マンガン
こんなお悩み・健康効果に
- 骨の強化
- 月経前症候群 (PMS)
- 生殖機能の正常化
- 栄養素の代謝を高める
- 抗酸化作用
マンガンとは
元素番号25の金属元素であるマンガンは、岩石や土壌、水など地球上に幅広く分布するほか、多くの動植物中に存在している成分です。
体内に極めて微量しか存在しない元素ながらも人体には不可欠な成分で、鉄や亜鉛、ヨウ素などとともに「微量元素」と呼ばれています。マンガンは、生体内では糖質や脂質の代謝に関わる酵素を活性化したり、金属酵素や抗酸化酵素の構成成分となったりしています。また、月経前症候群(PMS)の症状軽減や、骨粗しょう症に対する有効性も示唆されています。
穀類や種実類に多く含まれているマンガンは、一般的な食生活を送っていれば不足の心配はないとされています。しかし、長期にわたる完全静脈栄養下ではマンガン欠乏症が生じる可能性が高いとされており、その症状としては小児での成長抑制やびまん性の骨の脱石灰化が挙げられます。
過剰摂取についても通常の食事では起こらないとされています。マンガンの過剰摂取、つまりマンガン中毒を引き起こす原因の大部分が、直接マンガンを吸い込むこと。仕事などでマンガンを扱う方の中には、慢性的なマンガンの暴露により中毒を引き起こすことがあります。
期待される効果・作用
骨の強化
マンガンは骨の形成に関わる栄養素です。骨の健康維持に欠かせない成分としてはビタミンDやカルシウムが有名ですが、マンガンも骨形成に重要な成分であるといわれています。
月経前症候群 (PMS) の症状軽減
カルシウムとマンガンを併用摂取することは、月経痛や気分の落ち込みなど月経前症候群(PMS)の症状を軽減させることに有効であると言われています。[※1]
生殖機能の正常化
動物実験での結果によると、マンガンが不足することで生殖機能の低下につながることが報告されています。
栄養素の代謝を高める
マンガンは糖代謝や脂質代謝、アミノ酸やたんぱく質の代謝などに関わる酵素の構成成分です。糖質、脂質、たんぱく質といったエネルギー産生栄養素の代謝に関わるマンガンは、生命活動の源であるエネルギーの産生をスムーズに行うために役立つ成分であると考えられるでしょう。
抗酸化作用
マンガンは活性酸素から体を守る、酵素の合成に関わる物質のひとつです。人体には活性酸素から体を防御するための機能が備わっており、この機能に関与しているのが抗酸化酵素です。
抗酸化酵素の合成には亜鉛や銅、マンガンなどが必要です。そのため、マンガンを十分に摂取することは、老化や動脈硬化などの生活習慣病から体を守ることに役立つといえるでしょう。
こんな方におすすめ
マンガンは人体にとって必須の成分であるため、性別・世代問わずすべての方に必要な成分です。通常の食生活で不足することはないとされていますが、とくに以下のような方は意識して摂取すると良いでしょう。
- 成長期の子ども
- 月経前症候群 (PMS) の症状がつらい方
- 体調を整えたい方
- 老化や生活病習慣予防対策を取りたい方
摂取目安量・上限目安量
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、日本人の平均的なマンガンの摂取量に基づき、以下のような目安量が定めています。日本人は食事から十分な量のマンガンを摂取していると考えられています。
【1日あたりのマンガンの摂取目安量】[※2]
- 成人男性……4.0mg/日
- 成人女性……3.5mg/日
また、耐容上限量は成人男女で11mg/日となっています。[※2]
考えられるリスク・
副作用
ほとんどの日本人は通常の食事でマンガンの過剰摂取が問題となることはありません。しかし、完全静脈栄養下では中毒が生じてしまう可能性があります、完全静脈栄養下で生じるマンガン中毒は食事由来であるとはいえませんが、過剰摂取による健康被害に陥らないために、耐容上限量を設定する必要があったとされています。[※2]
また、職業柄マンガンを取り扱う環境にある方などでは、中毒症状に注意が必要です。
マンガンを含む食べ物
マンガンは穀類や種実類、豆類などに多く含まれています。[※3]
- アマランサス(玄穀) 6.14mg/100g
- ヘーゼルナッツ(フライ・味付け)5.24mg/100g
- 玉露(浸出液) 4.60mg/100g
- 小麦粉(全粒粉) 4.02mg/100g
- きな粉(黄大豆) 2.75mg/100g
- アーモンド(いり・無塩) 2.46mg/100g
- 発芽玄米 2.07mg/100g
- 玄米 2.06mg/100g
- 油揚げ 1.65mg/100g
発見・研究の歴史
マンガン(Mn)の語源はラテン語の「magnes(磁石)」であるといわれています。マンガンは古代ローマ時代からガラスの着色などとして利用されていましたが、1774年に発見・単離されました。[※4][※5]
1931年にはマウスによる実験で必要性が明らかとなったマンガンですが、必須元素であると証明されたのは鉄とヨウ素に次いで古い歴史があります[※6]。しかし、生体内での機能は完全に解明されていないのが現状です。
アルギニンに関する研究情報
【1】マンガン暴露下での作業を30年間続けていた溶接工において、パーキンソニズムが見られました。脳MRIでの病変も認められましたが、10か月後には病変は縮小し、密度も低下しました。結果的には血清と尿の両方のマンガンレベルが高いこと、およびキレート剤の投与後の尿中マンガンレベルが著しく上昇したことによってマンガン中毒と診断されましたが、慢性マンガン暴露患者においては脳MRI診断の重要であると考えられました
【2】カルシウム摂取量の増加は、全般的に気分の落ち込みや集中力の低下を軽減し、月経期の痛みやむくみも軽減しました。カルシウム摂取量の増加にもかかわらず、食事性マンガンが少ないと、月経前期の気分の落ち込みや痛みの症状が増すことが分かりました。このことから、食事性カルシウムおよびマンガンは、月経に関連する痛みや気分の症状の発現において機能的な役割を担っている可能性があると考えられます
【3】閉経後の健康な高齢女性(n = 59、平均年齢66歳)を対象に、亜鉛(15.0 mg/d)、マンガン(5.0 mg/d)、銅(2.5 mg/d)を加えたカルシウム補給と、加えない場合の脊椎骨損失(L2-L4椎骨)に対する影響を、2年間の二重盲検プラセボ対照試験において評価しました。その結果、カルシウムを補給した閉経後の年配の女性の骨量減少は、微量ミネラル摂取量の同時増加によってさらに阻止できることが示唆されました
成分
10秒解説
マンガンは、人体に微量に存在しているミネラルのひとつです。骨の発育に必要な成分であり、糖や脂質の代謝など、体内では多くの酵素の構成成分となっています。また、活性酸素を無毒化する抗酸化酵素の材料となるため、老化や生活習慣病予防の役割を担う成分であるともいえます。