マグネシウム
こんなお悩み・健康効果に
- エネルギー代謝酵素の活性化
- 骨の健康維持
- 生活習慣病予防
マグネシウムとは
ミネラルは、私たちの体にとって必要不可欠な成分です。自然界には多くのミネラルが存在しますが、中でもヒトの体にとって必要であると明らかになっている16種類は「必須ミネラル」と呼ばれており、その中の一つがマグネシウムです。[※1]
マグネシウムは体内の300種類以上もの酵素の働きを活性化させ、生命維持に必要なさまざまな代謝に関与している成分です。体内のマグネシウムの約6割が骨や歯に存在し、リンやカルシウムとともに骨を形成する役割を担っています。残りは筋肉や脳、神経などにあり筋肉の収縮や神経伝達、体温や血圧の調整に関わっています。[※2]
食品から摂取されたマグネシウムは主に小腸で吸収され、腎臓で排泄されます。マグネシウムが不足すると、腎臓からの再吸収が促されたり骨からの放出が行われたりすることで、血清中のマグネシウム濃度は一定に保たれるようになっています。[※3]
これまであまり注目されてこなかったマグネシウムですが、じつは日本人に不足しがちな成分のひとつです。戦後、日本人の食生活は大きく変化し、穀物類、とくに玄米など精白度の低い米や大麦、雑穀などの摂取量が減りました。このことが、現代の日本人がマグネシウム不足傾向にある原因であると考えられています。[※4]
期待される効果・作用
エネルギー代謝酵素の活性化
さまざまな代謝に関与しているマグネシウム。特にエネルギー産生に深く関わっており、糖質や脂質の代謝などで「生体のエネルギー通貨」と呼ばれるATPの産生に重要な役割を果たしています。
骨の健康維持
骨の健康にはカルシウムやリン、ビタミンDやビタミンKなどが関与していますが、マグネシウムもその役割を担う成分のひとつです。
生活習慣病予防
マグネシウムと生活習慣病の関係についてはさまざまな研究が行われており、その関連性が報告されています。マグネシウム不足を解消することは、高血圧や糖尿病、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病の予防につながる可能性が示唆されています。[※5]
こんな方におすすめ
マグネシウムは、人間にとって必要不可欠なミネラルの一つであるため、不足しないよう十分摂取することが必要です。虚血性心疾患や生活習慣病の予防とも関連があるため、さまざまな疾患の発症リスクを減らし、健康を保ちたいと考える多くの方に役立つ成分であるといえるでしょう。
また、マグネシウムは機能性便秘との関連性も示唆されているため、十分に摂取することで便秘の解消に役立つ可能性があります。[※6]
摂取目安量・上限目安量
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、成人1日当たりのマグネシウム摂取推奨量を男性320~370mg、女性260~290mg(妊娠中の方:+40mg)と定めています。[※3]
通常の食事での過剰摂取による健康被害の報告はないため、耐容上限量の設定は設けられていません。しかし、サプリメントなどからの摂取量については、成人で1日に350mg、小児は1日に体重1kg当たり5mgと制限されています。[※3]
日本人が実際に摂取しているマグネシウム量を「令和元年度国民健康・栄養調査」の結果から確認してみると男性261mg、女性235mg(どちらも1日当たりの摂取量の平均値)となっています。[※7]
食事摂取基準の数値と比較してみると、男女とも基準量には達しておらず不足傾向にあることが分かります。
考えられるリスク・
副作用
通常の食生活を送っていればマグネシウムを摂り過ぎてしまう心配はありません。もし過剰摂取してしまった場合でも、健康な人であれば余分なマグネシウムは腎臓で排出されます。ただし、サプリメントや薬からでマグネシウムを摂り過ぎてしまうと下痢を起こす可能性があるため、注意が必要です。[※2]
さらに、腎機能が低下していると高マグネシウム血症を発症しやすくなり、吐き気や血圧低下、徐脈などの症状が現れることがあります。[※8]
また、マグネシウムが不足してしまった場合は骨の形成不全や骨粗鬆症、神経・精神疾患、不整脈や心疾患、筋肉の痙攣などを引き起こすことが知られています。[※2]
一般的な食生活を送っている方であればあまり心配する必要はありませんが、生活習慣病などの疾患予防も期待されている栄養素であるため、十分な摂取を心掛けましょう。
マグネシウムを含む食べ物
マグネシウムは魚介類、藻類、穀類、野菜類、豆類、種実類などに多く含まれています。
マグネシウムを多く含む食品には以下のようなものがあります(可食部100g当たりの含有量)。[※9]
魚介類・藻類
- カットわかめ 460mg
- 焼きのり 300mg
- あさり(生) 100mg
- きんめだい(生) 73mg
- くろまぐろ(赤身・生) 45mg
- サバ缶(水煮) 31mg
マグネシウムは肉よりも魚に多く含まれています。そのため、マグネシウムの摂取量を増やしたいという方は、魚料理を食べる機会を増やすというのも一つの手です。
穀類・野菜類
- 切り干し大根(乾) 160mg
- 玄米 110mg
- あわ 110mg
- 落花生(未熟豆・生) 100mg
- きび 84mg
- ほうれんそう(生) 69mg
- そば(生) 65mg
- 枝豆(生) 62mg
米を生成する際に取り除かれる「ぬか」の部分にマグネシウムが多く含まれています。そのため、精白度の低い玄米などにするとマグネシウムの摂取を増やすことができるでしょう。また、「あわ」や「ひえ」などの雑穀類にもマグネシウムが多いため、米に雑穀を混ぜた「雑穀ご飯」にしてもマグネシウムを摂取することができます。
豆類・種実類
- ごま(いり) 360mg
- アーモンド(フライ・味付け) 270mg
- カシューナッツ(フライ・味付け)240mg
- 油揚げ 150mg
- くるみ(いり) 150mg
- 糸引き納豆 100mg
- がんもどき 98mg
- 木綿豆腐 57mg
マグネシウムはナッツ類や大豆製品などにも豊富に含まれているため、マグネシウム不足が気になる方は意識して摂取してみましょう。
なお、マグネシウムはカルシウムと同時に摂取することで相乗効果を発揮し、骨や歯の健康を維持することに役立ちます。
発見・研究の歴史
マグネシウムは1808年にH.デーウィによって発見されたといわれています。ヒトを含めた地球上の動植物に存在するほか、鉱石や海水、鉱泉など自然界に多量に分布しており、金属としてのマグネシウムは1886年に商業的に生産されるようになりました。[※10]
一方、栄養素としてのマグネシウムはというと、同じミネラル類のカルシウムや鉄の研究が古くから行われてきたことを考えれば、研究対象としては扱いにくい分野だったようです。マグネシウムは酵素の働きを手助けする「補酵素」の役割を担う重要な成分であるにも関わらず、研究対象としてマイナーな存在であった理由は、カルシウムや鉄などのように体の機能に直接はたらく作用をもっていなかったことが考えられます。[※11]
その後、研究が進み、厚生労働省「日本人の食事摂取基準」にもマグネシウムの食事摂取基準が定められるようになるほど重要度の高い栄養素となりました。さらに、マグネシウムは各種疾患の発症リスクとの関連が明らかになるなど、不足しないように摂取することの重要性に注目が集まっています。
マグネシウムに関する研究情報
【1】食事性マグネシウム摂取量の増加は、日本人、特に女性の心血管疾患による死亡率の低下と関連していました
【2】透析液マグネシウム濃度が高いと血清マグネシウム濃度が上昇し、こむら返りの頻度と重症度を軽減する可能性があることが示唆されています
【3】eGFRの低下は、HbA1cレベルの上昇、低マグネシウム血症、およびALTの低下と関連していました。また、微量または顕性タンパク尿の新たな出現は、HbA1c高値、加齢、低マグネシウム血症および高トリグリセリド血症と相関がみられました
【4】4か月以上のマグネシウム補充は、糖尿病患者と非糖尿病者の両方で、インスリン抵抗性の程度を示すHOMA-IR指数と空腹時血糖値を有意に改善します
【5】マグネシウムサプリメントがインスリン抵抗性、糖尿病予備軍または他の非感染性慢性疾患患者の血圧を有意に低下させることを示唆しています
成分
10秒解説
マグネシウムは、体内で約300種類もの酵素のはたらきをサポートする、生命維持に不可欠な成分。骨や歯の形成に関わるなど、体の機能を調整し、健康を保つための重要な働きをしています。マグネシウムは日本人に不足しがちなミネラルの一つであるといわれています。