アルギニン
こんなお悩み・健康効果に
- 成長ホルモンの分泌促進
- 体内の活力アップ
- アンモニアの解毒作用
- 免疫反応の促進
- 血流改善効果
- 運動能力の向上
- 美肌・ヘアケア効果
- ダイエット効果
アルギニンとは
アルギニンは、人体の構成成分となる20種類のアミノ酸のひとつです。
アミノ酸は体内合成できない「必須アミノ酸」と体内で合成できる「非必須アミノ酸」に大別されます。アルギニンは非必須アミノの一つですが、乳幼児や成長期の子供などでは十分に合成できないため、食べ物などから摂取することが望ましいとされています。
アルギニンには、成長ホルモンの分泌を促す作用や病原菌・ウイルスに対する抵抗力を高める作用、TCAサイクルを活性化しATPの産生をスムーズにする作用など、さまざまな効果が期待できることが知られています。
期待される効果・作用
成長ホルモンの分泌促進
アルギニンには、脳下垂体を刺激し成長ホルモンの分泌を促す作用があります。10代をピークに最も分泌が高まり、脂肪の代謝を促進し筋肉を強化する働きにより、成長期の子供の体を大きくします。
[※1][※2]加齢に伴い分泌が低下する成長ホルモンですが、大人にとっては傷の修復や疲労回復など、健康を維持するために不可欠な成分です。
体内の活力アップ
アルギニンは、生命活動に必要なエネルギー源である「ATP(アデノシン三リン酸)」の再生に関わっているアミノ酸です。
神経や筋肉などでは「クレアチンリン酸」としてエネルギーを貯蔵しており、活動時にクレアチンリン酸からATPを再合成します。この重要なエネルギー貯蔵物質であるクレアチンリン酸は、アルギニンから代謝されることが分かっています。
アルギニンによりエネルギーの産生がスムーズに進むことで、体内の活力アップに役立っていると考えられているのです。[※1]
アンモニアの解毒作用
アルギニンは、肝臓内でアンモニアを代謝する「オルニチン回路(尿素回路)」に関与している成分です。[※3]
アンモニアは、エネルギー産生に関わるTCAサイクルを阻害することが分かっています。このことから、アルギニンはクレアチンリン酸の代謝に関与しているだけではなく、アンモニアの分解を促進するという点においても、エネルギー産生をスムーズにしている成分であると言えるのです。
免疫反応の促進
生体内で、一酸化窒素(NO)の産生に関わっているアミノ酸がアルギニンです。
アルギニンは一酸化窒素を通して、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)などの免疫細胞が細菌やウイルスなどを攻撃する力を高める作用があるとされています。[※1]
血流改善効果
アルギニンを摂取することで、血流を調整する機能が改善することが分かっています。[※1]
生体内で産生され、血管をしなやかに保つ役割を担っているのが一酸化窒素ですが、この一酸化窒素の産生に関わるアミノ酸がアルギニンです。アルギニンにより一酸化窒素の産生が高まると、血管拡張が起こり血流を改善させます。
血流が改善することで、以下のような効果が期待できると考えられています。
- 動脈硬化予防
- 高血圧・心疾患予防
- 男性機能の改善
運動能力の向上
アルギニンの摂取により期待されるのが、成長ホルモンの分泌促進による筋肉増強、一酸化窒素の産生促進による持久力の向上効果です。特に一酸化窒素の産生に関しては、運動前にアルギニンを摂取することで期待できる効果であるとされています。
また、アルギニンはエネルギー産生をサポートしてくれる成分でもあるため、運動後の筋肉痛や疲労の軽減にも役立つとされています[※1]。
美肌・ヘアケア効果
アルギニンは、肌の角質層において水分を保持する働きを持つ「天然保湿因子」の構成成分となっています。そのため、肌に潤いを与える保湿作用も期待されています。
また、毛髪のダメージによるパサつきの改善にも重要な役割を持っている成分であると考えられています。[※4]
ダイエット効果
アルギニンが分泌促進に関与している成長ホルモンには、脂肪燃焼作用があります。そのため、アルギニンにもダイエット効果が期待できると言えるでしょう。
こんな方におすすめ
アルギニンは、体内で合成できる非必須アミノ酸の一つです。
しかし、乳幼児や成長期の子供、術後など体に大きな負担がかかり体力消耗が激しい場合などにおいては、合成が追いつかなかったり十分に合成できなかったりすることがあります。特に成長期の子供にとっては、食事などからの摂取が必要とされる「準必須アミノ酸」と位置付けられており、アルギニンをしっかり摂取するためにもたんぱく質が不足しないような食事の工夫が大切です。
大人では「疲労感が強い」「活力をアップしたい」「免疫力をつけたい」など、日常的に気になる症状がある場合には、積極的にアルギニンを含む食品を摂ったりサプリメントなどを利用したりするのも良いでしょう。
また、スポーツをする方などは、パフォーマンスアップのために運動前にアルギニンを摂取することも有効であるとされています。
摂取目安量・上限目安量
厚生労働省では、アルギニンをはじめとしたアミノ酸の摂取目安量・上限量などは設定されていませんが、アルギニンが体内で効果的に働くためには、1日に2000~4000mg程度の摂取が必要であるとされています[※5]。
なお、9種類の必須アミノ酸においては国際機関(FAO/WHO/UNU)で必要量が示されていますが、アルギニンは非必須アミノ酸であるため、必要量が定められていません。
考えられるリスク・
副作用
アルギニンはたんぱく質の構成成分アミノ酸であり、通常の食品から比較的多く摂取しています。
食品から摂取できる量であれば健康被害などの心配はないと考えられますが、サプリメントなどから摂取する場合は、過剰摂取に注意したほうがよいでしょう。
アルギニンの過剰摂取が起こると、腹痛や下痢を起こす可能性があります。また、アレルギー体質や喘息、肝硬変の方の使用にも注意が必要です。
さらに、降圧剤と併用することで血圧が下がり過ぎてしまう可能性があるため、主治医に相談の上で使用するようにしましょう。[※6]
アルギニンを含む食べ物
アルギニンは鶏肉、豚肉、大豆・大豆製品などに多く含まれています。[※7]
- 大豆(全粒・乾) 2900mg/100g
- アーモンド(乾) 2200mg/100g
- 鶏もも肉(皮つき・生) 1400mg/100g
- 豚ロース肉(脂身つき・生) 1300mg/100g
- うなぎ(養殖・生) 1100mg/100g
- まぐろ(きはだ・生) 1400mg/100g
- しばえび(生) 1800mg/100g
- にんにく(りん茎・生) 1100mg/100g
- 鶏卵(卵黄・生) 1200mg/100g
アルギニンはアミノ酸の一種であるため、たんぱく質を多く含む食品にはアルギニンも多く含まれています。そのため、アルギニンを多く摂取しようとする、結果的にエネルギーの摂り過ぎにつながってしまう可能性があります。体重を増やしたくないという方にとっては、適宜サプリメントなどを利用してアルギニンを摂取することも一つの方法です。
また、たんぱく質の代謝に関与し、エネルギー産生のための補酵素として働く ビタミンB6を一緒に摂取することもアルギニンの効果を高めるコツ であると言えるでしょう。
なお、アルギニンと同時に摂取することで、相乗効果が期待できるとされている成分に「シトルリン」があります。
発見・研究の歴史
アルギニンは、1886年に白化させたルピナス(豆)の芽から分離されました。その硝酸塩が銀(argent)のような白さであったことから、アルギニン(arginine)と名付けられたとされています。
血管をしなやかにする物質として一酸化窒素(NO)が同定されると、その後の研究により、一酸化窒素の動脈硬化予防の作用が明らかにされました。それとともに、アルギニンの一酸化窒素産生促進作用が注目されるようになります。
これを機に、アルギニンの血管拡張作用や、動脈硬化予防の可能性などについての研究が多く行なわれるようになりました。
アルギニンに関する研究情報
【1】アルギニンは、手術後の結腸直腸癌患者の免疫機能を改善し、非経口栄養(PN)の 効果を高めることができます
【2】食事から摂取する L-アルギニンは、難治性狭心症の患者に臨床的に有益な効果があり、抗炎症作用がある可能性があります
【3】L-アルギニンはNO の生成に欠陥がある疾患に治療効果がある可能性がありますが、喘息では気道の炎症反応を増幅する可能性があります
【4】L-アルギニンの経口投与は、慢性うっ血性心不全患者の糸球体濾過量、ナトリウム利尿、および血漿エンドセリンレベルに有益な効果があります
成分
10秒解説
人体を構成するアミノ酸の一つであるアルギニン。アルギニンは、成長ホルモンの分泌促進や血流改善、疲労回復などの効果を持ち、最近ではサプリメントやスポーツ飲料、育毛剤などにも配合されています。