研究者パームがくる病と日照量の関係を明らかにしました。1918年になると、イギリスのメランビー医師がオートミールのみの食餌で室内飼育したイヌがくる病を発症し、タラ肝油を与えると病状が改善することを発見したのです。

その後さらなる研究が進んだ1922年、アメリカの研究者マッカラムによって、くる病を予防するこの物質はビタミンD名付けられました。

ビタミンDに関する研究情報

【1】ビタミンD摂取量と骨折リスクおよび骨密度の関連性について、52,625名を対象に調査した結果によると、50歳以上の女性において、ビタミンDとカルシウムを併せて摂取することで、骨折リスクの軽減および骨密度の上昇に役立つことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17720017/

【2】血中ビタミンD濃度と呼吸器感染症リスクの関連性を調査した結果によると、血中ビタミンD濃度が低い人は呼吸器疾患の発症率が高いこと、体を鍛えている人ほど血中ビタミンD濃度が高いこと、喫煙者で血中ビタミンD濃度が低いことが明らかになり、ビタミンD濃度が生活習慣や免疫との関係があることが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17823437/

【3】高齢女性120名を対象とし、カルシウム1200㎎+ビタミンD1000IU/日の摂取を5年間続けた結果、加齢による骨量減少、アルカリホスファターゼの増加、尿中PDP/Cr値の増加が抑制され、骨粗しょう症の予防にビタミンDが役立つことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18089701/

【4】甲状腺摘出手術患者706名を対象とし、カルシウムとビタミンDの摂取を行った結果、甲状腺摘出の影響によって引き起こされる低カルシウム血症リスクの軽減がみられました。この結果よりカルシウムとビタミンDの摂取は、甲状腺摘出後の低カルシウム血症予防効果が期待できることが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20804871/

【5】Ⅱ型糖尿病患者92名を対象に、ビタミンD2000IU+炭酸カルシウム800㎎/日の投与を16週間継続した結果、膵β細胞からのインスリン分泌が促進されました。この結果から、ビタミンDはインスリン分泌を促し、糖尿病のコントロールに役立つ可能性が示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21715514/

参照・引用サイトおよび文献

※1「ビタミンDの働きと1日の摂取量|健康長寿ネット」
(URL:https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/vitamin-d.html

※2「栄養の基本がわかる図解辞典(中村丁次 監修)|成美堂出版」

※3「ビタミンDの効用(ドクターコラム)|新百合ヶ丘総合病院」(URL:http://www.shinyuri-hospital.com/column/column_201902.html

※4「ビタミンDの基礎知識(がんとの関連)|東京慈恵医科大学付属柏病院」(URL:http://www.jikei.ac.jp/hospital/kashiwa/sinryo/40_02w7.html

※5「ビタミンD欠乏性くる病・骨軟化症とはどんな病気?|メディカルノート」(URL:https://medicalnote.jp/contents/180329-002-WC

※6「甲状腺機能低下症(指定難病235)|難病情報センター」(URL:https://www.nanbyou.or.jp/entry/4427

※7【PDF】「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会報告書|厚生労働省」(URL:https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586561.pdf

※8「健康食品の安全性・有効性情報|国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所」(URL:https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail221.html

※9【PDF】「紫外線照射による各種キノコ中のビタミンD2含量に関する研究|日本家政学会誌Vol41,No5,401~406,1990」
(URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jhej1987/41/5/41_5_401/_pdf/-char/ja

※10 「日本食品成分表2020 七訂|医歯薬出版」

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