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イヌリン

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成分
10秒解説

菊芋、ゴボウなどの植物に含まれる天然成分であるイヌリン。イヌリンは水溶性食物繊維の一種で、腸内の善玉菌のエサとなり短鎖脂肪酸を産生することが分かっています。また、食物繊維の中でも血糖値を下げる効果が優れているといわれている成分です。

こんなお悩み・健康効果に

  • 腸内環境の改善
  • 食べ過ぎ防止効果
  • 便秘の改善
  • 食後血糖値・中性脂肪の上昇抑制効果
  • ミネラルの吸収促進

イヌリンとは

さまざまな機能性を持ち、古代から利用されてきた健康成分

イヌリンは植物の多くに存在している食物繊維の一種。古代の人々がイヌリンを多く含むチコリの根を食していたといわれており、古い歴史を持つ健康成分です。[※1]

イヌリンは、便通を整える効果や糖や脂質を吸着して体外へ排出する効果などにより、生活習慣病を予防したり改善したりする効果が期待できます。また、腸内の善玉菌を増やす効果もあるため、腸内環境の改善にも役立ちます。

多糖類の一種

実は、食物繊維の定義はしっかり定まっていないのですが、現時点では「ヒトの消化酵素で消化できない難消化性炭水化物」であるとされています。炭水化物には糖が1~2個結合した単糖類や二糖類、3~9個結合したオリゴ糖、10以上の多糖類が存在していますが、このうちの多糖類を難消化性炭水化物とし、食物繊維と呼んでいるのです。このことを踏まえると、イヌリンは多糖類の一種であると言えます[※2]。

さらに、食物繊維は水に溶けない不溶性食物繊維と水に溶ける水溶性食物繊維の2種類に大別され、イヌリンは水溶性食物繊維に分類されます。不溶性食物繊維にはセルロースやヘミセルロースなどがあり、腸内で水分を吸収して便のカサを増やし、さらに腸を刺激して便通を促進する作用があります。一方、水溶性食物繊維にはペクチンやグルコマンナンなどがあり、腸での糖質の吸収を遅らせ血糖値の急上昇を抑えたり、コレステロールなどを吸着し体外へ排出したりする作用があります。[※2]

期待される効果・作用

腸内環境の改善

イヌリンは、腸内に存在する乳酸菌やビフィズス菌などのいわゆる善玉菌の増殖を促す作用があります。

水溶性食物繊維やオリゴ糖は腸内細菌(善玉菌)のエサとなり、酪酸やプロピオン酸などの短鎖脂肪酸を作り出します。短鎖脂肪酸が増えると、腸内環境を改善を通して全身の健康へつながると考えられています[※3]

食べ過ぎ防止効果

水溶性食物繊維であるイヌリンは粘着性があるため、胃腸の中をゆっくり移動します。その結果、お腹が空きにくくなり食べ過ぎを防ぐことに役立ちます

便秘の改善

イヌリンには、便秘がちな方の便を軟らかくして排便を促すことで便通を改善させる作用があります。

食後血糖値・中性脂肪の上昇抑制効果

イヌリンを食事と一緒に摂取することで食事中の糖質や脂質の吸収が遅れるため、食後血糖値・中性脂肪の上昇が緩やかになります

また、食後血糖値の急上昇を抑制することでインスリンの過剰分泌も抑えられます。その結果、脂肪の蓄積も抑制されることから、内臓脂肪の蓄積予防にもつながると考えられます

ミネラルの吸収促進

イヌリンは消化酵素の影響を受けずに腸に届き、腸内の善玉菌を増やします。このためカルシウムなどのミネラル類の溶解性が高まり、吸収が促進されると考えられています。[※4]

こんな方におすすめ

イヌリンは食物繊維を積極的に摂取したい方におすすめの成分です。食物繊維を摂取することで食べ過ぎを防止したり生活習慣病の予防につながったりするため、以下のような方は意識して摂取すると良いでしょう。

  • ダイエット中の方
  • 便秘がちな方
  • 中性脂肪値やLDLコレステロール値が高めの方
  • 食後血糖値が高めの方

また、腸内環境を整えることで健康づくりに役立てたい方などにもおすすめの成分であるといえるでしょう。

イヌリンそのものの摂取目安量や上限量などは特に定められていませんが、食物繊維には摂取目標量が定められています。

厚生労働省の食事摂取基準によると、成人1日当たりの食物繊維摂取目標量は男性20~21g、女性17~18gとなっています。[※5]

食物繊維の摂取目標量策定の際、アメリカ・カナダの食事摂取基準を参考にし、1日当たり24g以上の摂取を目標とすべきであると考えられていました。しかし、実際の日本人の摂取量と比較すると、目標を達成するのが難しい数値であると判断したため現在の数値に設定されたようです。[※5]

実際の日本人1日当たりの食物繊維摂取量の平均値は男性19.4g、女性17.5gとなっています。[※6]

考えられるリスク・
副作用

イヌリンは天然由来の成分であるため安全性は高いとされていますが、過剰摂取した場合はガスによる腹部膨満感や軟便、胃痙攣を来すことがあります。また、まれなケースではありますが、イヌリンを含んだ食品により重篤なアレルギーを起こした例も報告されています。[※7]

近年、サプリメントや機能性表示食品などの成分として利用されるケースも増えているため、過剰摂取には十分注意しましょう。

イヌリンを含む食べ物

イヌリンはチコリやごぼう、玉ねぎ、にんにく、菊芋などに多く含まれています。なかでも、菊芋にはイヌリンが豊富に含まれているといわれています。[※8]

菊芋とは

北アメリカ原産の菊芋は生姜のような見た目の根茎を持つ植物。じゃが芋などの芋類に含まれるでんぷんの代わりにイヌリンを豊富に含んでいます。

菊芋が日本に伝わったのは19世紀。その後、戦時中の食糧として注目されるようになりますが、各地で栽培が盛んに行われるようになったのは、イヌリンの効果が注目されるようになってからのようです。

シャキシャキとした食感とほのかな甘みが特徴の菊芋は、生でも加熱しても美味しい食材。サラダや漬物、炊き込みご飯、煮物や炒め物などいろいろな料理に幅広く利用できます。

イヌリンと相乗効果が期待できる成分

水溶性食物繊維を多く含む海藻類、果物類、穀類、豆類や野菜類(根菜類)は、イヌリンと同様の効果が期待できるため、合わせて摂るとより効果的であるといえます。

また、腸内の善玉菌を増やすという効果においてはオリゴ糖もおすすめです。オリゴ糖は野菜類(インゲン、ごぼう、玉ねぎなど)や果物(バナナ)、きなこ(大豆)などに含まれています。

さらに、腸内環境を整えるという意味では、善玉菌そのものを含む発酵食品もイヌリンとの相乗効果が期待できる成分といえるでしょう。ヨーグルトやチーズ、納豆、キムチ、ぬか漬けなどが発酵食品の代表例です。

発見・研究の歴史

最初にイヌリンを多く含むチコリの健康効果が文献に記されたのは古代ギリシャ時代ですが、イヌリンそのものが発見されたのは1804年であるとされています。その後19世紀には、欧米において血糖値の上昇抑制する作用があるなどとして、糖尿病の方の食事に利用されていました。[※8]

その後、20世紀には菊芋にイヌリンが含まれていることが証明され、欧米を中心に日本でも菊芋(イヌリン)の健康効果に対する研究が行われています。

現在、イヌリンをはじめとする水溶性食物繊維は生活習慣病予防などに効果があるとして、市場が拡大しています。日本では水溶性食物繊維の一種「難消化性デキストリン」が多くの食品に添加されていますが、世界的に見るとイヌリンが市場の1/3を占めるなど、メジャーな水溶性食物繊維であるいえるようです。[※1]

イヌリンに関する研究情報

【1】胃腸の不調を訴える方にイヌリン(8g/d、n=18)またはマルトデキストリン(8g/d、n=18)をプラセボとして4週間投与したところ、イヌリンはビフィズス菌の増殖を促進したため、腸機能を改善する可能性が示唆されます
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27680592/

【2】太りすぎまたは肥満(肥満度指数の85パーセンタイル以上)であるがそれ以外は健康な7〜12歳の子供にイヌリン( 8 g /日 n = 22)を1日1回16週間投与したところ、体重、体脂肪、血清中性脂肪の有意な低下、糞便中の胆汁酸の排泄増加、ビフィズス菌族の増加が見られました
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28596023/

【3】イヌリン摂取は慢性便秘患者の排便機能の改善効果があります
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25208775/

【4】イヌリンは、血糖および脂質パラメーターを改善することにより、糖尿病とその合併症を制御するのに役立つ可能性があります
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24688953/

参照・引用サイトおよび文献

※1 イヌリン|研究対象の食物繊維素材 | 腸の奥からの健康を考える研究会
(URL: https://cholabo.org/lab/inulin/

※2 食物繊維 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
(URL:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-016.html

※3 短鎖脂肪酸不足と大腸劣化 | 腸の奥からの健康を考える研究会
(URL:https://cholabo.org/lab/deterioration/

※4 【PDF】小嶋良種 吉川豊 安井裕之 小倉哲也「ミネラルの吸収を高めるチコリ及びアガベイヌリン含有食品」FFI JOURNAL, Vol. 217, No.1, 2012
(URL:http://www.mrc-group.co.jp/_userdata/date_01.pdf

※5 【PDF】日本人の食事摂取基準(2020年版)|厚生労働省
(URL:https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586559.pdf

※6 令和元年国民健康・栄養調査|厚生労働省
(URL:https://www.mhlw.go.jp/content/000711006.pdf

※7 イヌリン|国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 「健康食品」の安全性・有効性情報
(URL:https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail565.html

※8 イヌリン :: フジ日本精糖株式会社
(URL:https://www.fnsugar.co.jp/inulin

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