タウリン
こんなお悩み・健康効果に
- 肝機能の強化
- 血圧の正常化
- 血中コレステロール値の低下
- 動脈硬化の予防
- 糖尿病の予防
- 目の機能維持
タウリンとは
タウリンは、たんぱく質分解の過程で作られるアミノ酸様物質の一種。さまざまな動植物の生体中に含まれる成分ですが、特に多く含まれているのがタコやイカ、貝類などの魚介類です。[※1]
タウリンは人間の筋肉や脳、肺、骨髄などの組織にも存在し、浸透圧調整や抗酸化作用を介した免疫機能の維持など、生命維持に欠かせない働きを担っていると考えられています。[※2][※3]
さらに、血液中のコレステロール値や血圧を低下させたり肝機能を強化したりする作用など、さまざまな効果が期待されています。
その他、タウリンは胎児の正常な脳の発達にも必須の成分であると考えられています。妊娠中に母体から胎児へのタウリンの移行量が低下してしまうと、胎児の脳の発達に異常をきたしてしまう可能性があることが確認されました。また、タウリンは母乳中にも含まれ、乳児の発育にも重要な役割を果たしています。タウリンは体内でも作られる成分ですが、必要量を満たすためには食べ物からの摂取が必須です。そのため、妊娠期、周産期、授乳期において適切にタウリンを摂取できるようにすることが重要です。[※4]
タウリンはドリンク剤などに配合されている成分として知られていますが、化粧品やシャンプーなどにも添加されています。これらの製品には化学合成されたタウリンが使用されています。[※3]
期待される効果・作用
肝機能の強化
タウリンには、肝細胞を保護したり働きを活性化したり、胆汁酸の体外への排出を助けたりすることで、肝機能を正常に保つ作用があります[※5]。その結果、アルコール分解など肝臓の解毒機能が強化されるため、アルコール性の肝障害や脂肪肝などに効果を示す可能性があると考えられています。[※1]
血圧の正常化
タウリンには自律神経を整える、つまり交感神経と副交感神経のバランスを整えることで血圧を正常に保つ作用があります。ストレスなどで交感神経が優位に働くことにより上昇した血圧を低下させ、正常に維持する作用が期待できます。
血中コレステロール値の低下
タウリンが胆汁酸と結合することでコレステロールを体外へ排出し、血液中のコレステロール値を低下させる作用があります。[※6]
これはタウリンのLDLコレステロールを低下させ、HDLコレステロールを増やす作用にあるとされています。この作用により、コレステロールの過剰によって形成される胆石もタウリンによって抑えることができるとされています。[※7]
動脈硬化の予防
タウリンには、LDLコレステロール低下作用やHDLコレステロール上昇作用があり動脈への脂質の蓄積が抑制されることから、動脈硬化の予防が期待できると考えられています。
糖尿病の予防
タウリンには、インスリンの分泌促進やインスリン感受性を高めることで、糖尿病予防の効果が期待できる可能性があります。[※1][※8]
目の機能維持
タウリンには目の組織を活性化し、疲れ目や眼病の回復を促す作用があります[※7]。また、酸化ストレスを抑制したり網膜組織を保護したりといった効果が期待できると考えられています。[※10]
こんな方におすすめ
タウリンは、お酒を飲む方など肝機能が気になる方のほか、コレステロール、血糖値が気になる方におすすめの成分であるといえるでしょう。実際に、健診などで肝機能の数値やコレステロール値、血糖値が正常値を超えてしまったり脂肪肝を指摘されたりした方にも、積極的に取り入れてみていただきたい成分でもあります。
血圧に関しては、ストレスなどで高血圧を生じている可能性が考えられる方は、タウリンの摂取が効果的です。また、疲れ目などの症状がある方も、点眼薬としてタウリンを取り入れてみるのもおすすめです。
摂取目安量・上限目安量
厚生労働省「日本人の食事摂取基準」では、1日当たりのタウリンの摂取目安量や上限量などは定められていません。
しかし、日本人を対象とした調査や疫学調査、ヒト試験の結果から1日300gのタウリンを摂取することで、生活習慣病などが抑制されることが期待できると考えられています。[※3]
考えられるリスク・
副作用
タウリンは水溶性の成分であり、過剰摂取した場合でも速やかに尿中へ排泄されます。体内へ蓄積されることはないため、過剰症の心配はないと考えられるでしょう。[※3]
しかし、医薬品として摂取した場合の副作用として悪心、下痢、腹部不快感、発疹などが現れることがあります。[※5]摂取後、体調に異変が生じた場合は速やかに医療機関へ相談しましょう。
タウリンを含む食べ物
体内でも作られるタウリンですが、合成量は少ないため食べ物から摂取する必要があります。タウリンはカキ、ハマグリ、アサリ、ホタテ、イカ、タコ、カニ、エビなどの魚介類に多く含まれています。[※11]
肉類では、牛や豚のタン(舌)やマメ(腎臓)、ハラミやサガリ(横隔膜)などといった内臓肉にもタウリンが多く含まれています。[※12]
タウリンは水溶性のため、調理法によっては損失してしまう可能性の高い成分です。そのため、煮汁ごと食べるスープや鍋物などがタウリンを効率よく摂取する調理方法であるといえるでしょう。
また、コレステロールによって形成される胆石の予防には、タウリンとともにビタミンCや食物繊維の摂取も重要です。食物繊維、特に水溶性食物繊維にはコレステロールの吸収を抑えたり体外へ排出したりする作用があるため、タウリンとの相乗作用が期待できるといえるでしょう。ビタミンCは胆汁酸の分泌を促進し、胆石が形成されないような役割を担う成分であるといえます。
発見・研究の歴史
タウリンは1827年に牛の胆汁酸から発見されました。そのことに因み、雄牛を表す「タウルス(Taurus)」からタウリンと名付けられたといいます。[※3]
しかし、当時は体内での働きは不明で、タウリンの機能性などについての研究が本格的に行われるようになったのは今から数十年前であったといわれています。研究が進められるなかで分かったことは、漢方など古くからタウリンの薬効が利用されていたことでした。[※13]
現在では生活習慣病や眼病予防の可能性も見出されており、注目されている成分のひとつとなっています。
タウリンに関する研究情報
【1】精巣上体管内腔液からタウリンを吸収することで雌の生殖器道に侵入した際の浸透圧的ストレスに対する耐性を獲得するというメカニズムで、精子の機能性が改善されることが分かりました
【2】タウリンは長時間の運動、特に高強度の運動に有効な薬剤である可能性が示唆されました。また、トレーニングを行う前に低用量のタウリン(0.05g)を摂取することで、筋疲労を軽減するなどの作用があることがを確認されました
【3】タウリンは、網膜変性を引き起こすミトコンドリア遺伝子変異を持つ患者由来のiPS細胞を用いた研究において、酸化ストレス亢進を防ぎ細胞の増殖と生存を維持し、網膜変性を抑制することが分かりました
【4】肝硬変患者にタウリンを経口投与し血中タウリン濃度を高めることで、痛みを伴う筋肉痙攣の出現頻度を減少させました
【5】点眼薬の有効成分であるタウリンとビタミンAを組み合わせることで、角膜幹細胞を酸化ストレスから保護する効果が得られることが明らかになりました
成分
10秒解説
タウリンはいろいろな動物の体内組織に存在している物質。特にタコやイカ、貝類などの魚介類に多く含まれ、血液中の脂質や血圧を低下させたり肝機能を高めたりする作用などが期待されています。タウリンは医薬品として使用される成分に区分されているため、食品には添加できない成分です。