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クロム

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成分
10秒解説

クロムは糖質や脂質、たんぱく質などの代謝に関与するミネラルで、成分は糖尿病や脂質異常症、動脈硬化などの生活習慣病の予防に効果が期待されています。わずかな量でも健康維持に必要であることから「微量ミネラル」と呼ばれています。

こんなお悩み・健康効果に

  • 2型糖尿病の改善
  • 動脈硬化の予防
  • ダイエット効果
  • 過食性障害やうつ症状の改善

クロムとは

体に不可欠な栄養素の代謝に関わる微量ミネラルの一種

自然界や人体に存在する、元素番号24、元素記号Crの銀白色の金属がクロムです。通常3価クロム、6価クロムとして存在しており、食品やサプリメントに含まれるのは3価クロムです[※1]。クロムは「クロミニウム」「塩化クロム」「塩素クロム」「ニコチン酸クロム」「ピコリン酸クロム(クロミウムピコリネート)」などさまざまな呼び名があります[※2]。

ごくわずかな量でも人体の健康維持に重要な役割を担うことから「微量ミネラル」と呼ばれ、糖質や脂質、たんぱく質の代謝に関わっています。このような作用から、クロムには血糖値や血中脂質への影響が示唆されており、減量をしたい人や糖尿病のある方などから注目を集めています。

期待される効果・作用

2型糖尿病の改善

2型糖尿病の方がクロムを摂取することにより、インスリンの働きを促し血糖値を改善させる可能性があることが示唆されています。

これは3価クロムイオンが結合したクロモデュリンというオリゴペプチドの作用によるものです。このクロモデュリンが、インスリン受容体のチロシンキナーゼを活性化させることにより、インスリンの働きを強めるとかんがえられています。[※1]

動脈硬化の予防

1日当たり15~200μgのクロムを6~12週間摂取する研究により、LDLコレステロール値および総コレステロール値を低下させる作用が示唆されました。この作用により期待される効果が、動脈硬化の予防です。

また、7~16ヶ月もの間クロムを摂取することで、LDLコレステロール値が低下しHDLコレステロール値が増加することも示唆されています[※2]。

ダイエット効果

クロムには糖代謝や血中脂質を改善する作用があることから、ダイエットに効果があるのではないかと考えられています[※3]。

過体重(BMI25~29.9)および肥満(BMI30以上)の方を対象に8~24週間クロムを投与した研究では、プラセボと比較して体重が1kg前後減少したことが報告されています。しかし、この研究を含めダイエット効果に関する十分なデータはまだ得られていません。

過食性障害やうつ症状の改善

クロムを経口摂取することで、過食性障害やうつ病の症状が改善される可能性があると考えられていますが、化学的データは不十分です。むしろ症状が悪化する恐れもあるとされているため、十分に注意する必要があります[※2]。

こんな方におすすめ

糖尿病の方やLDLコレステロール値が高めの方は、クロムを摂取することで症状の改善が見られる可能性があるでしょう。

ただし、経口血糖降下薬やインスリンで治療を行っている方は低血糖を招く危険性があるため、サプリメントなどでクロムを摂取したい場合には、主治医の指示を仰ぐ必要があります。

厚生労働省では、3価クロムとしての食事摂取基準が設けられています[※1]。

  • 【乳児0~5ヶ月】目安量:0.8μg/日
  • 【乳児6~11ヶ月】目安量:1.0μg/日
  • 【成人男女】目安量:10μg/日 耐容上限量:500μg/日

なお、小児および妊娠中・授乳中の方についての摂取目安量は設けられていません。

考えられるリスク・
副作用

クロムの経口摂取は、ほとんどの場合において安全だと考えられていますが、サプリメントなどの摂取により過剰摂取を招く可能性もあるため、注意が必要です。

副作用についてはあまり研究されていませんが、まれに皮膚の過敏、頭痛やめまい、吐き気、気分の浮き沈みなどが生じる可能性があるようです。

医薬品や健康食品などとの相互作用

経口血糖降下薬(グリメピリド、グリベンクラミド、インスリン、メトホルミン塩酸塩、ピオグリタゾン塩酸塩など)やインスリンをクロムの摂取と併用した場合、低血糖を招く危険性があります。

また、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やビタミンCのサプリメントなどとの併用により、クロムの血中濃度が上昇します。このことは副作用を招く原因となる可能性もあるでしょう[※2]。

その他、以下のような相互作用が起こる可能性があります[※2]。

  • レボチロキシンナトリウム水和物(クロムによって吸収量が減少)
  • 鉄(クロムによる利用阻害)
  • 亜鉛(クロムを同時に摂取することで、双方の吸収量が低下)

クロムを含む食べ物

クロムは以下のような食品に多く含まれています[※4]。

  • あおさ(素干し)    160μg/100g
  • アサイー(冷凍/無糖)  60μg/100g
  • あおのり(素干し)    39μg/100g
  • てんぐさ(粉寒天)    39μg/100g
  • 刻み昆布         33μg/100g
  • ひじき(乾)       26μg/100g
  • あさり(生)       4μg/100g
  • ほたてがい(貝柱/生)  3μg/100g

発見・研究の歴史

クロムは1797 年、フランスの化学者ルイ・ニコラ・ヴォークランによって発見されました[※5]。

1950年代には微量のクロムが人体にとっ て必要な成分であることが発表されるようになり、動物実験においてもクロムの投与が糖尿病の症状を改善させることが報告されています[※6]。

その後も数多くの研究が行われ、クロムは糖代謝に関与する重要な役割を担うミネラルであることが示唆されています。

クロムに関する研究情報

【1】ストレプトゾトシン誘発糖尿病動物に、ピコリン酸クロムを1日1 mg/kg4週間投与した結果、肝臓の解糖系酵素の活性上昇と糖新生酵素の活性抑制により血糖値の低下がみられることが確認されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22287284/

【2】糖尿病ラットにピコリン酸クロムを投与することでLDLコレステロールおよびVLDLコレステロールを正常化し、総コレステロール/HDL比およびHDL/LDL比を改善させました。また肝臓における糖代謝の正常化もみられました。この実験により、ピコリン酸クロムは、糖尿病および糖尿病に合併する脂質異常症の改善に役立つことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22650796/

【3】6週から24週までの雄の肥満糖尿病マウスにピクリン酸クロムを与えたところ、血圧やクレアチニンクリアランスに影響を与えることなく、血糖値とアルブミン尿に緩やかな改善が確認されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21959055/

【4】26人の高齢者に12週間ピコリン酸クロムを投与し、クロムの摂取が認知機能低下のある高齢者の記憶と神経機能を改善するかどうかの評価を試みました。その結果、ピコリン酸クロムには、認知機能の低下抑制や脳機能を強化することが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20423560/

参照・引用サイトおよび文献

※1 【PDF】日本人の食事摂取基準(2020年版)微量ミネラル|厚生労働省
(URL:https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586568.pdf

※2 クロム|健康食品・サプリ[成分]のすべて(第6判) ナチュラルメディシン・データベース

※3 Tian H et ai.「Chromium picolinate supplementation for overweight or obese people」|Cochrane
(URL:https://www.cochrane.org/ja/CD010063/ENDOC_guo-ti-chong-matahafei-man-noren-nidui-surupikorinsuan-kuromubu-chong

※4 日本食品標準成分表2020年版(八訂)
(URL:https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_01110.html

※5 【PDF】24Cr クロム|豊田工業大学クラスター研究室/株式会社コンポン研究所東東京研究室
(URL:https://www.clusterlab.jp/2012/images/egashira/24Cr.pdf

※6 【PDF】不破 敬一郎「人体における微量元素の役割」|鉄と鋼 Vol. 79 (1993) No. 10
(URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/tetsutohagane1955/79/10/79_10_N716/_pdf

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