カリウム

こんなお悩み・健康効果に
- 高血圧の改善
- むくみの解消
- 筋肉の働きを正常に保つ
- だるさや倦怠感の予防
- 脳卒中の予防
カリウムとは
カリウムは、人体に欠かせない栄養素であることが確定している「必須ミネラル」の一つ。ドイツ語で「植物の灰」を意味する言葉が由来となっており、英語では「ポタシウム」という名称が使われています。[※1]
ミネラルは体内で合成できないため、食べ物などから摂取する必要があり、バランスよく摂取することが重要です。また、不足した場合には欠乏症やさまざまな不調を来し、過剰摂取した場合には中毒などを引き起こすこともあります。
体内には多くのカリウムが含まれていますが、主に細胞内に存在し、細胞外に多いナトリウムとともに浸透圧を調整する働きを担っています。また、神経伝達や筋肉の収縮、pHバランスの維持など多くの生理作用を持つため、不足すると食欲不振や脱力感などの症状を引き起こすおそれがあります。なお、大量摂取した場合でも腎機能に異常がなければ、体内のカリウムが過剰になることはまれです。
最近の疫学調査などにより、適量のカリウムを摂取することで血圧の低下や脳卒中の予防につながる可能性が期待されています。[※2]
期待される効果・作用
高血圧の改善
カリウムを十分に摂取することで、血圧を低下させる効果が期待できます。
血圧上昇の原因の一つが「塩分の過剰摂取」です。カリウムには塩分に含まれるナトリウムの再吸収を抑制し尿への排泄を促す作用があることから、血圧を低下させる作用があるといわれています。
ただし、ナトリウム/カリウムの摂取比率を下げることで降圧効果があることが報告されていることから、カリウムを摂取するだけではなく、ナトリウム摂取量を減らすことも重要であるといえるでしょう。
むくみの解消
ナトリウムの過剰摂取に伴い、血液中の水分が多くなり過ぎてしまうと「むくみ」が生じます。カリウムにはナトリウムの排泄を促進する作用があるため、血圧低下と同様のメカニズムにより、むくみを解消する可能性が期待できます。
筋肉の働きを正常に保つ
骨格筋や心筋など、全身の筋肉の収縮にも関わっているのがカリウムです。そのため、血液中のカリウム値が異常を示してしまうと脱力感や不整脈などにつながる可能性があります。
だるさや倦怠感の予防
カリウムが不足すると、だるさや倦怠感などの症状が起こることがあります。そのため、カリウムを十分に摂取することでこれらの症状を予防・改善することにつながります。
脳卒中の予防
高血圧は脳卒中をはじめとする脳血管疾患の最大の危険因子として知られています[※3]。そのため、高血圧を改善することは、脳血管疾患のリスクを低下させるといえるでしょう。このことから、カリウムを摂取することは脳卒中の予防につながると考えられます。
こんな方におすすめ
カリウムにはナトリウムを体外へ排出するはたらきがあります。そのため、高血圧を改善したい方、むくみを解消したい方などには減塩とともにカリウムを十分に摂ることを意識することが重要であるといえるでしょう。さらに、高血圧の改善により脳血管疾患や動脈硬化の予防にもつながるため、生活習慣病対策をしたいという方にもしっかり摂っていただきたい成分です。
また、夏バテしやすい体質の方は、夏場にしっかりとカリウムを摂取することで、だるさや倦怠感など夏バテの症状軽減につながる可能性があります。
摂取目安量・上限目安量
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、一般的な成人1日当たりのカリウムの摂取目安量・目標量を以下のように定めています。[※2]
- 男性 : (目安量)2,500mg(目標量)3,000mg以上
- 女性 : (目安量)2,000mg(目標量)2,600mg以上
2012年に発表された、いわゆる生活習慣病に対するWHOのガイドラインでは、1日当たり3,510mg以上の摂取が推奨されていることから、高血圧発症予防や重症化予防のためにはより多くのカリウムを摂取することが望ましいとされています。[※2]
なお、厚生労働省「令和元年度国民健康・栄養調査」によると、成人1日当たりのカリウム平均摂取量は男性2,439mg、女性2,273mgとなっています。[※4]
考えられるリスク・
副作用
カリウムが不足すると脱力感や食欲不振、不整脈、筋無力症、精神障害などの症状が生じることがありますが、健康な方がカリウムをたくさん摂ってしまっても過剰になることはまずありません。[※5]
しかし腎機能障害や糖尿病のある方は、カリウムの豊富な食事により高カリウム血症を引き起こしてしまう可能性があります。
このような疾患のある方については、病状に応じて1日当たりのカリウム摂取量を抑えるなどの配慮が必要となります。
カリウムを含む食べ物
カリウムは野菜類、果実類、海藻類、いも類、豆類、肉類、魚介類などに多く含まれています。[※6]
野菜類・果実類に含まれるカリウム含有量(可食部100g当たり)
- 干しぶどう 740mg
- アボカド(生) 720mg
- ほうれんそう(生) 690mg
- 干し柿 670mg
- 枝豆(冷凍) 650mg
- にんじん(生) 630mg
- にら(生) 510mg
- リーフレタス(生) 490mg
- ブロッコリー(生) 460mg
- バナナ(生) 360mg
- メロン(露地メロン・赤肉種) 350mg
海藻類・芋類・豆類に含まれるカリウム含有量(可食部100g当たり)
- 焼きのり 2400mg
- ひきわり納豆 700mg
- 納豆 660mg
- 里芋(生) 640mg
- 大豆(ゆで) 530mg
- じゃが芋(皮つき・生) 460mg
- 長芋(生) 430mg
- カットわかめ(乾) 430mg
- さつま芋(皮つき・生) 380mg
肉類・魚類に含まれるカリウム含有量(可食部100g当たり)
- かんぱち(三枚おろし・生) 490mg
- さわら(生) 490mg
- 生ハム(促成) 470mg
- まぐろ(きはだ・生) 450mg
- 豚ヒレ(赤肉・生) 430mg
- かつお(春獲り・生) 430mg
- 若鶏ささみ(生) 410mg
- 若鶏むね肉(皮つき・生) 340mg
- 牛肩肉(赤肉・生) 340mg
また牛乳・ヨーグルトなどの乳製品やインスタントコーヒー・玉露茶・青汁などの飲料にも比較的多く含まれています。
カリウムは水に溶けやすい性質があるため、生野菜や生果物で効率よく摂取できます。また、火を通す調理方法でもみそ汁やスープ、シチューやカレーなどのように煮汁も一緒に摂取できる料理であれば、カリウムを逃すことなく摂取できるでしょう
発見・研究の歴史
カリウムは1807年にイギリスの化学者ハンフリー・デイビーが植物の灰を電気分解することによって発見しました。デイビーはカリウムをはじめ、ナトリウムなどのアルカリ金属やカルシウム・マグネシウム・バリウムといったアルカリ土類金属の分離に成功するなど、多くの元素を発見したといわれています。現在、カリウムは植物の肥料や食品、工業、反応試薬、化学分析などさまざまな用途で利用されています。
栄養素としてのカリウムは、必須ミネラルであることからも分かるように人体にとって欠かせない成分の一つ。カリウムのさまざまな生理作用が明らかにされていくなかで、厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2005年版)」では、健康のために摂取すべきカリウムの「目標量」が新たに設定されるようになりました。これは、ナトリウム摂取量の多い日本人の食生活において、高血圧などの生活習慣病や脳卒中などの脳血管疾患を予防するため、カリウム/ナトリウムの比率を低下させることが目的であったと考えられます。
カリウムに関する研究情報
【1】ナトリウム摂取量が多い人では,カリウム摂取による血圧への影響が小さいことが分かりました
http://www.epi-c.jp/entry/e113_0_0055.html
【2】カリウム摂取量の増加は、成人高血圧患者の血圧を低下させ、血中脂質、カテコールアミン、腎機能に対する有害な影響なく脳卒中リスクの低下と関連していることが分かりました
https://www.ebm-library.jp/circ/metaanalysis/10-61.html
【3】カリウムは、重要な副作用もなく安全であり中程度ではあるが血圧に有意な影響を与えるため、本態性高血圧症の補助的な降圧薬として推奨される可能性があることが分かりました
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28419159/
【4】カリウムの補給は、降圧薬を服用していない高血圧患者の血圧を有意に低下させました。血圧の低下は1日の尿中ナトリウム/カリウム比の低下および尿中カリウムの増加と有意に相関していたことから、血圧の高い患者は、ナトリウムの摂取量を抑制または減少させるとともに、カリウムの摂取量を増加させると効果的であることが分かりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26039623/
参照・引用サイトおよび文献
※1 カリウム Potassium 細胞内に多量に含まれる元素 | Chem-Station
(URL:https://www.chem-station.com/elements/elements-all/2016/10/potassium.html)
※2 【PDF】日本人の食事摂取基準(2020年版)|厚生労働省
(URL:https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586565.pdf)
※3 脳血管障害・脳卒中 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
(URL:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/m-05-006.html)
※4 【PDF】令和元年国民健康・栄養調査|厚生労働省
(URL:https://www.mhlw.go.jp/content/000711006.pdf)
※5 カリウム | e-ヘルスネット(厚生労働省)
(URL:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-005.html)
※6 文部科学省 日本食品標準成分表2020年版(八訂)
(URL: https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_01110.html)
成分
10秒解説
カリウムは人体に必要不可欠なミネラルの一つで、浸透圧の調整や神経伝達に関わる栄養素です。なかでもナトリウムを体外に排出する働きを持つことから、塩分の取り過ぎを調整してくれる成分として知られています。