グルコサミン
こんなお悩み・健康効果に
- 肩こり改善
- 関節痛・関節炎対策
- がんによる食欲不振対策
- 腰痛改善
- 健康な骨の形成・骨の強化
グルコサミンとは
関節組織の健康維持などに効果が期待できます。
グルコサミンとは、グルコースとアミノ基が結びついてできたアミノ糖という成分の一種で、グリコサミノグリカン(ムコ多糖類)の原料となります。
グリコサミノグリカンは、ヒアルロン酸の構成成分として欠かせないもの。ヒアルロン酸はその粘性によって、関節にかかる衝撃の緩衝作用や、関節の動きをスムーズにする潤滑剤としての役割を担っています。
このような関係性により、関節軟骨をはじめとした組織のコンディション維持・改善に、ヒアルロン酸のもととなる、グルコサミンの摂取が適しているといわれているのです。
グルコサミンは体内で一定量が生成されていますが、加齢とともにその量が減少するため、関節組織は運動や歩行によって生理的・物理的なストレスを受けやすくなります。そのため食物やサプリメントから不足分のグルコサミンを補給する必要があるわけです。
グルコサミンを多く含む食物としては、カニやエビなどの甲殻類の外皮(キチン質)が挙げられます。サプリメントにする場合、そのままでは体内に吸収されにくいため、塩酸や硫酸を用いた加水分解処理が必要です。
キチン質を塩酸で分解したものを「グルコサミン塩酸塩」、硫酸で分解したものを「グルコサミン硫酸塩」といいます。もう一種類「N-アセチルグルコサミン」というグルコサミンがあり、こちらは元々体内に存在するタイプのグルコサミンです。食物では牛乳に多く含まれています。
期待される効果・作用
変形性関節症および関節炎
変形性関節症および関節炎は、加齢やスポーツによる関節軟骨の消耗や、関節周辺の滑膜の炎症などによって引き起こされる疾患です。特に日常生活を送るうえで荷重がかかりやすい膝関節や股関節、肘関節での発症が多くなっています。
軟骨が消耗した状態で関節を動かし続けると、その刺激によって疼痛が生じ、動かしにくくなるうえ、骨棘形成の進行で関節拘縮を引き起こす場合もあるので、なるべく早期の治療や対策が必要です。
グルコサミンは、摂取することで中間物質となるグリコサミノグリカンを経て、関節液の主成分であるヒアルロン酸に変換されます。ヒアルロン酸が補充されることで、骨代謝が整い、軟骨の摩耗軽減や、滑らかな関節の動きなどの効果が期待できるのです。
変形性関節症および関節炎に対するグルコサミンの効果は、ヒトを対象とした臨床試験でも確認されています。
ただし、グルコサミンを服用するだけで完治するということではありません。変形性関節症や関節炎の症状がある場合には、医師のもとできちんとした診断・治療を受けたうえでの服用が基本です。あくまでも補助としての認識を持つ必要があります。[※1]
がんによる食欲不振
がん細胞から分泌されるトキソホルモンという物質は、食欲不振を引き起こし、急激な体重減少を引き起こすとされています。トキソホルモンとはがん細胞から分泌される毒素のこと。
愛媛大学医学部医化学第2教室の奥田拓道教授の研究によると、がん患者の腹水および胸水を脂肪細胞に作用させたところ、脂肪の分解が始まることが判明。同時に、がんではない患者の腹水ではこの作用は起こらないことも明らかになりました。この結果から、がん患者の腹水および胸水には、がん細胞から分泌された、脂肪分解に作用するトキソホルモンが存在していることが分かったのです。
また、このトキソホルモンは、満腹中枢に作用することで常に満腹感を生じさせることも示唆されており、がん患者の食欲不振および急激な体重減少は、この二つの作用が関係していると考えられます。
このトキソホルモンに対してグルコサミンが阻害的に作用することが明らかになっていることから、がんによる食欲不振の緩和につながる可能性があるとされているのです。
ただし、グルコサミンの摂取にあたっては、がん治療薬との飲み合わせも考慮する必要があるため、医師や薬剤師と相談したうえでの摂取が推奨されます。[※2]
こんな方におすすめ
関節や軟骨組織のコンディションを整える効果が期待されるグルコサミンは、加齢とともに体内での合成量が減少していく成分です。そのため、中高年以上で変形関節症や関節炎の疼痛緩和、関節の柔軟性維持を目的としている方に適しています。
またスポーツによる関節の酷使で、軟骨の消耗が激しい方の関節メンテナンスにもおすすめです。
がんによる食欲不振や、それに伴う急激な体重減少にも効果が期待できるとの報告もありますが、グルコサミンを服用する場合には、治療薬や治療内容への影響が生じないよう、事前に医師や薬剤師の確認が望ましいでしょう。
摂取目安量・上限目安量
東北大学大学院農学研究科の齋藤忠夫教授によれば、グルコサミンの一種で多くのサプリメントに利用されているN-アセチルグルコサミンの一日あたりの摂取目安量は500㎎とされています。[※5]
また、(株)医学と看護社「ヘルシーエイジングに役立つサプリメント・健康食品―科学的根拠に基づいた適正使用のための情報」に示されているグルコサミンの一日あたりの用量は、1000mg~1500mg程度です。
考えられるリスク・
副作用
グルコサミンは元々体内に存在している成分であるため、適正な用法・用量で利用するのであれば、比較的安全性が高いとされています。
副作用としては、軽い胃腸症状(腹部膨満感、ガスが溜まる、痙攣、便秘、胸やけ)が報告されているようです。
また、カニやエビなど甲殻類由来のグルコサミンサプリメントはアレルギー発症のリスクがあるため、甲殻アレルギーのある方は避けたほうがよいでしょう。
血糖値や血圧、コレステロール値への影響や、ワルファリンの作用増強の報告もあるので、持病の治療中や服薬中の方は、注意が必要です。[※3]
グルコサミンを含む食べ物
グルコサミンは、カニやエビなど甲殻類に多く含まれている成分です。甲殻類の外皮に含まれているキチン質を加水分解することで、グルコサミンが得られ、多くのサプリメントに利用されています。そのため甲殻アレルギーの方は注意が必要です。
甲殻アレルギーの方はカニやエビと同様に、グルコサミンを多く含むヤマノイモや牛乳、オクラ、干しエビなどからの摂取をおすすめします。
しかしグルコサミンは体内吸収率が低いのが難点で、牛乳100mlあたり11mg程度です。グルコサミンの一日摂取目安量が500mgであることを考えると、食べ物だけで補給することは難しいといえます。そのため、必要に応じてサプリメントを利用するのが望ましいでしょう。
発見・研究の歴史
1876年、Georg Ledderhoseの手によって初めてのグルコサミン調整が行われました。その後、1960年代頃になると、ヨーロッパを中心としてグルコサミンの研究が盛んになり始めます。この時期にドイツとイタリアから、関節炎の治療にグルコサミンが効果を示したという報告が出されています。
その後も各国でグルコサミンの研究が続けられ、1980年代にはヒトの変形性関節症へのグルコサミンの有効性についての臨床試験も実施されるようになりました。
日本国内では1990年代後半頃から研究が行われ始め、現在では医薬品としてのみならず、製薬会社や食品メーカーなどがグルコサミン配合の様々なサプリメントを販売しています。
グルコサミンに関する研究情報
【1】グルコサミン配合の栄養補助食品が、変形性膝関節症に及ぼす影響について調査した結果によると、グルコサミン1200㎎・コンドロイチン60㎎・ケルセチン配糖体45mg/日を配合したサプリメント摂取群とプラセボ摂取群では、16週間摂取後の比較で、サプリメント摂取群に有意な症状改善傾向がみられました。
【2】関節炎の発症に関わる誘導性NO合成酵素によるNO過剰生成への、グルコサミンの影響を確かめた動物実験結果によると、グルコサミンの投与によって、NO合成および誘導性NO合成酵素とその酵素たんぱくの抑制が確認され、グルコサミンは、関節炎の治療に役立つ可能性があると示唆されました。
【3】24名の健常者を対象として、1500㎎のグルコサミンおよびセラドリンを2週間投与したところ、アスピリン様作用による血小板凝集阻害効果がみられ、この結果から、グルコサミンおよびセラドリンの呈する血小板凝集抑制効果による、血栓障害の予防・改善の可能性が示唆されました。
【4】変形性関節症におけるグルコサミンおよびコンドロイチンの影響についての文献調査(15件)によると、両者の治療効果はグルコサミン<コンドロイチンであることが示唆され、疼痛の緩和もこの結果に対して、比較的相関がみられました。
【5】グルコサミンの抗血栓作用を検討した結果、グルコサミン摂取により、血小板凝集や細胞内のリン酸化およびカルシウム代謝抑制などがみられました。このことから、グルコサミンに血小板凝集抑制効果があり、血栓障害に対する効果が示唆されました。
成分
10秒解説
グルコサミンとは、カニやエビなど甲殻類に含まれるアミノ糖の一種です。ヒアルロン酸のもととなり、変形関節症や関節炎の疼痛軽減、関節の可動性改善の効果が期待されています。体内吸収率が低いため、サプリメントには、塩酸または硫酸で加水分解して抽出したグルコサミンを用いるのが一般的です。