セラミド

こんなお悩み・健康効果に
- 保湿・保水効果
- 皮膚のバリア機能の維持
- 健康な髪質の維持
セラミドとは
セラミドは皮膚のいちばん外側に位置する角層(角質層)を形成する成分のひとつ。角層はいくつもの細胞が層をなしており、その角層細胞の間の隙間を埋めているのがセラミドです。[※1]
セラミドは外部の刺激から皮膚を守る「バリア機能」のために働く成分です。皮膚のバリア機能は角層の細胞同士がセラミドでしっかりと満たされ、水分を保った状態でなければ発揮されません。そのため、セラミドが不足した皮膚ではバリア機能が十分に働かず、外部からの刺激を受けやすくなってしまい、肌荒れを起こしたり乾燥肌を引き起こしたりしてしまうのです。[※1]
また、アトピー性皮膚炎の方の多くが皮膚のセラミド不足であるということも分かってきました。セラミド不足でバリア機能が低下した皮膚に異物が侵入することで炎症を起こし、かゆみや湿疹などの症状が現れます。[※2]
セラミドはサプリメントや化粧品などにも利用されています。サプリメントや化粧品に使われるセラミドの多くはこんにゃくや米由来の「植物セラミド」、ミルクや馬由来などの「動物セラミド」です。これらのセラミドは、人間の皮膚のセラミドとは大きく構造が異なる「非ヒト型セラミド」に分類されています。一方、人間の皮膚に存在するセラミドと構造が同じ「ヒト型セラミド」は、自然界にはほとんど存在しないため、植物などから合成されています。[※3]
期待される効果・作用
保湿・保水効果
脂質の一種でありながら、水となじみやすい性質を持つセラミド。このような特性により、皮膚の角層に水分を留めたり、蒸発を防いだりする効果を発揮し、皮膚の潤いを保つのに役立っています。
皮膚のバリア機能の維持
セラミドには皮膚のバリア機能を正常に保つ働きがあります。
セラミドは「細胞間脂質」と呼ばれる物質のひとつ。セラミドをはじめとする細胞間脂質は「天然保湿因子」「皮脂膜」とともに角層を構成し、外部刺激や異物の侵入から皮膚を守ったり水分の蒸発を防いだりすることでバリア機能を保っています。[※4]
皮膚のバリア機能が低下することで起こるといわれているのがアトピー性皮膚炎です。セラミドなどの成分が不足すると皮膚の乾燥やアレルゲンとの接触が起こりやすくなり、かゆみや湿疹を引き起こす原因になるとされています。
健康な髪質の維持
セラミドは健康な髪質を保つことにも役立っています。
1本の毛髪は3層構造になっており、層の一番外側を「キューティクル」といいます。キューティクルがはがれないようにする役割を担っているのが「細胞膜複合体(CMC)」で、CMCの構成成分となっているのがセラミドです。 [※5]
CMCは加齢に伴い減少するほか、紫外線やヘアカラー、パーマの薬剤によっても破壊され、髪のダメージにつながります[※6]。そのため、髪の美しさを保つためのヘアケア製品の中には、セラミドを配合したものも多く販売されています。
こんな方におすすめ
肌の潤いを保つのに欠かせない成分であるといえるのがセラミドです。そのため、乾燥肌や肌荒れに悩む方に役立つ成分です。乾燥肌から起こる、かゆみなどの症状にも有効であるといえます。
また、髪のツヤが失われてしまったり痛みが気になったりしている方は、セラミド配合のヘアケア製品を利用してみることもおすすめです。
さらにセラミドには、皮膚のバリア機能を正常に保つ機能があるため、アトピー性皮膚炎の繰り返すかゆみや湿疹にも役立つ成分であるといえるでしょう。アトピー性皮膚炎を根治させる治療法は現状では発見されていませんが、セラミドを活用したスキンケアなども有効であると考えられています。[※7]
摂取目安量・上限目安量
セラミドは化粧品など外用で使用する以外に、サプリメントの成分としても利用されています。
セラミドの摂取目安量や上限量などは特に定められていませんが、1日当たり0.6mg~1.8mgであると考えられています[※8]。
近年「肌の水分を逃しにくくする」などといったセラミドの機能性を表示することができる「特定保健用食品(トクホ)」や「機能性表示食品」も販売されています。セラミド配合の機能性食品の1日当たりの摂取目安量(セラミド含有量)はメーカーにより異なりますが、1mg~2mg程度配合された製品が多く販売されているようです。
考えられるリスク・
副作用
現在のところ、医薬品との相互作用や過剰摂取による健康被害などは報告されておらず、適切に摂取する分には安全性の高い成分であるといえるでしょう。
セラミドは、サプリメントなどの利用により摂取されることが多いと考えられますが、より安全にサプリメントを利用するためには「保健機能食品」を利用するのがおすすめです。保健機能食品のうち、セラミドが該当するものは「特定保健用食品(トクホ)」と「機能性表示食品」です。
特定保健用食品は、健康の維持増進に役立つ成分を含み、特定の効果が期待できる旨の表示を国の審査を経て許可された食品です。一方、機能性表示食品は国による審査はありませんが、販売する企業が安全性・有効性の科学的根拠など必要事項を国に届け出ることで、特定の効果が期待できることを表示できるようになります。
安全性の高い成分であるとはいえ、サプリメントを適切に選んだり1日当たりの摂取目安量を守ったりすることを意識することが大切です。
セラミドを含む食べ物
セラミドは食品から補うことも可能です。セラミドが含まれている食品はこんにゃく芋、わかめ、黒豆、小豆、小麦、米などに含まれています。しかし、含有量はあまり多くないため、積極的にセラミドを取り入れたい場合にはサプリメントの利用も効果的です。
サプリメントに使われているセラミドは、主に米、こんにゃく、パイナップル、ミルク由来など、植物や動物由来の天然セラミドが多く利用されています。
なお、セラミドと相乗作用を発揮する成分としてコラーゲンやヒアルロン酸があります。セラミドと同様に皮膚の保水効果を持つヒアルロン酸や、皮膚のハリや弾力を保つ効果が期待できるコラーゲンは、サプリメントや化粧品などにおいて、同時配合されている商品も多く販売されています。
発見・研究の歴史
セラミドはスフィンゴ脂質の一種ですが、このスフィンゴ脂質は19世紀後半にドイツ人生化学者 Thudichum により発見されました。[※9]
スフィンゴ脂質であるセラミドは、何らかの形で皮膚の潤いに関係していることが分かっていたものの、皮膚の角層に存在していることが明らかになったのは1985年のことであったといわれています。[※10]
近年は、皮膚のバリア機能に関する研究が進められ、アトピー性皮膚炎など皮膚疾患の治療に有効な成分としても期待されています。
セラミドに関する研究情報
【1】馬セラミドはヒト角化細胞においてセラミド合成を促進する可能性が示唆されました。また、馬セラミドが表皮セラミド量を増やしバリア機能を向上させることを確認しました
https://ak.rosette.jp/fundamental_research.html
【2】植物由来のセラミド(こんにゃく由来グルコシルセラミド)は、脳内アミロイドβの蓄積を抑制することで、認知症予防に効果を示すことが確認されました
https://www.hokudai.ac.jp/news/2021/08/ss.html
【3】角質層におけるセラミドの不足は、アトピー性乾燥肌の病因のひとつであることが示唆されました
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/2007790/
【4】セラミド3含有保湿化粧品を1日1~2回外用することは、小児のアトピー性皮膚炎や乾皮症等から起こる乾燥症状に対して有用で,安全に適用できる保湿用クリームであることが示されました
https://www.jstage.jst.go.jp/article/skinresearch/3/3/3_3_306/_article/-char/ja/
【5】肌のバリア機能を維持するうえで重要な役割を担うセラミドはストレスによって減少することが分かり、そのメカニズムを解明しました。また、生薬として使われている「アセンヤクエキス」に、肌のバリア機能を改善する効果があることを確認しました
https://www.fujifilm.co.jp/corporate/news/articleffnr_1441.html
参照・引用サイトおよび文献
※1 肌の必須成分「セラミド」とは|花王株式会社
(URL:https://www.kao.co.jp/curel/curelceramide/ceramide/)
※2 皮膚のバリア機能を回復させるために重要なこと|すこやかライフ|独立行政法人環境再生保全機構
(URL:https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/sukoyaka/43/medical/medical01.html)
※3 植物由来なのにヒト型セラミド! | 株式会社サティス製薬
(URL:https://www.saticine-md.co.jp/rd/furusato/2327)
※4 「セラミド」はどんな機能をもつの?|花王株式会社
(URL:https://www.kao.com/jp/binkanhada/skin_02_03/)
※5 髪の構造|花王株式会社
(URL:https://www.kao.com/jp/haircare/hair/1-3/)
※6 毛髪の基礎知識|ニューウェイジャパン株式会社
(URL:https://www.newayjapan.com/hair_basic_knowledge.html)
※7 アトピー外来|日本医科大学付属病院
(URL:https://www.nms.ac.jp/hosp/section/dermatology/guide/outpatient009.html)
※8 【PDF】ニップンセラミドのご紹介|株式会社 ニップン
(URL:https://www.nippn.co.jp/BrandB/rd/report/pdf/ceramide_report.pdf)
※9 【PDF】北谷 和之ら 「セラミドを中心としたスフィンゴ脂質代謝」|日本生化学会邦文誌「生化学」第86巻 第6号 495-505
(URL:
http://www.jbsoc.or.jp/seika/wp-content/uploads/2013/05/83-06-06.pdf)
※10 セラミドのおはなし| チョコラドットコム|エーザイ株式会社
(URL:https://www.chocola.com/ceramide/04/)
成分
10秒解説
セラミドは皮膚の角質層に多く存在している物質です。セラミドには皮膚の水分を保つことで保湿力や柔軟性を維持する効果があることから、不足すると乾燥やかゆみなど皮膚トラブルの原因となります。最近では、特定保健用食品(トクホ)や機能性表示食品の成分としても利用されています。