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キトサン

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成分
10秒解説

キトサンは、カニやエビといった甲殻類やきのこ類など多くの生物に含まれる「キチン」に化学処理を施して生成した成分です。コレステロール値の低下や高血圧の予防効果が期待されているほか、生物学や化学、農学など多岐にわたる分野でさまざまな研究が進められています。

こんなお悩み・健康効果に

  • コレステロール値の低下作用
  • 歯周病予防
  • 創傷治癒の促進
  • 腎不全・血液透析患者の高コレステロール血症や貧血の改善
  • 脂肪の蓄積抑制
  • 高血圧予防
  • 便通促進による解毒作用
  • 抗菌作用

キトサンとは

エビやカニ、きのこ類など多くの生物に含まれる注目の機能性成分

キトサンは多糖類の一種。カニやエビ、昆虫、貝類など甲殻類の外側、甲羅や殻の部分に含まれる「キチン」から得られる成分です[※1]。キチンをアルカリ加水分解することで、キトサンへと変化します。キトサンは他にも、きのこ類から抽出される「キノコキトサン」があります。

グルコサミンと呼ばれる糖が複数つながった高分子多糖であるキトサンは、工業用や医療用の素材としてさまざまな用途で利用されています。[※2][※3]

多糖類であり、不溶性食物繊維に分類されるキトサンは、脂肪の吸収を抑えたり血液中のコレステロールや脂質を低下させたりする作用が期待できることから、特定保健用食品(トクホ)の関与成分として許可されています。[※4]

キトサンをさらに加水分解したものが「キトサンオリゴ糖」です。分子量が小さいキトサンオリゴ糖は、水溶性となり体内への吸収も早いという特性があります。

期待される効果・作用

コレステロール値の低下作用

キトサンにはコレステロールの吸収を阻害したり、コレステロールを原料とする胆汁酸を吸着させて体外への排出を促したりする作用があります。

胆汁酸を排出することにより胆汁酸生成のためにコレステロールが利用され、その結果血液中のコレステロール値の低下につながります。

歯周病予防

キトサンアスコルビン酸を、歯肉に直接塗布することで歯周病の治療につながる可能性が、研究により報告されています。[※1]

創傷治癒の促進

キトサンには、創傷治癒を促進したり瘢痕の形成を抑制したりする効果がある可能性が示唆されています。これは、キトサンが免疫細胞として働く好中球やマクロファージなどを活性化する作用を持つためです。[※5]

実際に創傷用ドレッシング材としても製品化されており、外傷の治療のみならず褥瘡の治療に対する効果が期待されています。[※1][※6]

腎不全・血液透析患者の高コレステロール血症や貧血の改善

腎不全や長期にわたり血液透析を受けている方に起こりやすいのが、高コレステロール血症や貧血です。多くの研究により、キトサンにはこれらの症状改善につながる可能性があることが報告されています。[※1]

脂肪の蓄積抑制

キトサンには食事から摂取した脂肪を吸着させ、便中へ排出する作用があります。これは脂肪の吸収を阻害することにつながるため、キトサンにはダイエット効果が期待できると考えられるでしょう。

高血圧予防

食物繊維でもあるキトサンは、過剰摂取すると高血圧の原因となる食塩(NaCl)を吸着させ、体外へ排出する働きがあります。そのため、高血圧の予防効果が期待できる成分であると考えられます。

便通促進による解毒作用

キトサンは、不溶性食物繊維として便通を促進し体内の毒素の排出を助けます。この作用により、体のさまざまな不調を改善してくれると考えられるでしょう。

抗菌作用

キトサンは黄色ブドウ球菌や大腸菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)などの増殖抑制に役立つことが分かっています。[※7]

こんな方におすすめ

食物繊維の一種でもあるキトサンには、さまざまな機能が期待できます。

なかでもコレステロール値が気になる方や、高血圧の予防や改善につなげたいという方にはおすすめの成分です。

また、食事から摂取する脂肪の吸収を抑える効果やデトックス効果により、ダイエットに役立てたいという方も意識して摂取してみると良いでしょう。

キトサンの摂取目安量・上限量などは明確にされていませんが、1日あたり2g程度が適量であるといわれています。[※1]

市販のサプリメントなどでは、1日あたり1g前後が摂取目安量となっているようです。

考えられるリスク・
副作用

キトサン経口摂取する場合、重篤な副作用はないと考えられます。しかし、軽度の胃の不調や便秘などを起こす可能性があります。[※1][※8]

また、キトサンは主に甲殻類の殻から採取されます。そのため甲殻類アレルギーのある方は注意が必要です。通常、甲殻類アレルギーの多くは「殻」ではなく「身」の部分に反応するため、キトサンの摂取については問題ないとされる場合もあります。しかし、症状が出現する可能性も否定できないため、注意しておいたほうが良いでしょう。[※1]

注意が必要な相互作用

キトサンの胆汁酸と結合する作用により、吸収に胆汁酸を必要とする脂溶性ビタミン(A、D、E、K)の吸収が阻害されたり、脂溶性薬剤の効果が減少したりする可能性があります。[※9] また、キトサンを摂取することで、抗凝固剤ワルファリンの血液凝固作用が強まる恐れがあります。紫斑や出血のリスクが高まるため注意が必要です。

キトサンを含むもの

キトサンは主にカニやロブスター、シャコ、エビなどの甲殻類の殻(外骨格)に含まれています。

その他、イカの軟骨や昆虫の外皮、きのこ類の細胞壁などさまざまなものに含まれていますが、厳密にいうとこれらにはキトサンのもととなる「キチン」が含まれているのです。

発見・研究の歴史

1811年、フランスの化学者ブラコノーが初めて西洋きのこからキチンを抽出しました。その後、1823年にオジールが昆虫の上皮細胞から発見し「キチン」(ギリシャ語で「包む」という意味)と名付けました。[※10]

1960年代後半には、廃棄される天然資源の有効活用が推進されたため、カニが水揚げされる北海道や鳥取の大学を中心にキチン・キトサンの研究が始まります。1977年にはキチンやキトサンの抽出法などに関する研究のほか、凝集剤としての利用や創傷治癒促進効果などが学会で発表されていました。

さらに、1982年に札幌で国際会議が行われたことをきっかけに、国内の大学や企業でも広く研究開発が進められ、現在では医療分野など多くの分野で注目される素材となりました。[※11]

キトサンに関する研究情報

【1】高血圧自然発症ラットにおいて、NaCl+キトサンを2ヶ月間投与すると、NaCl+KClおよびNaCl単独投与よりも収縮期血圧を有意に低下させることが確認されました。このことから、NaClとキトサンの組み合わせは、高血圧予防において効果があることが示唆されました
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19461209/

【2】健康な男性8名に3〜6g /日のキトサンを投与したところ、総コレステロール値が大幅に低下し、HDLコレステロールは有意に増加しました。また、胆汁酸の糞便中への排泄量は、キトサン摂取により有意に増加しました。キトサンは消化管内で胆汁酸を結合し、その結合物が糞便中に排泄されることで胆汁酸の再吸収が起こり、血清コレステロール値が減少したと考えられます
https://ci.nii.ac.jp/naid/110002676529/

【3】軽度から中等度の高コレステロール血症の女性(34〜70歳)90人に、キトサン(1日あたり1.2 g)またはプラセボを56日間二重盲検法でランダムに投与し比較したところ、キトサンはプラセボに比べ、総コレステロールを有意に減少させました。また、60歳以上では、キトサンはプラセボに比べ総コレステロールおよびLDLコレステロールを有意に減少させました
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12771974/

【4】糖尿病のない12名の肥満患者に対し、3ヶ月間プラセボまたはキトサン(3回/日、750 mg)を摂取させたところ、キトサン投与群でインスリン感受性が増加しました。また、体重やウエスト周囲径、BMI、TGがプラセボと比較して有意に減少しました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20650346/

参照・引用サイトおよび文献

※1 キトサン|健康食品・サプリ[成分]のすべて(第6判) ナチュラルメディシン・データベース

※2 キチン・キトサンとは|一般社団法人日本キチン・キトサン学会
(URL:http://jscc.kenkyuukai.jp/special/index.asp?id=1930

※3 キチン・キトサン|株式会社キミカ
(URL:https://www.kimica.jp/products/chitosan/

※4 食物繊維 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
(URL:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-016.html

※5 【PDF】蟹取県初!カニ殻由来の新素材「キチンナノファイバー」の実用化に向けた研究|鳥取大学研究推進機構
(URL:https://orip.tottori-u.ac.jp/wp-content/uploads/sustainable/result/Sifuku082020.pdf

※6 東 和生「キチン・キトサンの創傷治癒への応用」|Glycoforum. 2020 Vol.23 (2), A6
(URL:https://www.glycoforum.gr.jp/article/23A6J.html#mokuji02

※7 キチン・キトサンQ&A|一般社団法人日本キチン・キトサン学会
(URL:http://jscc.kenkyuukai.jp/special/?id=1932

※8 【PDF】卜蔵 浩和、小林 祥泰「ヒ トに対するキトサンの長期摂取及び過剰摂取における有効性と安全性の検討―二重盲検比較試験後のフォロー調査―」 | 日本食物繊維研究会誌Vo1.6No,2(2002)
(URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjdf1997/6/2/6_2_61/_pdf/-char/ja

※9 医薬品との併用に注意のいる健康食品 | 一般社団法人 愛知県薬剤師会
(URL:https://www.apha.jp/medicine_room/entry-3755.html

※10 【PDF】キチン・キトサン利用技術|独立行政法人 工業所有権総合情報館
(URL:https://www.inpit.go.jp/blob/katsuyo/pdf/chart/fkagaku19.pdf

※11 瀬尾 寛「キチン・キトサン研究の変遷と今後の展望」|Glycoforum.2019 Vol.22 (2), A6
(URL:https://www.glycoforum.gr.jp/article/22A6J.html

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