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ナイアシン

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成分
10秒解説

水溶性ビタミンの一種であるナイアシン。ナイアシンは、体内でエネルギー産生や栄養素の代謝などに関与しているため、不足するとさまざまな不調を引き起こす可能性があります。また、皮膚や粘膜の健康維持に役立つ成分として知られているほか、血流促進効果などが期待されている成分です。

こんなお悩み・健康効果に

  • 血流促進
  • 皮膚や粘膜の健康維持
  • 脂質異常症の改善
  •   
  • 二日酔いの予防
  • うつ症状の軽減

ナイアシンとは

栄養素の代謝や血流促進に関わる水溶性ビタミン

ナイアシンは、ビタミンB3とも呼ばれる水溶性ビタミンでの一種で、ニコチンアミドとニコチン酸の総称です。ナイアシンは体内で必須アミノ酸トリプトファンから合成されますが、それだけでは必要量を満たすことはできないため、食事からの摂取が必要です[※1]。ニコチンアミドは動物性食品に、ニコチン酸は植物性食品に含まれています。[※2]

小腸から吸収されたナイアシンは、補酵素として糖質や脂質、たんぱく質の代謝、エネルギー産生に関与します。また、脂肪酸やホルモンの生合成、細胞の分化など、体内のさまざまな反応に関わる重要な役割を担っています。

ナイアシンは体内の代謝の補酵素となるほか、加齢に伴う思考力の低下を防止したり、脂質異常症の改善に役立ったりと、多くの機能性を持つ栄養素です。

期待される効果・作用

血流促進

ナイアシンには、血管を拡張し血流を促す作用があります。そのため、冷え性や片頭痛の改善に役立つと考えられています。

皮膚や粘膜の健康維持

皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素として、栄養機能食品にも利用されているのがナイアシンです。

ナイアシンが不足すると皮膚炎や食欲不振、消化不良などが生じます。通常の食生活を送っていれば心配することはありませんが、さらに欠乏が進むとペラグラを引き起こすことが知られています。

脂質異常症の改善

ナイアシンには中性脂肪値およびLDLコレステロール値を低下させ、HDLコレステロール値を上昇させる効果があります。このことから、脂質異常症の治療薬としても用いられています。

二日酔いの予防

ナイアシンは、アルコール代謝の補酵素として働く栄養素です。

アルコールは肝臓で分解され、アセトアルデヒドを生じます。ナイアシンはこのアセトアルデヒドを分解する過程の補酵素として働くため、飲酒が原因で起こる二日酔いの予防に役立つと考えられています。

うつ症状の軽減

ナイアシンを十分に摂取することでうつ症状が軽減される場合があります。

脳内には「セロトニン」「ドーパミン」「ノルアドレナリン」などの神経伝達物質が存在しています。中でも、セロトニンはドーパミンやノルアドレナリンを制御し、精神安定に役立つ重要な物質。このセロトニンは、ナイアシン同様トリプトファンから合成されています[※3]。しかし、ナイアシンが食事から十分に摂取できないと、トリプトファンはナイアシンの合成に優先して使われるため、セロトニンの合成が低下してしまうのです。その結果、神経伝達物質のコントロールが上手くいかずに不安感やうつ症状を引き起こします。

また、ナイアシンは加齢に伴って低下する脳機能の維持に役立つ栄養素としても期待されています。

こんな方におすすめ

ナイアシンはビタミンの一種であり、人間にとって不可欠な栄養素です。体内の多くの代謝に関わる成分でもあるため、不足すると何らかの体調不良を招くと考えられます。そのため、気になる症状の有無に関わらず、不足しないように摂取することが必要です。

特に、血流が滞ることが心配な方や皮膚の健康を保ちたい方、コレステロールや中性脂肪が高めの方、こころの健康を保ちたい方、お酒を飲む方などは十分に摂取することで改善・予防効果が期待できると考えられるでしょう。

厚生労働省「日本人の食事摂取基準」では「ナイアシン当量(mgNE)」の摂取推奨量を設けています(乳児では摂取目安量 単位:ナイアシン重量(mg))。ナイアシン当量は、ナイアシン+1/60トリプトファンで算出した数値です。各年代の摂取推奨量は以下のとおりです[※4]

  • 0~11(月):2~3mg/日 (男女差なし)
  • 1~7(歳)男性:6~95mgNE/日
  • 1~7(歳)女性:5~85mgNE/日
  • 8~17(歳)男性:11~175mgNE/日
  • 8~17(歳)女性:10~145mgNE/日
  • 成人男性:13~15mgNE/日
  • 成人女性:10~12mgNE/日

また、ナイアシンには耐容上限量が設けられています。厚生労働省では、この量をニコチン酸またはニコチンアミドを使用したサプリメントを用いた場合の耐容上限量であるとしています[※4]。

ニコチンアミドとしての耐容上限量は、成人男性で300~350 mg/日、成人女性で250 mg/日です。また、ニコチン酸としての耐容上限量は、成人男女で75~85 mg/日となっています。

なお、授乳中の女性では付加量として各年代の推奨量+3mgNE/日が推奨量されていますが、妊娠中の方の場合は付加量がありません。

考えられるリスク・
副作用

通常の食事からナイアシンを摂取する場合、過剰摂取となる可能性はあまりないといえるでしょう。しかし、ニコチン酸やニコチンアミドを使用したサプリメントなどを利用する場合は、過剰摂取に注意が必要です。

医薬品としてニコチン酸を摂取した場合に皮膚の発赤が見られることがありますが、これは一時的なものであり健康被害を及ぼすものではないとされています[※4]。

また、ニコチンアミドは1型糖尿病、ニコチン酸は脂質異常症の治療薬として大量投与され、消化不良や重篤な下痢・便秘、肝機能低下や劇症肝炎を生じた例も報告されています[※4]。

ナイアシンを含む食べ物

ナイアシンは肉類、魚介類、きのこ類などに多く含まれています。[※5]

  • たらこ(生)       54.2mg/100g
  • まぐろ(びんなが・生)  26.0mg/100g
  • かつお(春獲り・生)   24.2mg/100g
  • 落花生(乾)       24.1mg/100g
  • 豚レバー(生)      18.9mg/100g
  • 鶏むね肉(皮なし・生)  16.9mg/100g
  • 鶏ささみ(生)      16.9mg/100g
  • まさば(生)       15.5mg/100g
  • 玄米           8.0mg/100g
  • えのきたけ(生)     7.4mg/100g
  • エリンギ(生)      6.7mg/100g

水溶性ビタミンであるナイアシンは、水にさらしたり茹でたりすることで損失しやすいため、調理方法の工夫が必要です。ナイアシンを効率よく摂取するには、焼いたり炒めたりする料理や、煮汁ごと摂取できるスープなどでの摂取がおすすめです。

発見・研究の歴史

ナイアシンの一種であるニコチン酸の発見は、1867年にさかのぼります。研究者Huberは、たばこに含まれる有害物質「ニコチン」から生成した物質を「ニコチン酸」と名付けました。[※2]

その後、1935年にはWarburgが脱水素酵素の補酵素として働くニコチン酸アミドを発見します。さらに、Elvehjem は犬の黒舌病(ナイアシン欠乏症に似た病気)をニコチン酸で治療することに成功し、ナイアシンのビタミン活性が明らかとなりました。[※6]

現在は、欠乏症のみならず、ナイアシンのさまざまな機能性についての研究がすすめられています。

ナイアシンに関する研究情報

【1】プラバスタチンとニコチン酸の低用量併用は、プラバスタチン単独よりも中性脂肪値の低下とHDLコレステロール値の上昇に有効であり、ニコチン酸単独よりも総コレステロール値、中性脂肪値、LDLコレステロール値の低下により有効であること、また、併用療法は2型糖尿病患者でも非糖尿病患者でも同様に有効であることが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7621303/

【2】シンバスタチンとナイアシンの併用によりLDLコレステロールが減少し、HDLコレステロールが増加しました。冠動脈狭窄の程度も改善されていたことから、ナイアシンが高コレステロール血症予防効果、動脈硬化予防効果を持つことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11757504/

【3】1993年から2002年の調査により、食事から摂取するナイアシンの量が多いほど、アルツハイマー病にかかりにくいことが分かりました。このことから、ナイアシンはアルツハイマー病および加齢に伴う認知機能の低下を防ぐ可能性があると考えられます。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15258207/

【4】タンパク質、ビタミンA、ナイアシン、チアミン、リボフラビンの摂取量の多さは、核白内障の有病率の低下と関連していることが分かりました。水晶体の核は、栄養不足に対して特に敏感であり、ナイアシンが核内白内障の予防に重要な役割を果たすと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10711880/

参照・引用サイトおよび文献

※1 5-23 ナイアシンについて(2016年8月)|一般財団法人日本食品分析センター
(URL:https://www.jfrl.or.jp/information/551

※2 (2011年9月発行)水溶性ビタミン(3)|財団法人食品分析開発センターSUNATEC
(URL:http://www.mac.or.jp/mail/110901/05.shtml

※3 L-Tryptophan(トリプトファン)|アミノ酸の種類と機能|アミノ酸ナビ|協和発酵バイオ株式会社
(URL:http://www.kyowahakko-bio.co.jp/rd/aminonavi/function/modal_07.html

※4 日本人の食事摂取基準(2020年版)|厚生労働省
(URL:https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586563.pdf

※5 日本食品標準成分表2020年版(八訂)|文部科学省
(URL: https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_01110.html

※6 杉田 篤子,杉田 和成「ナイアシン欠乏と皮膚免疫」|日本臨床免疫学会会誌(Vol. 38 No. 1 37-44)
(URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsci/38/1/38_37/_pdf

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