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アラキドン酸

アラキドン酸アイコン

成分
10秒解説

アラキドン酸は、不飽和脂肪酸のn-6(オメガ6)系脂肪酸に分類され、必要量を満たすためには食事からの摂取が必要な「必須脂肪酸」です。アラキドン酸には、高齢者の認知機能の向上や免疫機能の維持などの効果も期待されています。乳児の脳の発達にも欠かせない成分であり、粉ミルクにも配合されています。

こんなお悩み・健康効果に

  • 高齢者の認知機能の維持
  • 免疫機能の維持
  • 精神疾患予防効果

アラキドン酸とは

脳の機能や免疫機能を正常に保つことへの関与が期待される必須脂肪酸

アラキドン酸は、n-6(オメガ6)系脂肪酸に分類される多価不飽和脂肪酸の一種です。

「不飽和脂肪酸」には「一価不飽和脂肪酸」と「多価不飽和脂肪酸」があり、多価不飽和脂肪酸はさらに「n-3系脂肪酸」と「n-6系脂肪酸」に分類されます。n-3系脂肪酸にはα-リノレン酸、DHA(ドコサヘキサエン酸)、IPA・EPA(イコサペンタエン酸・エイコサペンタエン酸)、n-6系脂肪酸にはリノール酸やアラキドン酸があります。このうちα-リノレン酸、リノール酸、アラキドン酸は人体で生成できない、もしくは必要量に満たないため、食物から摂取しなければいけません。そのため、この三つの脂肪酸を「必須脂肪酸」と呼んでいます。[※1]

アラキドン酸は、体内で同じn-6系脂肪酸であるリノール酸からつくられますが、人体での必要量が多いため、必須脂肪酸とされています。

体内で生体膜の構成成分となる他、脳や皮膚などあらゆる組織に存在するアラキドン酸。特に脳においては記憶との関連が深く、加齢による認知機能の維持などが注目されています。また、アラキドン酸は乳児の脳の発達を促す成分として、粉ミルクにも十分な量が配合されるようになった成分でもあります。[※2]

期待される効果・作用

高齢者の認知機能の維持

アルツハイマー型認知症および軽度認知機能障害のある方にDHAとアラキドン酸を同時に投与することで、認知機能が有意に改善したと報告されています[※3]。アラキドン酸は脳の海馬を中心に多く存在しており、脳機能に良い影響を与えるとされるDHAとともに摂取することで、記憶力や学習能力を高める可能性があります。

また、アラキドン酸は乳児の知能発達を促す成分として、DHAとともに粉ミルクに配合されるようになりました。

免疫機能の維持

アラキドン酸には、免疫機能を維持する効果が期待できるといわれています。

アラキドン酸の代謝物のひとつである「プロスタグランジン」は、生体調節ホルモンであり、血圧の調整や機関誌の筋収縮、免疫系統の調整などの役割を担っています。

プロスタグランジンの作用により血圧を正常に保つなどの効果が期待できるほか、プロスタグランジンのひとつであるPGE2にはさまざまな免疫細胞の活性化を制御しています。特にTh1細胞の抑制に関与するとされているため、Th1細胞/Th2細胞のバランスと免疫疾患の関係への関与も注目されています。[※4]

精神疾患予防効果

動物実験により、脳の発達が盛んな時期に多価不飽和脂肪酸、とくにDHAとアラキドン酸の摂取不足が起こると、統合失調症の発症リスクが高まる可能性があることが分かりました。[※5]

思春期以降での発症が主である統合失調症は、遺伝に加え環境要因が関わっています。食事からアラキドン酸およびDHAを十分に摂取できる環境づくりが、精神疾患の予防につながる可能性があるといえるでしょう。

こんな方におすすめ

アラキドン酸は必須脂肪酸です。生体膜の構成成分となるため、人体で生合成される量では必要量を補えません。そのため、すべての方が食事から十分摂取すべき成分です。

アラキドン酸は、肉類や魚介類、卵類などに多く含まれています。ただし、アラキドン酸を多く摂取しようとすると、脂質の摂取過剰になりかねないので、栄養バランスの良い食事を意識しましょう。[※6]

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、アラキドン酸を含むn-6系脂肪酸の摂取目安量が公表されていますが、アラキドン酸そのものの摂取目安量や上限量は定められていません。[※7]

日本人の食事摂取基準(2020年版)によるn-6系脂肪酸の摂取目安量は、年代や性別によって異なりますが30〜69歳の男性で1日10g、18〜74歳女性で1日8gです。

また、アラキドン酸は胎児や乳児の発育に重要な成分であることから、妊娠中の方は1日9g、授乳中の方で1日10gとなっています。

考えられるリスク・
副作用

アラキドン酸を含むn-6系脂肪酸は、通常の食事として1日のカロリーの5~10%で摂取する分には、ほとんどの場合安全であるようです[※8]。例えば1日2,000kcal摂取する場合、n-6系脂肪酸として100~200kcal、つまり1日あたりの摂取量が約11~22gであれば安全な摂取量であるといえるでしょう。

n-6系脂肪酸の過剰摂取は、血中中性脂肪値の上昇につながります。また、高中性脂肪血症のある方は、n-6系脂肪酸を摂取してはいけません。

サプリメントから摂取しようとする場合は、1日当たりの摂取目安量を守りましょう。

アラキドン酸を含む食べ物

アラキドン酸は卵、豚肉(レバーなど内臓肉を含む)、まぐろ、さば、ウニなどに多く含まれています[※6]。また、アラキドン酸は体内でリノール酸からつくられます。そのため、リノール酸が多く含まれるごま油や亜麻仁油、くるみ、落花生、アーモンドなどを摂取することでもアラキドン酸を得ることができるといえるでしょう。

なお、アラキドン酸同様、脳への健康効果が知られる脂肪酸としてDHAやEPA(IPA)があります。これらの成分を一緒に摂取することで相乗効果が得られる可能性があります。DHAやEPA(IPA)は、さばやまぐろなど青魚に豊富に含まれています[※6]。

発見・研究の歴史

アラキドン酸が発見されたのは1909年のことです。肝蔵、腎蔵、心臓から抽出した脂肪酸には、脂肪組織よりも不飽和度の高い脂肪酸が含まれることが明らかになり、その中に炭素20 個で二重結合を4個もつ不飽和脂肪酸が単離されました。これが、のちにアラキドン酸(arachidonic acid) と命名されます。[※9]

1950年代には飽和脂肪酸の摂取で血清コレステロール値が増加し、冠動脈疾患の発症リスクを増加させることが知られるようになりましたが、食事中の飽和脂肪酸を不飽和脂肪酸に置き換えると、顕著にコレステロール値が減少し冠動脈疾患の発症抑制につながることなどが報告されるようになりました。[※10]

高齢化社会が進むなか、アラキドン酸は高齢者にとって「脳の栄養素」として注目されています。また、免疫機能の維持や精神疾患の予防効果など、アラキドン酸の今後の研究には大きな期待が寄せられています。

アラキドン酸に関する研究情報

【1】野生型のラットを生後4週までアラキドン酸を含む餌を与えて飼育し、神経新生の様態を解析しました。その結果、アラキドン酸は神経新生を向上させ、精神疾患様行動を改善する可能性があることが示されました。
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20090408/index.html

【2】高齢者の脳の働き(認知機能)に重要な役割を果たすことが明らかにされているアラキドン酸(ARA)ですが、加齢により生成能力が低下することが明らかとなりました。ARAを生成する酵素はDHAやEPAとも共通しているため、これらを生成する能力も加齢により低下すると考えられます。加齢による認知機能の低下予防には、ARAやDHA、EPAの摂取を意識することが大切です。
https://www.suntory.co.jp/news/article/12740.html?rss=0000000029

【3】日本の高齢者を対象に、アラキドン酸(ARA)サプリメントの摂取が心血管疾患、炎症性疾患、アレルギー性疾患に関与するかどうかを調査したところ、比較的高用量であっても、ARA代謝物は増加しないという結果が報告されました。これは、日本人の高齢者がARAサプリメントを摂取しても、心血管疾患や炎症性疾患、アレルギー性疾患を誘発しないことを示唆しています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22188761/

参照・引用サイトおよび文献

※1 必須脂肪酸[essential fatty acid] | ニュートリー株式会社
(URL:https://www.nutri.co.jp/nutrition/keywords/ch2-4/keyword2/

※2 赤ちゃんの脳の発達を促すアラキドン酸って!? | 一般財団法人 日本educe食育総合研究所
(URL:https://www.educe-shokuiku.jp/news/child-care/arachidonic-acid/

※3 【PDF】下方 浩史「認知症の要因と予防」|名古屋学芸大学健康・栄養研究所報 第7号 2015年
(URL:https://www.nuas.ac.jp/IHN/report/pdf/07/02.pdf

※4 黒田 悦史, 山下 優毅「プロスタグランジンによる免疫反応の調節」| Journal of UOEH/24 巻 (2002) 3 号
(URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/juoeh/24/3/24_KJ00001658419/_article/-char/ja/

※5 発達期の脂肪酸不足が統合失調症発症に関連 | 理化学研究所
(URL:https://www.riken.jp/press/2017/20170905_2/

※6 日本食品標準成分表2020年版(八訂)|文部科学省
(URL: https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_01110.html

※7 【PDF】日本人の食事摂取基準(2020年版)|厚生労働省
(URL:https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586558.pdf

※8 n-6系脂肪酸|健康食品・サプリ[成分]のすべて(第6判) ナチュラルメディシン・データベース

※9 【PDF】山本 尚三「日本におけるアラキドン酸代謝の研究(1)」|ビタミン 92 巻 8 号(8 月)2018
(URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/vso/92/8/92_359/_pdf

※10 【PDF】石川 俊次 野口 律奈「食事飽和脂肪酸・コレステロールと動脈硬化ー最近の考え方」|オレオサイエンス 第12巻第3号(2012)
(URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/oleoscience/12/3/12_99/_pdf/-char/ja

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