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カルシウム

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成分
10秒解説

骨や歯を構成する成分として知られるカルシウムは、生命維持に欠かせないミネラルの一つ。骨粗しょう症の予防のほかにも、さまざまな効果が期待されています。日本人には特に不足しやすいミネラルのため、食事やサプリメントからしっかりと補うことが必要です。

こんなお悩み・健康効果に

  • 骨粗しょう症の予防
  • 高血圧の予防
  • 精神安定作用
  • ダイエット中の筋肉維持
  • 大腸がんの予防

カルシウムとは

骨や歯の構成成分としての役割を担う多量ミネラル

カルシウムはミネラルの一種です。ミネラルとは、生命維持のために重要な役割を持つ必要不可欠な栄養素。体内で合成できないため、食べ物から摂取する必要があります。[※1]

カルシウムは、人体にとって必要であることが明らかになっている「必須ミネラル」の一つで、私たちの体内に最も多く存在しているミネラルです。[※2]

ほとんどがリン酸カルシウムとして骨や歯に存在していますが、ごく一部は筋肉や血液、神経組織などにあり、血液凝固や筋肉収縮に関与しています。

食べ物から摂取されたカルシウムは、小腸上部でビタミンDの作用を受け吸収されます。このことから、カルシウムの吸収にはビタミンDの存在も重要であると言えるのです。

吸収されたカルシウムは血液中に入り各組織へ運ばれ、残りは骨に蓄えられます。

カルシウムが不足すると骨が十分に成長せず、骨粗しょう症の原因にもなります

期待される効果・作用

骨粗しょう症の予防

カルシウム不足は、骨がもろくなって骨折しやすくなってしまう「骨粗しょう症」の危険因子の一つとされています。[※3]

骨量は成長期に増加し20歳前後で最大となりますが、加齢により減少していきます。そのため、若い頃からカルシウムをしっかりと摂取しておくことが大切です。

特に女性では、閉経に伴い骨量が減少しやすくなるため、より意識してカルシウムを摂取しておことが、骨粗しょう症の予防となります。

高血圧の予防

カルシウムが不足すると、高血圧を引き起こすことが知られています。

カルシウムのほとんどが骨や歯に存在する一方で、ごく一部が血液や細胞中に存在します。その骨以外にあるわずかなカルシウムは、心機能や脳の神経細胞のはたらきに関わるなど、非常に重要な役割を担っています。

そのため、カルシウム不足に陥ると骨に蓄積されているカルシウムから、細胞(血液中)へのカルシウムの補給が行われ、血中カルシウム濃度が高くなります。

さらに、血液中に増えたカルシウムは血管の収縮を助長させるため、血流が悪くなり血圧上昇を招きます。[※4]

このことから、カルシウムを十分に摂取することは、高血圧の予防につながります。

精神安定作用

カルシウムには、精神を安定させる作用があるとされています。

神経伝達物質としての役割を担う栄養素の一つがカルシウム。カルシウムが不足すると情報伝達のシステムが不安定になり、体にさまざまな不具合が出てきてしまいます。

つまり、カルシウムが不足すると情報伝達がスムーズにいかなくなり、イライラするなどの症状が出てきてしまうのです。

また、精神安定のためには良質な睡眠も欠かせません。最近の研究では、眠りと覚醒のメカニズムに、カルシウムが関与している可能性のあることが報告されています。[※5]

ダイエット中の筋肉維持

食前にコップ1杯の低脂肪牛乳を摂取することで、骨量を減らすことなく筋肉量を増やし、体脂肪を落とすことができるというデータが報告されています。[※6]

このことは、カルシウム摂取量と体重変化には負の相関があるという研究報告をもとに、体組成の変化までを調査した研究によって示されました。

筋肉量を落とさずに減量を行うことは、代謝量を上げるなど健康上のメリットもあります。カルシウムをしっかりと摂取することは、健康的なダイエットに役立つ可能性があると言えるでしょう。

大腸がんの予防

中年の日本人男性と女性を対象とした大規模な前向きコホート研究によると、カルシウムを多く含む食事を摂取すると、大腸がんのリスクが低下するという報告があります。[※7]

こんな方におすすめ

加齢に伴い、骨の強度が低下し骨折しやすくなります。

特に女性は、閉経に伴い骨粗しょう症を発症しやすいと言われているため、若い頃からカルシウムを十分摂取しておくことが重要です。

また、高血圧や肥満などメタボリックシンドローム予防の対策を講じておきたい方なども、日頃から意識して摂取しておくと良いでしょう。

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、1日当たりのカルシウムの摂取推奨量を成人男性で700~800mg、成人女性で600~650mgとしています。

骨量の増加が著しい成長期世代での推奨量を見てみると、男女ともに12~14歳で最も多くのカルシウムを必要としています(男性:1,000mg 女性:800mg)。

また、カルシウムには耐容上限量が設定されており、18歳以上の男女で2,500mgとなっています。

考えられるリスク・
副作用

健康な方が、通常の食事からカルシウムを過剰摂取しても、健康被害を引き起こす危険性はあまりないと言われています。

しかし、サプリメントなどの利用により過剰摂取となった場合、泌尿器系結石、軟組織の石灰化、鉄や亜鉛の吸収障害などを引き起こす可能性があります

また、カルシウムのサプリメントは、以下のような薬剤の吸収を妨げる可能性があるため注意が必要です。[※8]

  • ビスホスホネート(骨粗しょう症治療薬)
  • フルオロキノロン系・テトラサイクリン系の抗生物質
  • レボチロキシン・フェニトインなどの抗けいれん薬

カルシウムを含む食べ物

カルシウムは、乳類、魚介類、野菜類、海藻類、種実類、大豆製品などに多く含まれています。[※9]

  • 普通牛乳…………110mg/100g
  • プロセスチーズ…630mg/100g
  • うるめいわし(丸干し)…570mg/100g
  • ししゃも(生干し)………330mg/100g
  • 生揚げ……………240mg/100g
  • 小松菜……………170mg/100g
  • いりごま…………1,200mg/100g
  • ひじき(ステンレス釜・ゆで)…96mg/100g

植物性の食品には、カルシウムの吸収を阻害する成分が含まれています。ほうれん草に多いシュウ酸や、豆類などに多いフィチン酸、食物繊維などがその成分に当たります。そのため、牛乳やチーズなどに比べると吸収率は低くなってしまいます。

また、インスタント食品やスナック菓子などに利用される食品添加物に多く含まれているリンも、摂り過ぎてしまうとカルシウムの吸収を阻害してしまいます。

一方、カルシウムの吸収促進のために欠かせない栄養素や、相乗効果を発揮する成分もあります。

ビタミンD

小腸上部でのカルシウムの吸収には、活性型ビタミンDが必要です。カルシウムの摂取量が十分でも、ビタミンDが不足すると吸収効率が低下してしまいます

ビタミンDはきのこ類や魚類、卵類、乳製品などから摂取できますが、日光に当たることで体内でも合成されます。屋内で過ごすことが多い方は、ビタミンD不足にも注意しましょう。

マグネシウム

カルシウム同様に必須ミネラルの一つであるマグネシウム。体内に存在するマグネシウムの約6割が骨や歯に存在し、リンやカルシウムとともに骨を形成する役割を担っています。[※10]

カルシウムとマグネシウムは密な関係にあり、骨の健康維持に役立っています。また、心疾患予防の観点からも、カルシウム摂取量とマグネシウム摂取量の割合が重要であると言われています[※11][※12]。

そのため、健康維持のためにはカルシウムとともにマグネシウムも不足のないよう摂取することが大切であると言えるでしょう。

マグネシウムは魚介類、藻類、穀類、種実類などに多く含まれています

CPP(カゼインホスホペプチド)

カルシウムの吸収を高めてくれる成分として知られているのが、CPP(カゼインホスホペプチド)です。

牛乳に多く含まれているカゼイン由来のCPPは、小腸下部でカルシウムの吸収を妨げてしまうリンと結合し、カルシウムの吸収率を上げる手助けをしてくれます

CPPは、サプリメントなどに利用されています。

発見・研究の歴史

1808年、イギリスの化学者ハンフリー・デービーによりカルシウムが発見されました。

その後、シドニー・リンガーによって、細胞の機能である情報伝達にはカルシウムが必要であることが認められています。

さらに、その後の研究により、カルシウムは心収縮において重要な役割を持つなど、生命維持に不可欠な成分であることが明らかとなっています。

最近では、カルシウムの摂取が大腸がんの発症リスク低下に関与している可能性が示されるなど、さらなる研究が進められています。

カルシウムに関する研究情報

【1】カルシウム摂取量は、閉経後の女性の体脂肪量と逆の相関を示していることがわかりました
https://bibgraph.hpcr.jp/abst/pubmed/32859317

【2】カルシウムとビタミンDの補給は、太りすぎや肥満の成人の腹部内臓脂肪組織の減少と関連しています
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22170363/

【3】高カルシウム摂取量とカルシウムサプリメントの使用は、結腸直腸腫瘍を予防する可能性があります。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21866684/

参照・引用サイトおよび文献

※1 ミネラル | e-ヘルスネット(厚生労働省)
(URL:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-035.html

※2 カルシウム | e-ヘルスネット(厚生労働省)
(URL:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-042.html

※3 骨粗鬆症の予防のための食生活 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
(URL:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-02-007.html

※4 カルシウム不足を解消して高血圧や動脈硬化を予防する | オムロン ヘルスケア
(URL:https://www.healthcare.omron.co.jp/resource/column/life/15.html

※5 カルシウムがマウスの睡眠時間を制御 | 東京大学
(URL:https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/articles/a_00474.html

※6 牛乳ダイエットは体脂肪を減らすか?|社団法人日本酪農乳業協会メディアミルクセミナー【PDF】
(URL:https://www.j-milk.jp/report/media/f13cn00000000uvm-att/berohe000000k333.pdf

※7 Junko Ishihara et al.|Dietary calcium, vitamin D, and the risk of colorectal cancer|Am J Clin Nutr. 2008 Dec;88(6):1576-83.
(URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19064518/

※8 厚生労働省eJIM | カルシウム | 「統合医療」情報発信サイト
(URL:https://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/overseas/c03/01.html

※9 文部科学省 日本食品標準成分表2020年版(八訂)
(URL:https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_01110.html

※10 マグネシウム | e-ヘルスネット(厚生労働省)
(URL:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-034.html

※※11 マグネシウム|一般社団法人オーソモレキュラー栄養医学研究所
(URL:https://www.orthomolecular.jp/nutrition/magnesium/

※12 食事からのマグネシウム摂取量と虚血性心疾患発症との関連 | 国立循環器病研究センター
(URL:http://www.ncvc.go.jp/pr/release/20170908_press.html

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