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クエン酸

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成分
10秒解説

クエン酸は梅干しや柑橘類の酸味成分の一種で、体内では「クエン酸回路」でエネルギー産生に関与している成分です。ミネラルの吸収を促したり疲労回復に効果をもたらしたりするとされていますが、疲労回復の効果については十分信頼できるデータがないとの報告が上がっています。

こんなお悩み・健康効果に

  • ミネラルの吸収を促進
  • 食欲増進・消化を促す効果

クエン酸とは

体内でエネルギー産生システムの中心を担う成分

クエン酸は、ヒドロキシカルボン酸の一種である「α-ヒドロキシ酸」に分類される物質。生体のエネルギー代謝に関与し、ミネラルの吸収を高める効果があると考えられている成分です。

ヒドロキシカルボン酸は「オキシ酸」「ヒドロキシ酸」「オキシカルボン酸」などとも呼ばれる、カルボキシル基(-COOH)とアルコール性ヒドロキシル基(-OH)をもつ有機化合物の総称です。このヒドロキシカルボン酸のうち、α-ヒドロキシ酸はクエン酸のほか乳酸や酒石酸(ブドウ酸)、リンゴ酸などがあり、通称「AHA」とも呼ばれている成分。フルーツやワインなどに多く含まれ、古くからスキンケアのために使用されていたようです。[※1]

レモンや酢などの酸味成分としても知られているクエン酸は、ヒトや動物の体内にも存在し、エネルギー産生に関わる「クエン酸回路(TCA回路)」の中心的役割を担う重要な成分です。[※2]

私たちの生命維持に必要なエネルギーは、脂質、糖質(グルコース)、たんぱく質(アミノ酸)から代謝されます。この3つの栄養素は「エネルギー産生栄養素」とも呼ばれ、これら全てのエネルギー代謝に関わるシステムがクエン酸回路なのです。

体内では非常に重要な働きを担っているクエン酸ですが、私たちの身近でもさまざまな用途に使われています。クエン酸は、酸味剤や乳化剤、酸化防止剤などの「食品添加物」として利用されているほか、食品として自家製ジュースやジャムづくりに活用されています。

また、クエン酸の「酸」としての特性を活かし、アルカリ性の汚れを落とすために使用されることもあります。その他、消臭・殺菌目的で利用されることもあるなど多くの用途がありますが、代表的な使い方はポットの洗浄剤です。

さらに、クエン酸は「クエン酸水和物」として医薬品製造原料としても用いられています。以前はダイエット効果や疲労回復効果、運動能力や持久力の改善効果をもたらすとされてきたクエン酸ですが、ヒトに対する試験結果として十分に信頼できるデータが見当たらないとされ、その作用などが見直されているようです。

かつて、疲労の原因は運動することで筋肉中に増える乳酸の影響であると言われてきました。クエン酸には、この乳酸の生成を抑制したり分解したりする効果があるため、疲労回復に良いとされてきたのです。しかし、最近ではこの説は否定され、乳酸は肝臓でグリコーゲンに再合成されエネルギー源として再利用されるため、筋肉の活動に有効であると考えられています[※3][※4]。

クエン酸の疲労回復効果を示す十分に信頼できるデータがないということに加え、疲労のメカニズムに関する研究が進んだことも、クエン酸の効果が見直されるようになった理由の一つではないでしょうか。

 

期待される効果・作用

ミネラルの吸収を促進

クエン酸には鉄やマグネシウム、カルシウムなどのミネラルの吸収を高める可能性があると考えられています。[※5][※6][※7]

ミネラルは、体内で合成できないため食品から摂取することが必須です。不足しがちなものも多いため、クエン酸の効果は私たちにとって非常に重要であると言えるでしょう。

食欲増進・消化を促す効果

クエン酸の酸味は、味覚を刺激し食欲を増進させたり胃酸の分泌を活発にして食物の消化を助けたりする働きがあります。

こんな方におすすめ

クエン酸は、鉄やマグネシウム、カルシウムなどのミネラルの吸収を高めたいと考えている方におすすめの成分です。ミネラルは食品からの摂取が必須です。特に鉄、カルシウムは日本人にとって不足しがちな栄養素の一つ。鉄が不足すると鉄欠乏性貧血、カルシウムが不足すると骨の健康に支障をきたす可能性があります。そのため、これらの栄養素を多く含む食品を十分に摂取するとともに、クエン酸の摂取も意識してみるのも良いでしょう。

また、クエン酸は夏バテなどにより食欲が落ちてしまいがちな方などにも取り入れてみて欲しい成分です。梅干しやレモンなどクエン酸を多く含む食品を活かしたさっぱりとしたメニューは、食欲を増進させてくれることに役立つでしょう。

食品に含まれるクエン酸の摂取目安量・上限量などは設定されていません。

考えられるリスク・
副作用

クエン酸は水に溶けやすい水溶性の物質であるため、多少の摂り過ぎがあったとしても尿中に排出され、体内に蓄積されることによる過剰症などの心配はないと考えられます。そのため、通常の食事から摂取する量のクエン酸は安全性が高いとされていますが、サプリメントなどからの摂取においては、安全性が十分に証明できるデータがないようです。

また、空腹時の摂取や大量摂取した場合は胃に負担をかけてしまうため、注意したほうが良いでしょう。さらに、クエン酸を含む飲料や食品を頻繁に摂ったり大量に摂取したりすることが続くと、歯が溶けてしまう「酸う蝕」を引き起こす可能性もあります。クエン酸の大量摂取によって代謝異常が起こり死亡に至った例も報告されているので、過剰摂取は避けるようにしましょう。[※2]

クエン酸を含む食べ物

クエン酸は、酢や梅干、柑橘類などの果物に多く含まれています。主な柑橘果物のクエン酸含有量(100g当たり)は以下のとおりです(参考値)。[※9]

  • かぼす     6g
  • シークワーサー 6g
  • ライム     6g
  • すだち     4.5g
  • レモン     3g
  • 温州みかん   1g

また、クエン酸が配合されたスポーツドリンクや健康飲料なども多く販売されています。

クエン酸は水に溶けやすい性質があるため体内に留めておくことができません。そのため、日々こまめに摂取するとより効果的です。

なお、クエン酸は鉄やマグネシウム、カルシウムの吸収を高めるとされているため、これらのミネラル類を多く含む食品と一緒に摂取するのもおすすめです。

鉄、マグネシウム、カルシウムを多く含む食品を以下に紹介します。[※9]

鉄を多く含む食品

  • あさり(水煮・缶詰)
  • レバー(豚など)
  • 納豆
  • まぐろ(きはだ)
  • 小松菜
  • 大豆
  • ほうれん草

食品から摂取する鉄には、肉や魚など動物性食品に多く含まれている「ヘム鉄」と穀類や野菜などの植物性食品に多く含まれている「非ヘム鉄」があります。非ヘム鉄は体に吸収されにくい性質があるため、吸収率の高いヘム鉄を摂取したほうが効率的です。

しかし、一緒に摂取することで非ヘム鉄の吸収率が高められる栄養素があります。その栄養素がビタミンC。クエン酸にもビタミンC同様、非ヘム鉄の吸収率を高める効果が期待できる可能性が考えられるでしょう。

マグネシウムを多く含む食品

  • 乾燥わかめ(素干し)
  • 刻み昆布
  • ひじき
  • 干しえび
  • ごま
  • アーモンド
  • 切り干し大根
  • 玄米

カルシウムを多く含む食品

  • ごま
  • プロセスチーズ
  • 牛乳
  • うるめいわし(丸干し)
  • ししゃも(生干し)
  • 生揚げ
  • 小松菜
  • ひじき

発見・研究の歴史

クエン酸は、ドイツ生まれの薬剤師であり化学者でもあったシェーレによって18世紀に発見されました。[※10]

その後、1937年にはイギリスの学者クレブスによって「クエン酸回路」が発見されます。クレブスは、その功績により1953年にノーベル医学生理学賞を受賞しますが、このことによりクエン酸回路が世界的に注目されました。[※11]

私たちにとって必要不可欠なエネルギーを作り出すクエン酸回路において、重要な役割を持つクエン酸。しかし、疲労回復に対しては有効性がないとされるなど、いまだ解明されていない部分も多いため、今後の研究に期待されています。

クエン酸に関する研究情報

【1】クエン酸の摂取は1〜3歳の子供たちの鉄欠乏症の予防に役立つ可能性があります
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17225920/

【2】クエン酸マグネシウムが他のマグネシウム製剤よりも血清マグネシウム濃度を上昇させることから、クエン酸はマグネシウムの吸収を高める効果があると考えられます
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/14596323/

【3】運動後のクエン酸の摂取により血中乳酸濃度を低下させ筋肉疲労を和らげる働きがあると考えられました。
http://www.vic-japan.gr.jp/vicJ/no.104/No104.pdf

【4】クエン酸は「キレート作用」によってカルシウムの可溶性を高め、小腸からのカルシウムの吸収を促進しているというメカニズムが示唆されました
https://www.sapporoholdings.jp/research/news/dit/?id=7710

参照・引用サイトおよび文献

※1 化粧品用語集 | ライブラリー | 日本化粧品技術者会 SCCJ
(URL: https://www.sccj-ifscc.com/library/glossary_detail/1389

※2 クエン酸|国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 「健康食品」の安全性・有効性情報
(URL: https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail25.html

※3 乳酸 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
(URL:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-045.html

※4 “休養不足”に陥っていませんか?心臓を長持ちさせるための休養とは | 医療法人 澄心会 豊橋ハートセンター
(URL:https://www.heart-center.or.jp/rehabnow/1693/

※5 Mg citrate found more bioavailable than other Mg preparations in a randomised, double-blind study|Ann F Walker et al ,Magnes Res. 2003 Sep;16(3):183-91.
(URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/14596323/

※6 食品中ミネラルの溶出性及び吸収性に及ぼすレモン果汁の影響|日本調理科学会
(URL: https://www.jstage.jst.go.jp/article/ajscs/15/0/15_0_20/_article/-char/ja/

※7 クエン酸による小腸からのカルシウム吸収促進作用とそのメカニズムを解明!|新着情報|サッポロホールディングス
(URL: https://www.sapporoholdings.jp/research/news/dit/?id=7710

※8 特集2 香酸かんきつ(1):農林水産省
(URL: https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1701/spe2_01.html

※9 文部科学省 日本食品標準成分表2020年版(八訂)
(URL: https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_01110.html

※10 工学の曙文庫 世界を変えた書物 金沢工業大学ライブラリーセンター
(URL: https://www.kanazawa-it.ac.jp/dawn/110/177701.html

※11 クエン酸サイクル – 一般社団法人日本クエン酸サイクル研究会
(URL: http://www.903cycle.org/about/cycle.html

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